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【イベント報告】世界医学サミット
2015年10月にベルリンで開催された世界医学サミット(WHS)は、世界80カ国の研究機関・政府・民間組織・民間企業から1,200人ものリーダーが一同に会し、地球規模の課題、グローバルヘルスについて話し合う極めて重要な国際会議として位置付けられています。2015年10月に開催されたWHSのメイン会場では、GHIT Fund CEOのスリングスビーがパネリストとして登壇するとともに、投資戦略・開発事業担当部長である鹿角がグローバルヘルスR&Dに関するワークショップでファシリテーターを務めました。 このWHSでは、アフリカでの長引くエボラ熱の蔓延、持続可能な開発目標(SDGs)議題の発表、そしてドイツでのG7開催などの多岐にわたる直近のグローバルヘルスにおけるアジェンダを網羅し、重要な道標を形成しました。さらに、同時期にG7各国の保健大臣による保健大臣会合も開催されています。
WHS初日には、GHIT FundとDrugs for Neglected Diseases initiative(DNDi)が共催で、グローバルヘルスR&Dのワークショップを開催し、低中所得国における感染症問題の重大さ、必要とされる製品をいかにして市場に投入するか、製品開発パートナーシップ(PDP)が果たす役割等について議論が行われました。ワークショップは、GHIT Fundの鹿角とDNDi事業開発部長のジャン・ピエール氏が進行役を務め、マラリア、結核、シャーガス病、その他の顧みられない熱帯病を対象とする複数の治療薬とワクチンの開発事例に触れながら、楽観的な側面についても議論を行いました。Medicines for Malaria Venture (MMV)のCEOであるデイビッド・レディー氏は、MMVと製薬会社との製品開発パートナーシップの成功事例について言及するとともに、新たなSDGのアジェンダと製品開発パートナーシップの関連性について述べました。武田薬品の価値創造部長のロバート・アーク氏は、GHIT FundとMMVとのパートナーシップの経験を共有し、このコラボレーションから学び得た、21世紀のグローバルヘルスR&Dにおける製薬企業の役割について言及しました。さらに、ノバルティス財団代表のアン・アーツ氏は、低所得国向けのR&Dと効果的な医療提供の関係性についても議論を展開しました。アントワープ熱帯医学会のクリストフ・デコスター氏は、国際医療政策ネットワークの記事に、GHIT Fund とDNDiのワークショップを通じて「民間企業が企業として営利を追求しながらも、公共財(Public good)に関して真剣に考慮し、最善策を模索している好例が示された」と投稿しています。[1]
開会式に伴って行われた薬剤耐性のパネルディスカッションでは、GHIT Fund CEOのスリングスビーが登壇しました。スリングスビーは、薬剤耐性が問題になる昨今、顧みられない熱帯病や途上国の感染症向けの製品開発が重要である理由、そして製品開発の手法について述べました。このパネルディスカッションは、薬剤耐性に関するベルリン宣言(Berlin Declaration on AMR)後に行われたもので、ロベルト・コッホ財団プレジデントのローター・ウィラー教授、シンガポール国立大学医療システムCEOのジョン・ウォン教授、国境無き医師団医療アクセス部長のマニカ・バラセグラム氏、英国主席医務官のサリー・ディビス教授、WHO医療システム・イノベーション部長補佐であるマリー・ポールキエニー氏、アエラス副社長のルイス・シュレイガー氏、ワイツマン科学研究所キールマンセンター生体分子構造・アセンブリー部門長のアダ・E・ヨナス教授がパネリストとして登壇しました。
[1] http://www.internationalhealthpolicies.org/staying-healthy-at-the-2015-world-health-summit-in-berlin/