Investment

プロジェクト

単回経口治療薬および予防薬の双方への展開の可能性のある新規作用機序抗マラリア薬の前臨床研究

イントロダクション/背景

イントロダクション

GHITからの継続的な資金援助を受け、我々プロジェクトチームは、非常に魅力的な寄生虫学的およびADMEプロファイルを有する新規化合物シリーズを創出し、MMVの定める後期リード化合物(Late Lead)基準を満たすMMV172を同定した。この化合物は、次世代の抗マラリア薬として理想的なプロファイルを示す。すなわち、速効性があり、マラリア原虫のライフサイクルのすべての段階において高い抗マラリア効力を示し(TCP-1、TCP-3、TCP-4、TCP-5の可能性)、耐性菌の発生のリスクも低く、優れた物理化学的および薬物動態学的特性を示す。、また、マラリアのマウスモデルにおいて高い有効性を示し、治療および予防の双方においてヒトへの経口での低薬量での効果が期待できる。本化合物系統は、マラリア原虫の生存に重要な酵素を選択的に阻害するという新規の作用機序により抗マラリア活性を発揮する。

 

プロジェクトの目的

プロジェクトの第一の目的は、月1回経口投与による予防薬を標的としたMMV172のIND申請のための前臨床開発試験を完了させることである。また、再発性三日熱マラリア(P. vivax)の霊長類モデルにおけるMMV172の有効性も引き続き検討し、MMV172がSERCAP(Single Encounter Radical Cure and Prophylaxis)の基準を満たすかどうかを判断するために必要な抗休眠体(hypnozoite)活性についてのPK/PDの理解を深める。必要であれば、代替化合物を同系統から選択するための指針を獲得する。プロジェクトの第二の目的は、異なるTPP(Target Product Profile)、つまり再発性三日熱マラリアに対する経口治療薬または予防薬のための長時間作用型注射薬のいずれかの後期リード化合物を1つ以上、創出することである。これは、先行するMMV172がクライテリアを満たさない場合のバックアップ化合物にもなり得る。

 

プロジェクト・デザイン

創薬化学、生物学、寄生虫学、薬物動態学、毒性学、製剤学、スケールアップ合成などの多様なスキルや経験からなるプロジェクトチームを組織する。MMVは、科学専門家の世界的ネットワークを活用し、プロジェクトの活動を支援するとともに、進捗状況を確認する。Late Lead化合物MMV172を筆頭に、後継の候補化合物プロファイリングと前臨床開発試験を実施し、本化合物が望ましい開発化合物要件を満たし、ヒトへの投与について当局からの承認に必要なデータパッケージを有していることを確認する。後継化合物についても、寄生虫学、薬効有効性、ADME、PKの各試験を実施し、MMV172の弱点を補完する、あるいは別のTPPを満たす可能性を検討し、Late Lead化合物として必要なデータパッケージを構築する。

本プロジェクトによって、グローバルヘルスの課題はどのように解決されますか?

マラリアは2023年に約59.7万人の死亡を引き起こし、そのほとんどが5歳未満の小児である。マラリアはプラスモジウム属(Plasmodium)の寄生虫によって引き起こされる。ヒトでは、5種の原虫がこの病気を引き起こすことが知られている。特に重要なのは、最も致死率が高く、サハラ以南のアフリカで患者の93%を占める熱帯熱マラリア(P. falciparum)と、東南アジアとアメリカ大陸で流行し、寄生虫の肝臓での休眠体(hypnozoite)により治療後の疾患再発を引き起こす三日熱マラリア(P. vivax)である。現在の抗マラリア対策はアルテミシニン併用療法(ACT)に大きく依存しているが、現在使用されているすべてのACTに対して寄生虫の感受性が低下していることが懸念され、東南アジアの一部や、併用薬の耐性が知られているアフリカでも大きな効果の低下につながっている。最も多くの死者が出ているアフリカで耐性菌が蔓延すれば、重大な健康被害が懸念される。この差し迫った危機に対応し、マラリアを根絶することを最終的な目的として、既存薬の耐性株にも有効な新規の作用機序を持つ新薬が必要とされている。マラリア根絶を推進には、急性期の治療や再発の防止に加え、感染を阻止し、予防薬にも使用できる化合物の開発が特に重要である。さらに、妊娠の全期間において安全に使用できる新薬が非常に望ましい。

このプロジェクト化合物は、三日熱マラリアの赤内期と肝臓期、および熱帯熱マラリアの赤内期、肝臓期、有性期いずれにも高活性を示し、さらに2次感染を阻止できるという効果もあることから、混合感染を含むいずれのマラリアに対しても臨床候補化合物を創出できる可能性がある。この薬剤プロファイルは、マラリア撲滅にむけ大きなインパクトが期待できる。

本プロジェクトが革新的である点は何ですか?

この化合物系統は構造新規性が高く、新しい作用機序と独自な寄生虫学的プロファイルを有し、複数のTPPを満たす開発候補を創出できる可能性がある。MMV172の開発は、月1回の経口予防薬を目標としているが、適切な物理化学的特性を有する関連化合物もあり、今後の検討によっては、3カ月以上の予防効果を可能とする長期持続型の注射剤創製の可能性も含む。

特筆すべきは、この化合物系統には、三日熱マラリア肝臓休眠体に有効な初めての分子作用機序を証明する可能性である。これは、現在の治療では必須である患者のG6PD欠損症の治療前検査を不要とする再発性マラリアに有効な薬剤の創出につながる。

各パートナーの役割と責任

田辺ファーマ株式会社(田辺ファーマ)、ジョージア大学(UGA : University of Georgia)、Medicines for Malaria Venture(MMV)の各チームは、プロジェクトの目的を達成するために必要な試験の設計、実施、解釈など、プロジェクトの推進に共同で責任を負う。田辺ファーマは、創薬と前臨床開発の専門知識を活用する。MMVは、マラリアに関する専門知識を活用し、プロジェクトの成果物が、臨床研究につながるプロファイルに合致するよう努める。UGAチームは、肝臓内休眠体に関する寄生虫学の専門知識を活用し、in vitroおよびin vivoの三日熱マラリアモデルで化合物の評価を行う。また、多くの活動は信頼できる委託研究機関やMMVネットワークのパートナーを通じて実施される。科学的リーダーシップは、すべての共同研究パートナー組織の代表者が共同で担う。