Overview

代表挨拶

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、感染症の脅威に対するイノベーションの重要性とその価値の重みを改めて世界に突きつけました。前例のないパンデミックにも関わらず、COVID-19に対する製品開発は驚異的なスピードで進みました。これは、ステークホルダーが危機感を共有し、十分な資源を迅速に投じることができれば、感染症のためのイノベーションを加速し、スケールアップが可能であることを示しました。GHIT Fundは、顧みられない病気の製品開発において、同様の可能性を最大限に引き出すことに注力しています。2020年度のコロナ禍において、私たちの製品開発パートナーは、驚くべきほどのレジリエンスと創造性を発揮してくれました。

このコロナ禍でさらに脆弱な立場に置かれた顧みられない患者のためのイノベーションを強化することが私たちの責務であると考えています。顧みられない病気との戦いにおいても、希望、創造性、連携を生み出し続けようという私たちの思いに、パートナーやステークホルダーの皆様が共感してくださっていることに心から感謝申し上げます。

顧みられない病気の製品開発を止めない

マラリア、結核、顧みられない熱帯病(NTDs)の製品開発は、今もなお私たちとパートナーにとって最優先事項です。2020年度、GHIT Fundは22件の革新的なプロジェクトに対して約41.6億円を投資し、これまでの累積投資件数、総額は101件、約251億円となりました。本年度は、特に低中所得国などの医療資源が限られた現場でも使用可能な診断キットの開発等を中心に、ポートフォリオを拡充することができました。コロナ禍で困難な中にあっても、新たに15団体が新たに顧みられない病気の製品開発に加わってくれたことを大変嬉しく思います。2021年3月時点のポートフォリオとして、 23件の探索研究、22件の非臨床試験、7件の臨床試験及びフィールドスタディが進行中です。最も臨床後期段階にある、結核迅速診断キットSILVAMP TBLAMや、住血吸虫症小児用製剤プラジカンテルなどは、世界保健機関(WHO)からの推奨取得や規制当局からの承認取得に向けて着実に準備を進めています。また、これらの案件は、患者や医療従事者が確実に製品を利用することができるように、製品開発パートナーとともにアクセスや供給戦略について継続的な議論を重ねています。GHIT FundはCOVID-19に対して直接的な投資を行っていませんが、先述のSILVAMP TBLAMに用いられている銀増幅イムノクロマト法のプラットフォーム技術を応用し、富士フイルムはSARS-CoV-2診断用の抗原検査キットを開発しました。私たちが投資したイノベーションが、GHIT Fundの投資対象外の他の感染症にも応用されうることを示す注目すべき事例で、特筆すべきことです。平時から革新的な技術や科学振興に投資することの重要性や、将来起こりうる感染症の脅威に対する準備に繋がる可能性を示しています。

ストラテジックプラン2.0の進捗、3.0に向けて

GHIT Fundの第2期(2018~2022年度)の3年目にあたる本年度は、パンデミックの影響を受けながらも、第二期における戦略目標であるストラテジックプラン2.0の達成に向けて、GHIT Fundと製品開発パートナーは着実に歩みを重ねています。こうした取り組みはGHIT Fundの第3期(2023~2027年度)を見据え、ポートフォリオをさらに拡充する上で重要な基盤となります。

感謝を胸に、前に進む

コロナ禍の中で、私たちはこれまで以上に創造的で柔軟に、知識、経験、ネットワークを最大限に活用して製品開発を前に進め、事業の継続性を確保することに注力してきました。こうしたGHIT Fundの活動を支援して下さるステークホルダーの皆様のパートナーシップと連帯に心からの敬意を表します。私たちが共有するビジョンに向かって、GHIT Fundはより厳しく、強力に、そして思いやりの心を忘れずに、#Togetherの精神を胸に今後も邁進していきます。

中谷 比呂樹会長・代表理事