概要
マイセトーマは、皮下組織から始まり、皮膚、より深部の組織、筋肉、さらには骨へと広がる可能性がある、慢性的でゆっくりと進行する感染症です。この疾患は、土壌や水中に存在する70種類以上の細菌または真菌(カビ)によって引き起こされる可能性があります。通常、痛みを伴わない腫れとして現れ、そこに瘻孔(ろうこう)と呼ばれる複数の穴から感染源を含むグレイン(菌塊)と呼ばれる砂のような粒子が排出されます。その粒子の中に、感染の原因となる病原体が含まれています。
治療を放置すると、周囲の組織へと広がり、骨を破壊します。その結果、重度の変形や機能障害を引き起こします。マイセトーマは進行が遅く痛みを伴わないうえ、流行地域での医療施設の不足もあり、患者は病気が悪化してから受診をすることが多く、その結果、切断を余儀なくされる場合もあります。また二次的な細菌感染も頻繁に起こり、適切に治療されない場合は敗血症などの重症化を招くことがあります。
感染経路
マイセトーマは、土壌や水中に生息する細菌や真菌が、皮膚の軽微な外傷(主に棘による刺傷、木片のささくれ、石による切り傷)から体内に侵入することで感染します。この病気が人から人へ直接感染することはありません。
マイセトーマは、はだしで歩く習慣がある人や、農業・牧畜などの屋外手作業に従事する農村住民に著しく多くみられます。原因となる病原体には真菌(カビ)の仲間と細菌の2種類があり、その分布は短い雨季と長い乾季の熱帯・亜熱帯地域に広がっています。棘の多い低木が生育しやすい乾燥した環境であることも棘刺しのリスクを上げているのかもしれません。そのような環境条件に加え、屋外での労働や、はだし歩行などが、マイセトーマ感染の主なリスク要因となります。
疾病による負荷
流行地域
- アフリカ、アジア、ラテンアメリカおよび一部のヨーロッパを含む熱帯・亜熱帯地域で流行しています。症例数が最も多い国として報告されているのはスーダンです
- メキシコ、インド、ベネズエラ、チャド、エチオピア、モーリタニア、セネガル、ソマリア、イエメンなどでも症例が多数見られます
- 世界では102カ国で症例が報告されているが、一般的に「マイセトーマ・ベルト」と呼ばれる流行地域外では、診断されないままのケースも多いと推定されます
患者数・感染者数
- 文献では、1876年から2019年までに約19,500例が報告されていますが、これは診断能力の低さから考えて氷山の一角とされます
- マイセトーマは多くの国で届出義務のある疾患(指定感染症)ではなく、監視体制も不十分で、実際の症例数は報告数を大きく上回ると推定されています
予防と治療
治療は原因が細菌か真菌かにより異なります。細菌性マイセトーマは、早期に発見され併用療法で治療された場合には、最大90%の症例で完治が可能です。ただし治療開始時期や併用療法を利用できるか否かによって結果が大きく異なります。そのため、治療期間も数ヶ月から数年と幅が大きくなります。
一方、真菌性マイセトーマは抗真菌薬と外科手術(病変切除〜切断)の両方が必要であり、完治が困難です。手術では病変組織を切除しますが、その範囲は小さな組織の切除から、四肢の切断に及ぶ重症例まで様々です。治療は長期にわたり、費用も高額であり、多くの流行地域では治療を受けられないことも少なくありません。また、感染の再発を見逃さないために、患者の長期的な経過観察も必要となります。
予防は防護靴・衣服の着用など皮膚の負傷を避けることが主で、傷ができた場合はすぐに洗浄し手当てをすることで、感染リスクが下がる可能性があります。早期発見・早期治療が障がいの発生および治療結果の改善につながります。
© Shota Koyano
皮膚に腫瘍ができ膿を排出、ゆっくりと進行しながら骨などの組織を破壊する
長く放置された結果、骨などを切断しなければいけない場合も生じる
植物の棘などにより傷を負った皮膚から、土壌に生息する真菌や細菌が体内に入り込むと考えられている
植物の棘などにより傷を負った皮膚
※ 疾患の理解を深めるため、一部に具体的な症例写真(臨床画像)が含まれています。