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STORY

ロイド 雪絵ミシェール
投資戦略、投資マネジメント
シニアマネージャー
天皇皇后両陛下とのお茶会から、ハワイでの学び、アフリカの研究所に至るまで

私は投資戦略の投資マネジメントチームに所属しています。日々の業務内容は時期によって異なりますが、基本的にはGHIT Fundが助成(投資)するプロジェクトへの助成が決定した後からが、チームの出番です。私たちのチームは各プロジェクトの進捗をモニタリングし、申請者やパートナーと非常に近い信頼関係を築き、パートナーが課題に直面した際には一緒に解決策を見いだすよう努めています。

私は北里大学で免疫学を学び、東京大学医科学研究所の研究室で基礎研究に取り組む中で教授や先輩方から多くのことを学びました。しかし心の中には「もっと患者さんと直接関わるような研究がしたい」という情熱をずっと持っていました。

そんな時、当時の天皇・皇后両陛下のご成婚の記念に設立された、皇太子明仁親王奨学金により、ハワイ大学で熱帯医学を学ぶ機会があることを知り、応募して採用され、幸運にも皇居で両陛下にご拝謁する光栄な機会に恵まれました。皇居に招かれた際、お茶とサクランボをいただきながら、皇后陛下が私を名前で呼んでくださり、「日本の代表として頑張ってくださいね」とお言葉をくださいました。子供のころから自分のルーツに葛藤があった私にとって、それは人生の転機となる瞬間でした。


故ダイアン・テイラー教授の指導の下で博士号を取得
研究で大切なことはお互いの文化や考え方を尊重し合うチームワーク

奨学金を通じてハワイ大学熱帯医学研究科でデングウイルスワクチンの研究をテーマに修士課程を終え、その後マラリア研究で博士号を取得しました。私の指導教官、故ダイアン・テイラー教授は胎盤マラリア研究の第一人者であり、カメルーンのヤウンデ第1大学と長年にわたる共同研究を行っていました。

拠点はハワイでしたが、毎年数か月間はカメルーンに滞在し、若手研究者の育成や、現地の研究者やスタッフと協力して、血液や胎盤サンプルを採取するフィールドワークも行っていました。

カメルーンでの出産や産褥期にまつわる文化的背景は日本やアメリカとはまったく異なります。驚くべきことに、村の女性たちは出産から数時間ほどで立ち上がり、新生児を布で背中に括り付け何時間もかけて自宅に戻るのです。そして胎盤も持ち帰り村で埋めるという習慣がありました。そうしないと不運に見舞われると説明されました。

そのため、血液や胎盤のサンプル採取はタイミングがとても重要でしたし、現地スタッフとの信頼関係が何よりも大切でした。すべてはチームワークと他者への敬意。お互いの理解と協力があってこそ研究は成り立つということを実感した現場でした。


停電の中、カメルーン・ヤウンデ第1大学のバイオテクノロジーセンターで
LUMINEXアッセイのサンプルを準備しているところ
キャリアチェンジの中で:さまざまな国やセクターでの学びと成長

その後、博士課程最後の学期の学費を確保するため、有給のユニセフインターンシップに応募したのがきっかけでラオスに行くことになりました。ちょうど同国がロタウイルスワクチンとHPVワクチンの導入準備をしている時期で、母子保健分野のプロジェクトの中でも特にワクチンやデータ解析関連業務に携わりました。その経験から、「ポスドク以外にも進む道がある」と気づきました。

研究室での作業というのは時に孤独で、気づけば培養している寄生虫に話しかけていることもあるほどです(笑)。私は人と話すことが好きなので、研究を研究者の世界の中だけに閉じ込めておくのは“もったいない”と感じていました。研究は伝え、現場に活かしてこそ意味がある-そう実感したのがユニセフでの仕事でした。

その後、JICAのタンザニア事務所のポジションにご縁があり、現地のニーズや中央レベルと現場のギャップなどを知る素晴らしい経験を積むことができました。パンデミック後には、JICAの感染症サーベイランスプロジェクトを通じてコンゴ民主共和国国立生物医学研究所(INRB)で感染症対策の専門家として働く機会を得ました。


