Investment

プロジェクト

赤血球期マラリアワクチン候補 SE36/cVLP のバイオ製造と前臨床開発
  • 受領年
    2025
  • 投資金額
    ¥800,715,002
  • 病気
    Malaria
  • 対象
    Vaccine
  • 開発段階
    Preclinical Development
  • パートナー
    大阪大学微生物病研究所 ,  コペンハーゲン大学 ,  AdaptVac ,  University of Tübingen (UKT) ,  味の素株式会社 ,  ノーベルファーマ株式会社 ,  欧州ワクチンイニシアチブ(EVI)
  • 過去の案件

イントロダクション/背景

イントロダクション

マラリアは全世界で2億6千万件の症例と60万人の犠牲者が報告されている。小児のマラリア予防を目的とした2種類のスポロゾイト期ワクチンが認可され問題の解決に期待が寄せられている。しかし、赤血球期のマラリア原虫を制御し、より持続的な効果を確保する必要がある。本プロジェクトは、これまでGHITから資金提供された4つのプロジェクトの成功を基に、熱帯熱マラリア原虫のSE36抗原に基づく赤血球期ワクチンの開発を進めるものである。アフリカで行われた第I相試験では、BK/SE36ワクチンやCpG アジュバントを加えたBKSE36/CpGワクチンの安全性が確認され、高いマラリア防御効果が示されている。本プロジェクトは新規製剤SE36/cVLPワクチンにより防御効果のさらなる向上と商品の低廉化により、対象集団への供給をより容易にしようとするものである。

 

プロジェクトの目的

本プロジェクトの目標は、SE36/cVLPワクチンの臨床開発を迅速に進め、単独で、またはカクテルワクチンに組み込むための安全で効果的な赤血球期ワクチンの裏付けとなるデータを得ることである。以下に主な目的を示す。

・SE36タンパク質のGMP(医薬品の適正製造規範)を遵守したバッチを製造する。

・SE36タンパク質をcVLP (Virus Like Particle)に結合した SE36/cVLPのGMPバッチを生産する。

・SE36/cVLPにSWEアジュバントを加えた製剤のGLP(優良試験所基準)準拠の非臨床毒性試験を実施する。

・SE36/cVLP(+/- SWE)の第I/IIa相(CHMI)試験を実施するための臨床試験文書を準備する。CHMI試験とはマラリア未経験の成人に対してワクチン接種とそれに続くマラリア原虫の人工感染を実施し、安全性、免疫原性、および防御効果を評価する試験である。

 

プロジェクト・デザイン

従来のSE36タンパク質のGMP製造は、ヒトに対して安全な大腸菌E. coli で発現させたのちに数回のクロマトグラフィーステップを経て精製してきた。本プロジェクトではCorynex® 発現システムによる簡素化されたプロセスで高収量の製造を提案している。さらに、SE36 タンパク質をカプシドウイルス様粒子 (cVLP) と結合させ免疫系に対して高密度の提示を行うことにより免疫原性を高める。最近、試験的に製造したSE36/cVLP の小規模なバッチでは、結合が安定しており、結合した SE36 はマウスで非常に免疫原性の高いことが示された。この成功を基に、現在、SE36/cVLP のより大きな GMP バッチの製造、GLP 準拠の非臨床毒性試験の実施、および第I/IIa 臨床試験(CHMI)を実施するための試験文書の準備を行う。これらを成功裏に完了し、ヒトに対する初めての安全性、免疫原性、有効性試験の準備が整う。

本プロジェクトによって、グローバルヘルスの課題はどのように解決されますか?

SE36/cVLP は、より少ない投与量でより高い効能とより長い持続性をもたらすよう設計されており、単独で使用することや第2世代の多段階カクテルワクチンに組み入れることも可能になる。このように製造費用の低廉化により費用対効果の高い赤血球期ワクチンを流行地域に供給し、マラリア感染リスクがある人々の罹患率と死亡率を減らすことによってグローバルヘルスへの大きな貢献が期待できる。

本プロジェクトが革新的である点は何ですか?

本プロジェクトではSE36タンパク質を新しい発現システムで効率的に製造し、抗原提示プラットフォームであるcVLP と結合することにより効果的な抗原提示によって、全体的な製造コストを削減し、ワクチン誘導免疫反応の規模と持続時間を改善し、最終目標として安全で低廉な価格で効果的な赤血球期マラリアワクチンを供給できることである。

各パートナーの役割と責任

本プロジェクトにおいては、これまでに、また現在進行中の研究開発における協力関係を基盤としてパートナー関係を築いてきた。欧州ワクチンイニシアチブ(EVI)はDDP(Designated Development Partner)として、管理、調整、および科学的及び各種の規制に対する助言を行う。大阪大学RIMD(OU)およびコペンハーゲン大学(UCPH)は、それぞれSE36タンパク質とSE36/cVLPの調製を担当するとともに科学的助言を行う。AdaptVacは、cVLPの製造とSE36との結合反応に関する技術顧問を務める。エバーハルト・カール・テュービンゲン大学(EKUT)は、第I/IIa相(CHMI)臨床試験の準備を行う。味の素株式会社は、Corynex®システムによるSE36タンパク質のCDMOとなり、SE36のプロセス開発とGMP製造をサポートする。一方、ノーベルファーマ株式会社(NPC)は、開発戦略の相談において本プロジェクトに貢献する。

他(参考文献、引用文献など)

1. Persistence of anti-SE36 antibodies induced by the malaria vaccine candidate BK-SE36/CpG in 5–10-Year-Old Burkinabe children naturally exposed to malaria. Vaccines. 2024; 12(2):166. https://doi.org/10.3390/vaccines12020166

2. Safety and immunogenicity of BK-SE36/CpG malaria vaccine in healthy Burkinabe adults and children: a phase 1b randomised, controlled, double-blinded, age de-escalation trial. Frontiers in Immunology, 14, 1267372. https://doi.org/10.3389/fimmu.2023.1267372

3. Safety and immunogenicity of BK-SE36 in a blinded, randomized, controlled, age de-escalating phase Ib clinical trial in Burkinabe children. Frontiers in Immunology, 13, 978591. https://doi.org/10.3389/fimmu.2022.978591

4. World malaria report 2024 by WHO https://www.who.int/teams/global-malaria-programme/reports/world-malaria-report-2024