プレスリリース

March 20, 2014

第二回助成案件発表 世界で最も顧みられない熱帯病、結核に対して、約12億円を助成

東京、日本(2014年3月20日)—本日、グローバルヘルス技術振興基金(The Global Health Innovative Technology Fund、以下GHIT Fund)は、世界で最も顧みられない熱帯病である住血吸虫症および寄生性線虫に対する革新的な治療薬の開発を加速するため、新規3案件に総額約6億8,000万円の助成金を交付することを発表いたします。さらに、結核ワクチン開発に対する2回目となる約5億6,500万円の助成金交付を発表するとともに、マラリア、結核、顧みられない熱帯病に対する有望な候補薬の同定を支援する新しいプログラム、Hit-to-Lead Platform(HTLP)の発足についてもお知らせいたします。

 

世界では10億人の最貧困層が数々の顧みられない熱帯病(「最底辺の10億人への負荷(the burden of the bottom billion)」とも呼ばれる)に苦しんでおり、さらに30億人が感染リスクを抱えています。熱帯病への感染は必ずしも致死的ではないものの、小児の成長遅延、認知力や記憶力の障害、栄養不良、臓器損傷、失明、外観の問題、および永続的な後遺症をもたらすことがあります。

 

「私たちは、世界の最貧困国に暮らし、顧みられない熱帯病に苦しむ10億人の人々の健康と生活を改善する可能性のある新たな3件のプロジェクトを支援・推進できる事を大変嬉しく思います。これらの疾患による身体的損傷は計り知れないものですが、それは彼らに与える影響の一部にすぎません。感染者は地域社会から疎外され、重篤な疾患により繰り返される症状のため家族を養うこともできず、その結果、終わりなき貧困のサイクルに陥ってしまいます。しかし、これは阻止可能であり、我々は阻止しなくてはなりません」と、GHIT Fund のCEOであるスリングスビーBTは述べています。

 

より安全で効果的な、シャーガス病治療のための併用療法の開発

【1】疾患:顧みられない熱帯病(シャーガス病)、製品:医薬品

1件目となる助成金は、DNDi(スイス)とエーザイ株式会社によるシャーガス病の新規併用療法の開発に対して約3億8,400万円を助成します。シャーガス病は、サシガメによって媒介される感染症であり、中南米において寄生虫による死亡の最大の原因となっています。現在800万人が罹患しているとされており、その多くが治療を受けていないとされます。未治療の場合には心疾患や腸管障害などを招くことが懸念されています。

 

現在のシャーガス病治療薬「ベンズニダゾール」「ニフルチモックス」は、成人が服薬した場合の忍容性が不十分で、2ヶ月以上の治療期間を要し、慢性期の治療には使用が難しいのが現状です。シャーガス病は、様々な心疾患の原因にもなっており、重篤な障害も引き起こし、時には死に至る場合もあります。専門家は、複数の薬剤による併用療法に期待を寄せていましたが、未だ併用療法の安全性及び有効性が明らかになっていません。

 

今回の助成金は、基準治療薬であるベンズニダゾールと新世代トリアゾール系化合物であるE1224の併用療法に関する共同開発を支援するものです。DNDiとエーザイは、次の2年間をかけて第Ⅱ相Proof of Concept(創薬概念の実証)試験で併用療法の安全性・有効性の試験を行います。この試験結果は、複数の国で行われる第Ⅲ相臨床試験の設計に活用されます。また、将来の承認に備えて必要とされる、化学、製造及び品質管理に関する試験、非臨床試験などが実施される予定です。

 

住血吸虫症の小児用製剤の開発

【2】疾患:顧みられない熱帯病(住血吸虫症)、製品:医薬品

2件目は、Top Institute Pharma(オランダ)、Merck KgaA社(ドイツ)、アステラス製薬株式会社、およびスイス熱帯公衆衛生研究所が参加するパートナーシップへの約1億9,000万円の助成金交付です。この助成を通じて、住血吸虫症の代表的治療薬であるプラジカンテルの小児用製剤の開発および登録を支援します。 

 

別名、ビルハルツ住血吸虫症とも呼ばれるこの疾患は、ある種の淡水巻貝に生息する寄生虫に起因するものです。この住血吸虫症は淡水を通して広がり、治療しない場合、慢性的感染により肝肥大、血便および血尿が生じることがあり、さらに膀胱がんリスクが増大するおそれがあります。78ヵ国で感染が広がっており、小児1億人を含めた2億3,000万人以上が罹患し、寄生虫感染症による影響という面ではマラリアに次ぐものとなっています。

 

プラジカンテルは現在、成人および6歳以上の小児に限り使用が推奨されており、同パートナーシップは乳幼児に適した製剤の開発を目指しています。現在の小児用プラジカンテル製剤は安全性データが不足していることと、大きく飲み込みにくい錠剤のサイズ、苦く不快な味のため、適切な治療への妨げとなっています。住血吸虫症に関する国際的専門家が多数参加する同パートナーシップは、ラセミエステルプラジカンテルとレボ−プラジカンテルと呼ばれる2種の新製剤の試験用バッチを製造し、まずは成人を対象に試験を実施し、その後乳幼児を対象とする味覚試験を行う予定です。今回の助成金交付は、これら新製剤の第II相臨床試験のための準備にも役立てられます。

  

