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顧みられない
熱帯病入門
その無関心が、誰かの日常
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トラコーマ

キーワード 気候変動 貧困・衛生環境 子どもに高いリスク かつて日本でも流行 どうやってうつる? 細菌 昆虫 その他

概要

トラコーマはクラミジア・トラコマチスという細菌による感染性の眼疾患であり、失明を引き起こす感染症のうち、世界で最も多い疾患となっています。通常、1回の感染であれば、その人自身の免疫によって自然に軽快(回復)することもありますが、この病気が流行している地域では、何年にもわたって繰り返し感染を起こすことがよくあります。長年にわたり感染を繰り返すと、まぶたの内側に強い瘢痕(はんこん)が生じ、その結果、まぶたが内側に反り返る眼瞼内反と、瞬きをするたびにまつ毛が眼球にこすれる状態(トラコーマ性睫毛乱生)が起こります。そのため、持続的な痛みや光過敏、角膜の損傷が引き起こされます。適切な治療が行われなければ、角膜に二度と元に戻らない混濁が生じ、最終的には失明に至ります。

感染経路

トラコーマは、感染者の目や鼻の分泌物で汚染された手、衣類、寝具、机などの硬い物の表面との接触を通じて広がります。さらに、地面にさらされた人間の排泄物で繁殖するハエも、この細菌を媒介します。感染は幼い子どもに最も多くみられ、特に3〜5歳児で有病率が最も高くなります。通常、この感染症は活動性のトラコーマ患者と近い距離で生活することで感染し、家庭内が主な感染の場となります。特に、子ども同士や子どもの世話をする女性との間で感染が広がりやすいとされています。感染のリスクを高める環境要因には、清潔な水が十分使えないこと、トイレの不備、過密な住環境、家畜(特に牛)が近くにいること、そして個人の衛生状態の悪さなどがあります。

疾病による負荷

流行地域

  • トラコーマは、依然として約30カ国で公衆衛生上の問題となっているが、過去数十年の50カ国超という状況からは減少してきています
  • 約9,000万人がトラコーマの多い地域で暮らしており、失明のリスクにさらされています。その多くはアフリカ、中南米、アジア、オーストラリア、中東の中でも、特に貧しい農村部に暮らす人々です
  • 中でもアフリカ大陸の状況は深刻で、この疾患の世界全体の疾病負荷の約90%を占めています
  • 現在、約190万人がトラコーマにより失明あるいは視覚障害を抱えています

患者数・感染者数

  • 感染は、3〜5歳の就学前の子どもに最も多くみられ、家族や世話をする人たちに病気を広げます
  • 失明につながる段階は、成人期に現れ、特に中年層で多くみられます
  • 女性は、子どもの養育や世話を通して感染した子どもと接する機会が多いため、男性に比べて2〜4倍も高い割合で失明に至ると考えられています
  • 毎年数万人が手術を受けており、さらに何千万人もの人が抗生物質による治療を受けています。進行した失明段階の手術を受ける人の多くは女性です
  • 2000年代初頭と比べると、手術を要する患者の数は80%以上減少しており、根絶に向けて大きな前進がみられます

予防と治療

世界保健機関(WHO)はトラコーマ撲滅のために SAFE 戦略を推奨しており、これは「トラコーマ性睫毛乱生(逆さまつげ)に対する手術(Surgery)」、 「感染を除去するための抗生物質(Antibiotics)」、「顔の清潔保持(Facial cleanliness)」、「環境改善(Environmental improvement)」の頭文字を取ったものです。 手術には、内側に反り返ったまぶたを矯正し、これ以上角膜が傷つかないようにする、比較的シンプルな手術が用いられます。顔の清潔に関する取り組みでは、 顔を洗う習慣や衛生的な行動を促進することで、感染の広がりを抑えることを目指します。環境改善では、安全な水やトイレの整備、 ごみ処理の改善などにより、ハエの繁殖を抑え、感染拡大を防ぎます。トラコーマの流行地域において、この疾患のリスクにさらされている人口は、 2002年の15億人から2025年11月時点では約9700万人へと約94%減少しており、WHOは2030年までに世界規模でトラコーマを公衆衛生上の問題として根絶することを目標としています。

トラコーマ

© Shota Koyano

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ブルキナファソで、トラコーマ対策の訓練として眼科検査を行う検査技師

Alaine Kathryn Knipes; Parasitic Disease Branch (DPDx); Division of Parasitic Diseases and Malaria, /  CDC Public Health Image Library

※ 疾患の理解を深めるため、一部に具体的な症例写真(臨床画像)が含まれています。

監修: 長崎大学 熱帯医学・グローバルヘルス研究科 教授
プラネタリーヘルス学環 学環長 平山謙二教授

※ 本ページは、専門性を持たない読者に向けて作成された内容です。
顧みられない熱帯病(NTDs)に関する推計値やデータは情報源によって異なる場合があり、最新のデータが得られ次第、変更される可能性があります。最終確認:2026年5月