Investment

プロジェクト

シャーガスLAMP:先天性シャーガス病(経胎盤感染)新生児の早期治療のための簡便診断法(ポイントオブケア試験)‐プロトタイプから製品化へ

イントロダクション/背景

イントロダクション

シャーガス病は寄生虫トリパノソーマ・クルジー(Trypanosoma cruzi)によって引き起こされ、中南米では650万人以上、その他地域でも50万人以上が影響を受けています。寄生虫による感染は制御されつつありますが、母子感染は依然として公衆衛生上の課題となっています。シャーガス病には2種類の治療薬(ベンズニダゾールとニフルチモックス)があり、これらは、新生児に対して高い治療効果をもち、副作用が少なく安全に使用できます。そのため、早期診断による迅速な治療開始が非常に重要です。しかし、現在母子感染の診断には数か月かかり、検査が多く、感度が低いという課題があります。G2025-121の主な目的は、先天性シャーガス病を迅速に検出するためのシャーガスLAMPを製品として登録することです。LAMP法は、リアルタイムPCRと同等の感度と特異性を持ち、より簡便で迅速、かつ低コストで実施可能な準ポイント・オブ・ケア遺伝子診断ツールです。

 

プロジェクトの目的

シャーガスLAMPの製造販売承認を、アルゼンチンのANMAT、ボリビアのAGEMED、それぞれの規制当局から取得します。加えて、協業する2社(栄研化学株式会社 以下「栄研化学」およびWiener Laboratorios SAIC 以下「WIENER」)は、本技術の今後の商業化に向けた枠組みを定める覚書を締結する計画です。同時に、先天性シャーガス病の診断精度向上のため、LAMP法の活用を推進します。本ツールの導入を促進することで、診断へのアクセスが向上し、WHOのNTDs(顧みられない熱帯病)2030ロードマップやPan America Health Organization(PAHO:汎米保健機構)の母子感染制圧(Elimination of Mother-To-Child Transmission : EMTCT)イニシアチブに貢献することが期待されます。

 

プロジェクト・デザイン

本プロジェクトにおいては、前プロジェクトG2020-203で得られた新生児の検体(ヘパリン加血および乾燥ろ紙血(DBS))でのデータ取得を、ボリビア・タリハ県グランチャコ地方ヤクイバの施設にて拡大します。本施設での新規データ取得は、シャーガスLAMP検証研究における分析性能評価を超えて、臨床検体を用いた前向きデータをANMATとAGEMEDが要求すると見込まれるためです。本プロジェクトでは、栄研化学およびINGEBIによる過去の分析結果、G2020-203プロジェクトで得られた臨床性能データ(臨床バリデーション)およびアルゼンチンのWIENERにて組み立てられる最終製品を用いた性能評価結果を総合的に活用し、シャーガスLAMPの製品化に向けた薬事申請書の作成およびANMAT/AGEMEDでの薬事登録申請を行います。さらに、診断ポリシーの見直しと、より迅速な診断・治療へのアクセスの一般化を目指し、地域・国家レベルの保健当局との定期的な会合、WHOやPAHOへの提言を通じて、本技術の導入を働きかけていきます。

本プロジェクトによって、グローバルヘルスの課題はどのように解決されますか?

先天性シャーガス病では、原因寄生虫の母子感染を、高感度かつ迅速に診断できないことが乳児への早期治療を妨げています。治療薬(ベンズニダゾールとニフルチモックス)は生後1年以内の投与でほぼ100%の治癒率を示しますが、従来法である寄生虫を顕微鏡で直接観察する方法は感度が低く、陰性の場合は数か月後に追加検査が必要です。しかしこの手順には2つの大きな欠点があります:(i) 追加検査の遅れによって治療薬の効果が損なわれること。(ii) 検査の手順が煩雑なため、多くの子どもが追跡から脱落し、最終的には成人になって症状が出るまで診断されないことです。その頃には治療薬の効果も大幅に低下しています。

前回のGHIT Fundプロジェクト(G2020-203)では、シャーガスLAMPが顕微鏡を用いた従来法に比べ50%以上早期検出でき、リアルタイムPCRと同等の性能を示しました。安価で簡便かつ迅速なLAMPは有望な診断技術です。

本プロジェクトが革新的である点は何ですか?

私たちは、シャーガスLAMP試作品のアルゼンチンおよびボリビアでの薬事承認取得に向けて取り組みます。本遺伝子検査技術は、先天的性シャーガス病感染を高感度かつ迅速に検出できることが示されており、治療効果が最も高い時期に適切な治療へアクセスすることを大きく促進すると期待されています。

各パートナーの役割と責任

本プロジェクトのコーディネーターはISGlobalが務め、栄研化学およびWIENERが中心となり、シャーガスLAMPの薬事承認申請書を作成し、アルゼンチン(ANMAT)およびボリビア(AGEMED)の規制当局に提出します。また、本プロジェクトには両社間の覚書締結、協業も含まれます。

INGEBIおよびSANITは、それぞれの国において栄研化学およびWIENERを支援します。

さらにINGEBIは外部精度管理用検体パネルを提供するとともに、ボリビア・ヤクイバのルベン・セラヤ病院で収集された臨床検体に対するリアルタイムPCR検査を実施します。現地での活動についてはSANITが担当します。

他(参考文献、引用文献など)

シャーガスLAMP技術の詳細については、以下の論文をご参照ください。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39357671/

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37058542/

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38971173/