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熱帯病入門
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デング熱・チクングニア熱

キーワード 気候変動 貧困・衛生環境 子どもに高いリスク かつて日本でも流行 どうやってうつる? ウイルス 昆虫

概要

デング熱とチクングニア熱は、ネッタイシマカやヒトスジシマカによって媒介されるウイルス性の感染症です。発症初期の症状がよく似ているため鑑別が難しく、いずれも突然の高熱、激しい頭痛、筋肉痛、発疹などを引き起こしますが、大きな違いは合併症にあります。

デング熱は、デングウイルスに感染して症状が出た人のうち、約20人に1人の割合で重症化し、重度の出血やショック症状を伴うことが特徴です。一方チクングニア熱は、日常生活に支障をきたすほどの強い関節痛がみられ、数か月から数年にわたって痛みが継続することがあります。
デング熱では、ウイルス感染者の約4人に1人が発熱などで発症し、目の奥の痛みや、一般的に「骨折熱(breakbone fever)」と呼ばれるほどの激しい全身痛を伴う症状が出ます。

それに対しチクングニア熱では、感染者の多くが発症し、複数の関節に及ぶ強い痛みが出るのが典型的な症状です。ときに前かがみの姿勢をとるほどの痛みがあることから、マコンデ(キマコンデ)語(東アフリカの言語)で「体を曲げる(チクングニア)病気」を意味する名前が付けられています。

いずれの感染症も、多くの場合は1週間ほどで回復しますが、チクングニア熱の関節痛はより長期間続くことがあります。またデング熱に2回目の感染をした場合、重症化リスクが高まることでも知られています。
両疾患とも適切な医療処置を受けた場合の致死率は1%未満とされていますが、新生児や高齢者では重篤な合併症を起こすリスクが高いとされています。

感染経路

両疾患は、感染したメスの蚊に吸血されることで広がります。この蚊は主に日中に吸血します。感染者の血を吸った後、ウイルスは数日間かけて蚊の体内で増殖し、その後、蚊が別の人を刺すことでウイルスが伝播します。蚊は住宅周辺の水たまりや貯水槽などで繁殖します。

このように感染経路が共通しているため、双方の予防策が、それぞれの疾患予防にも有効です。両疾患ともに人から人へ直接うつることはありませんが、まれに妊娠中(出産前後、特にチクングニア熱)で母親から胎児・新生児へ垂直感染が起こり得ます。また、血液製剤や臓器移植を介した事例も報告されていますが、極めて稀です。

疾病による負荷

流行地域

  • 世界の熱帯および亜熱帯地域で流行。多くの場合両疾患が同じ地域で発生する傾向にあります
  • 両疾患とも、アフリカ・南北アメリカ・アジアおよびヨーロッパの100カ国以上で発生しています
  • 両疾患とも、これまで影響を受けていなかったヨーロッパの一部を含む地域へ拡大しています
  • デング熱の感染は雨季および雨季後がピーク。チクングニア熱は散発的に発生傾向があります
  • 日本でも2014年に代々木公園の周辺でデング熱が流行したことで知られています

患者数・感染者数

  • デング熱は年間数億人の感染が発生し、近年は症例数が急増(2024年1,400万件超報告:WHO調べ)、毎年数千人が死亡と、世界的に多数の症例を引き起こしています
  • デング熱の症例は近年急速に増加し、その大部分はアジア地域での感染増加となっています
  • 世界人口のおよそ半数が感染リスクに直面しています
  • チクングニア熱は年間数千万人に影響を及ぼし、そのうち数十万人が慢性的で長期にわたる関節痛を経験しています

予防と治療

どちらの疾患にも抗ウイルス剤などの根治療法はなく、現段階では、安静、水分補給、発熱や痛みに対するアセトアミノフェンの使用が中心となります。アスピリンやイブプロフェンは出血リスクを高めるため、使用は推奨されません。1週間以内に回復する患者が多い中、チクングニア熱による関節痛は数か月から数年にわたり持続することがあります。重症のデング熱の兆候がある場合は入院治療が必要とされます。

両疾患は同じ蚊によって媒介されるため、蚊に刺されないことと繁殖場所をなくすことが共通予防対策の基本となります。予防策としては、虫よけ剤の使用や、長袖・長ズボンの着用、網戸の設置、蚊帳の使用などがあります。これらの蚊は日中に活動するため、日中の対策が特に重要です。家周囲のたまり水をなくす(例:容器の水を空にする、水の貯蔵タンクにふたをする)ことで、蚊の繁殖場所を減らすことができます。
いくつかの使用制限がありますが、ワクチンは存在します。デング熱ワクチンQDENGA®は、WHOが6〜16歳小児向けに推奨するデング熱のワクチンであり、その他は評価段階にあります。チクングニア熱では、12歳以上を対象にVIMKUNYAが利用可能で、主に流行地域への渡航者や検査室従事者を対象としています。

デング熱・チクングニア熱

© Shota Koyano

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皮膚に口針(スタイレット)を差し込み、血管に到達させて吸血しているネッタイシマカの雌

James Gathany /  CDC Public Health Image Library

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日本でも代々木公園でデング熱が流行(2014年)

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※ 疾患の理解を深めるため、一部に具体的な症例写真(臨床画像)が含まれています。

監修: 長崎大学 熱帯医学・グローバルヘルス研究科 教授
プラネタリーヘルス学環 学環長 平山謙二教授

※ 本ページは、専門性を持たない読者に向けて作成された内容です。
顧みられない熱帯病(NTDs)に関する推計値やデータは情報源によって異なる場合があり、最新のデータが得られ次第、変更される可能性があります。最終確認:2026年5月