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熱帯病入門
その無関心が、誰かの日常
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住血吸虫症

キーワード 気候変動 貧困・衛生環境 子どもに高いリスク かつて日本でも流行 どうやってうつる? 寄生虫 動物(昆虫以外) 水・土壌

概要

住血吸虫症は、熱帯・亜熱帯地域でまん延している寄生虫疾患で、流行地では人々は、河川・湖・池を洗濯、入浴、子どもの遊び場、釣りなど生活の中心においているという特徴があります。このような淡水と日常的に触れている生活の中で、中間宿主といわれる巻き貝から水中に放出された感染型の寄生虫が、皮膚を通して体内に侵入することで、ヒトへの感染が繰り返されます。駆虫薬などの適切な治療を受けずに放置すると、長期間寄生するつがいの成虫が毎日大量の虫卵を産みます。寄生する場所によって、血尿、肝臓や腎臓への障害、膀胱生殖器障害、不妊などが引き起こされ、一定の割合では、死に至るような慢性合併症(肝硬変、肝がん、膀胱がん)を発症することがあります。特に治療が行き届かない子どもは、栄養失調や貧血、発育不全、学習障害などを抱え、教育や将来の可能性に深刻な影響を及ぼします。

感染経路

住血吸虫症では、3種類の淡水巻貝が中間宿主となって感染を媒介します。感染サイクルは、トイレ設備が整っていない場所や淡水の水辺での排泄、または水辺付近で洗濯や作業をすることによって、既に住血吸虫症にかかっている人の尿や便に含まれる寄生虫の卵が水中に入るところから始まります。

水中の微小な寄生虫の卵は孵化し、特定の種類の淡水巻き貝を探し出して貝内に侵入。貝の中で寄生虫は数週間かけて爆発的に増殖し、その後再び水中へと放出されます。放出された寄生虫は約2日間、水中で次の寄生先となる人間が来るのを待ちながら生存することができます。人間がこの汚染された水の中を歩いたり、泳いだり、入浴や洗濯、釣りをしたりすることで、寄生虫は痛みをほとんど感じさせることなく、皮膚を突き破って体内へ侵入し血流に入り込みます。寄生虫は体内で成虫に成長し、卵を産み、それが尿や便と共に再び体外へ排出されるという感染サイクルが繰り返されます。

疾病による負荷

流行地域

  • 世界の75カ国以上で報告されており、そのうち50カ国以上で大規模な治療プログラムが必要とされています
  • アフリカ型の住血吸虫症は、全症例の大部分がサハラ以南のアフリカで、それ以外の地域で流行が顕著なのはブラジルです

患者数・感染者数

  • 2021年時点で、推定2億5,000万人以上が住血吸虫症に感染しながら生活しています。また、約7億7,900万人が流行地で生活している状況です

予防と治療

「プラジカンテル(Praziquantel)」は1970年代から使用されている治療薬で、安価ながら高い治癒率を示してきました。 2007年以降、メルク社から世界保健機関(WHO)に無償提供され、世界各地で無料配布が行われています。しかし実際に薬を受け取ることができるのは、治療を必要とする人々の約3割にとどまっています。さらに最近まで、錠剤が大きく苦味も強いことから、約5,000万人もの就学前児童が治療の対象から外されていました。また、プラジカンテルによる治療は感染を治癒することはできても、再感染を防ぐことはできません。人々は生活用水を得るために再び汚染された水域に戻らざるを得ないからです。安全な飲料水と衛生設備の整備が伴わない限り、治療だけではこの病気の根絶はできません。

2024年、画期的な進展がありました。GHIT Fundの支援を受け、小児用プラジカンテル・コンソーシアム(Pediatric Praziquantel Consortium)が開発した、生後3ヶ月から6歳までの小児を対象とするプラジカンテルの小児用製剤「arpraziquantel」が、世界保健機関(WHO)の事前認証を得たことです。この水に溶ける錠剤は、味も改善され、熱帯環境にも強い設計で、90%を超える治癒率が報告されています。2025年にはウガンダで初めて実装研究において就学前児童に投与されました。同年9月には、WHOの小児用の「必須医薬品モデルリスト(Essential Medicines List)」に追加されるという重要なマイルストーンを達成しました。

住血吸虫症

© Shota Koyano

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洗濯や水汲みなどの家事を通じて汚染された淡水に日常的に触れることが、住血吸虫症の主な感染経路です

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2025年3月にコートジボワールでの投薬の様子

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2025年3月にコートジボワールでの投薬の様子
 

※ 疾患の理解を深めるため、一部に具体的な症例写真(臨床画像)が含まれています。

監修: 長崎大学 熱帯医学・グローバルヘルス研究科 教授
プラネタリーヘルス学環 学環長 平山謙二教授

※ 本ページは、専門性を持たない読者に向けて作成された内容です。
顧みられない熱帯病(NTDs)に関する推計値やデータは情報源によって異なる場合があり、最新のデータが得られ次第、変更される可能性があります。最終確認:2026年5月