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顧みられない
熱帯病入門
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疥癬

キーワード 貧困・衛生環境 子どもに高いリスク かつて日本でも流行 どうやってうつる? 寄生虫 その他

概要

疥癬(かいせん)は、皮膚に潜り込んで卵を産みつける小さなダニ(ヒゼンダニ)によって引き起こされる感染力の強い皮膚疾患です。主な症状は激しいかゆみで、特に夜間にかゆみが強くなります。通常、このかゆみは、ダニが皮膚に寄生してから4〜6週間後に始まります。ほとんどの感染者の体内には、10~15匹程度のダニしか寄生していませんが、免疫力が低下している人では、角化型疥癬(別名:ノルウェー疥癬)と呼ばれる重症型を発症することがあります。この場合数千から数百万匹ものダニが存在することもあり、非常に感染が広がりやすくなります。

治療しないまま掻き続けると細菌性二次感染を起こし、重症化すると腎臓病や心臓病などの深刻な合併症を引き起こすおそれがあります。

感染経路

疥癬は、主に長時間の皮膚と皮膚の直接接触によって感染します。例えば、手をつなぐ、同じベッドで寝る、子どもの世話をする、または性的接触を持つといった行為が挙げられます。ダニは飛んだり跳ねたりすることはできず、這うことしかできないため、短時間の皮膚接触で感染することは稀です。家庭内、学校、医療施設などは、特に感染が広がりやすい環境とされています。また、衣類、タオル、寝具の共有によって感染が起こることもありますが、通常の疥癬ではこれはあまり一般的ではありません。

一方で、角化型疥癬は、体表に非常に多くのダニが存在するため、短時間の皮膚接触や汚染された寝具・衣類などを通じても感染しやすいのが特徴です。また、感染後4〜6週間の潜伏期間中、症状が現れる前でも皮膚から脱落した角質に大量のダニが含まれるため、他者に感染を広げてしまうこともあります。

疾病による負荷

流行地域

  • 世界では、推計約2億人が疥癬に罹患しており、年間では4億〜6億件以上の新規症例が発生しています
  • 疥癬は世界中のあらゆる国で発生していますが、特に医療資源の乏しい熱帯地域で多くみられます
  • 有病率(流行・まん延している比率)が高いのは、ラテンアメリカ、オセアニア(太平洋諸島を含む)、東アジアおよび東南アジアが挙げられます

患者数・感染者数

  • 子どもや高齢者での感染が多く、特に1〜4歳の年齢層の感染が深刻となっています
  • 免疫不全の人は、重症型である角化型疥癬の発症リスクが高まります
  • 疥癬の集団発生は、難民キャンプ、刑務所、病院、高齢者施設、被災者支援キャンプなどの過密な環境でよくみられます

予防と治療

疥癬は、医師の処方による外用薬または内服薬で治療できます。世界で最も一般的な治療法の一つとして、5%ペルメトリンクリームを全身に塗布し、8〜14時間後に洗い流す方法があります。内服のイベルメクチンも効果的ですが、妊娠中の女性や体重15㎏未満の乳幼児には原則として使用できません。より安価な選択肢として、安息香酸ベンジル製剤や硫黄軟膏などがあります。しかし、多くの患者家族にとっては、治療費の負担が大きいという問題があります。世界保健機関(WHO)は、アクセス向上のため、疥癬や寄生虫感染症の治療薬としてイベルメクチンを必須医薬品リストに追加しました。また、疥癬の有病率が人口の10%を超える地域では、集団投薬プログラムにより地域全体に無料で治療が提供されることがあります。

治療薬はダニの卵には効果がないため、多くの場合、1週間後に再度治療を行うことが推奨されています。症状がなくても、同居している家族や濃厚接触者は、全員同時に治療を受けることが強く勧められています。衣類や寝具は熱湯で洗濯するか、少なくとも3日間密閉した袋に入れて保管します。角化型疥癬の患者には、外用薬と内服薬を併用した、より集中的な治療が必要です。

疥癬

© Shota Koyano

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疥癬の症例写真

Rie Yotsu / Clover Health International

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疥癬の症例写真

Rie Yotsu / Clover Health International

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ヒゼンダニ

London Scientific Films

※ 疾患の理解を深めるため、一部に具体的な症例写真(臨床画像)が含まれています。

監修: 長崎大学 熱帯医学・グローバルヘルス研究科 教授
プラネタリーヘルス学環 学環長 平山謙二教授

※ 本ページは、専門性を持たない読者に向けて作成された内容です。
顧みられない熱帯病(NTDs)に関する推計値やデータは情報源によって異なる場合があり、最新のデータが得られ次第、変更される可能性があります。最終確認:2026年5月