フィラリア成虫に寄生するボルバキア菌駆除のための新たな薬剤候補の探索

【3】疾患:顧みられない熱帯病(リンパ系フィラリア症&オンコセルカ症)、製品:医薬品

3件目として、ボルバキア菌(Wolbachia)を標的とする新たな薬剤化合物の探索研究を行う、リバプール大学熱帯医学校(英国)、リバプール大学(英国)とエーザイ株式会社のパートナーシップに約1億円を助成します。ボルバキア菌は寄生性線虫(フィラリア)と共に作用し、リンパ系フィラリア症(象皮症)やオンコセルカ(河川盲目症)などの寄生虫感染症の一因となり、1億5,000万人を超える人々を苦しめています。近年実施された実地試験では、抗生物質ドキシサイクリンを用いた抗ボルバキア治療が、既存の抗フィラリア薬に比較して安全かつ有効であることが裏づけられています。しかし、ドキシサイクリンの治療には4~6週間、毎日の投薬が必要であり、幼児や妊娠中の女性にとって有害であることが懸念されています。このような背景から、ボルバキア菌を標的とする新薬の開発の必要性が高まっていました。

 

これまで、1万を超える抗ボルバキア薬候補化合物をスクリーニングした結果、約50の候補が明らかにされ、感染症薬として可能性のある約6種類の分子を特定するに至っています。研究グループは、これらのうち2つに焦点を当てる予定です。この助成により、この2つの主要な化学型を直接比較する12ヵ月の試験を実施し、1~2年以内に薬剤開発の候補の特定を目指します。

 

新たな結核ワクチン候補への助成拡大

【4】疾患:結核、製品:ワクチン

最後に、独立行政法人医薬基盤研究所(日本)、株式会社クリエイトワクチン(日本)、および国際非営利バイオテク機関であるAeras(ワシントンDC)が共同開発する新たな結核ワクチン候補に関する取り組みに約5億6,500万円の追加助成を行います。GHIT Fundは2013年11月、同パートナーシップに対し、初回の助成として約7,000万円を交付しました。2回目の助成により、前臨床試験をさらに推進することによって、安全性および免疫原性を検討する第I相臨床試験への移行が可能となります。このワクチン候補は、患者の粘膜をターゲットとして結核菌が肺に侵入するのを阻止する初めてのワクチンです。マウスではこのワクチンにより、現行の結核ワクチンBCG (Bacillus Calmette–Guérin)の防御効果の増大が認められています。BCGはほぼ90年前に開発されたものであり、結核による負荷が特に高い十代の人口や成人では十分な防御効果が得られません。このワクチンは、若者や成人の肺結核の予防に有効である事が期待されています。

 

 

化合物ライブラリーから得られた「ヒット化合物」を、有望な「リード化合物」へ

GHIT Fundは、2014年3月17日、新規プログラム「Hit-to-Lead Platform (HTLP)」を発足し、第1回目となるGHIT Fund RFP Hit-to-Lead Platform 2014-001の公募を開始いたしました。GHIT Fundは、HTLPプログラムに対して今後2年間にわたり約2億2,000万円の予算を割り当て、日本の製薬会社や研究機関の化合物ライブラリーから得られる「ヒット化合物」を、「リード化合物*」へと転換することを目指します。この新しいプログラムを通じて、マラリア、結核、顧みられない熱帯病に対する、有望な薬剤化合物の研究を支援していきます。

 

「日本の製薬会社や研究機関は多くの資源を保有しており、その中にはマラリア、結核、および顧みられない熱帯病などの感染症に効果が期待できる化合物ライブラリーも含まれています。しかしながら、これらの化合物ライブラリーに関して、効果の可能性を確かめるスクリーニングがまだ実施されていないものも多数あります。HTLPプログラムを通じて、まだスクリーニングされていない化合物や、新しく、より効果的な作用機序を持つ化合物の開発を促進することで、感染症に対する創薬パイプラインを拡大することができます」と、GHIT Fund の黒川清代表理事は述べています。

 

HTLPプログラムの発足によって、既にGHIT Fundが実施している候補化合物探索プログラム「Screening Platform」と、リード最適化〜非臨床・臨床試験〜申請登録の段階を助成対象するプログラム「Grants」を繋ぐことができ、探索研究〜申請登録に至る全ての段階を支援することが可能になります。

 

* リード化合物:感染症薬として有望であるものの、人間に使用される医薬品としての試験が可能になるまでにさらなる化学的改良が必要となる化学物質。

 

 

GHIT Fundについて

GHIT Fundは、日本の製薬会社5社(アステラス製薬株式会社、第一三共株式会社塩野義製薬株式会社、エーザイ株式会社、武田薬品工業株式会社外務省、厚生労働省およびビル&メリンダ・ゲイツ財団によ官民パートナーシップであり、5年間で約100億円を超える助成を見込んで20134月に設立されました製薬会社、政府および市民社会から成る共同事業体がともに取り組み、顧みられない疾患に関する研究および開発を支援する初めてのファンドです。日本政府と世界第三位の規模を誇る日本の製薬業界の連携は、開発途上世界のための薬剤開発に知見と技術革新という強力な原動力をもたらします。

 

 

RFPについて

本日発表した助成案件は、2013812日に発表した第二回助成金事業GHIT Fund RFP2013-002のものであり、第二回事業では合計18件のプロポーザルを受理しました。GHIT Fundは同年11月に第一回の助成金案件で、マラリア、結核およびシャーガス病の治療薬およびワクチンに取り組む世界的パートナーシップに対し6件の助成発表を行いました。

 

詳しい情報についてはhttp://ghitfund.org/を参照のこと。

 

<当件に関する問い合せ>

一般社団法人 グローバル技術振興基金

担当:鹿角、玉村

Tel: 03-6441-2032