JICA時代:タンザニアでのアウトリーチ活動中の様子

アフリカの全く異なる3か国で生活し働いたことで、国ごとの違いだけでなく、地域やコミュニティごとの多様性の豊かさを実感しました。考え方、価値観、言語、生活様式、医療に対する認識、文化的な背景や地域の人々の視点-コミュニティにはそれぞれの文脈があり、そのどれもが大きく異なります。戦略や治療法を導入するには、現地の現実を理解し、その地域に合わせて適応させることが何よりも大切だと学びました。

その後は日本に戻りIQVIAでのポジションを見つけて挑戦しました。それまで所属していた学術界や公的機関では大方手作業が中心でスピードが遅いと感じていましたが、IQVIAで非常に効率的な最先端のシステムが整っておりとても刺激的でした。医薬品開発のライフサイクルの仕組みやリアルワールドデータとそこから得られるエビデンスの重要性について多くを学び、現在のGHIT Fundでの仕事にも大いに役立っています。


コンゴ民主共和国国立生物医学研究所(INRB)の研究室
すべての経験がひとつに-現地で受け入れられなければ意味がない

これまで様々な研究をし、たくさんの国で生活や仕事をしてきましたが、私の原点は「トランスレーショナル・リサーチ(橋渡し研究)」への情熱にあります。一見シンプルに聞こえますが、基礎研究から臨床試験、承認、そして実際の現場での実施に至るまでには、実に多くの壁があります。

最も重要な課題は、素晴らしい研究や優れた製品があっても、現場で受け入れられなければ意味がない、ということです。文化的に適していなかったり、地域の人々から「外から来たもの」と見なされたりする場合もあります。また、関係構築の進め方を誤ることもあります。たとえばカメルーンのような国では、いきなり政府関係者と話してトップダウンで進めようとしても難しく、まず地域のリーダーに相談し、筋を通すことが大切です。

こうした経験を通して「適切な進め方」を学びました。GHIT Fundに入ってからはすべてがつながったように感じます。製品開発のプロジェクトの提案書は見た目ほど単純ではないことを理解していますし、パートナーが直面しそうな障壁を予測し、どのように支援できるかを常に考えています。プロジェクトの助成が採択された後にも、どんな課題が生じやすいかを経験から理解しようとしています。


「第9回アフリカ開発会議(TICAD 9)」のテーマ別イベントへの登壇
女性研究者たちのメンターでありたい

GHIT Fundは、コロナ禍の間も多くのウェビナー / オンラインセミナーを行うなど、この分野の研究開発を前進させるために尽力している姿を見ていて魅力を感じていました。GHIT Fundに入社できたことは本当に偶然でしたが、私の中では必然だと思っています。すべては「トランスレーショナル・リサーチ(橋渡し研究)」に対する情熱に繋がっているのだと実感しています。

いま私は、自分の可能性を模索している女性研究者たちのメンターになろうと努めています。研究者というのは狭い世界にいることが多く、そのまま学術の世界もしくは企業での研究者になる以外の道を見つけるのはなかなか難しいものです。でも、人生はそれだけではありません。自分のスキルを使って、本当にやりたいことは何でもできると思います。そのためには積極的に動いて、チャンスを探すことが大切です。うまくいかないかもしれないと思っても、時にはうまくいくこともあります。もしチャンスがあれば、迷わずに飛び込んでみてください。人生は一度きりですから。

※このインタビューは2025年10月に実施されました。


GHIT R&D Forum2024でモデレータ―を務めた


GHIT R&D Forum2024 でパネリストの皆さんと
略歴
ロイド 雪絵ミシェール
投資戦略、投資マネジメント
シニアマネージャー

これまでラオス、タンザニア、コンゴ民主共和国などの低・中所得国でUNICEFやJICAによる感染症対策関連プロジェクトに従事。民間企業での実務経験を経て2024年6月にGHIT Fund入社。現在は投資戦略のシニアマネージャーとして、公募から投資後のプロジェクト管理に携わっている。免疫学の基礎研究やデング熱・胎盤マラリアのワクチン研究経験を活かし、主にワクチンと診断薬領域を担当。北里大学理学部卒、東京大学医科学研究所を経て、ハワイ大学熱帯医学研究科で生命科学博士号(専攻:熱帯医学)を取得。

(所属・役職はインタビュー当時のものです)

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(所属・役職はインタビュー当時のものです)