イントロダクション／背景

1.イントロダクション

ヒット創出のためのフラグメントベースのスクリーニングは、数多くの治療分野でさらなる最適化のための高品質のシリーズを提供してきたにもかかわらず、マラリア創薬にはまだ適用されていません。マラリアの研究開発に革新的な技術を導入することで、既存の治療法に対する耐性の脅威に対抗する新薬を提供できる可能性が高まります。そこで私たちは、フラグメントベースのスクリーニングヒット創出の専門家からなる多国籍チームを編成し、この強力な技術を優先順位の高い2つのマラリア創薬標的に対して適用します。

2.プロジェクトの目的

このプロジェクトの目標は、X線構造解析により加速された合成に沿ったリード化合物探索という最先端のXChemフラグメントアプローチを初めて適用することにより、高度に検証された2つのマラリア標的に対して、高品質のヒット化合物シリーズを創出することです。標的であるPf DPCKとPf KRSは、マラリア創薬コミュニティによって優先的に開発された必須かつ新規の原虫標的です。さらなる最適化の出発点となる高品質の化学物質が必要です。

3.プロジェクト・デザイン

選択された2つの生物学的標的の結晶化条件は、高分解能（好ましくは＜2.5Å）で一貫して回折するタンパク質結晶の大量生産（〜1000）を可能にするように最適化されます。次に、各結晶は化学空間をカバーするように最適化され、迅速かつ安価なフォローアップ合成を可能にして迅速な構造活性データを提供できるように設計されたライブラリーのフラグメントで個別に浸漬されます。標的に結合するフラグメントの結晶構造を解明することで、その化合物がどのように標的に結合するかを理解できるようになり、チームは AIと医薬化学技術を適用して設計し、標的とより強固に結合する新しい化合物を合成できるようになります。これらの設計、製造、テストのサイクルを適用することで、チームは選択したヒット化合物を最適化し、高品質の創薬の出発点を提供します。一連の生化学的・生物物理学的ツールは、ヒット化合物の特性評価に使用され、高度な化合物はマラリアのライフサイクル活動について完全にプロファイリングされます。

本プロジェクトによって、グローバルヘルスの課題はどのように解決されますか？

2020年にはマラリアにより約627,000人が死亡し、その殆どが5歳未満の子供と妊婦でした。これは主に新型コロナウイルス感染症の世界的なパンデミックによる診断·治療資源へのアクセス障害により、前年比患者が大幅に増加したものです。
アルテミシニン併用療法（ACT）は、マラリアの主要な最前線治療です。ACTの有効性を妨げているのは、東南アジアや最近ではサハラ以南のアフリカで耐性菌が出現していることです。アフリカ（最も多くの死者が出ている地域）で耐性菌が蔓延した場合、大きな健康危機が起こる可能性があり、新しい治療法、理想的には新規のメカニズムを持つ治療法の使用が承認される必要性が浮き彫りになります。このような危機的シナリオに対応し、最終的にはこの病気を根絶することを目標に、MMVは、既存の治療薬に伴う耐性リスクに対処する新しい作用機序を備えた新薬を発見、開発、提供することを目指しています。急性期の治療だけでなく、感染を阻止し、化学的防御／化学的予防の場面で使用できる化合物の開発は、撲滅の課題を推進する上で特に価値があります。

本プロジェクトが革新的である点は何ですか？

フラグメントベースのスクリーニングと最適化をマラリア創薬に応用することは斬新です。同チームは、革新的な AI最適化技術を使用して、現在薬剤候補が存在しない高価値のマラリア標的に対する創薬の新たな出発点を提供します。

各パートナーの役割と責任

オックスフォード大学のグループは、両標的の生成と結晶化、そしてフラグメントスクリーニングと初期フラグメントの最適化を担当しています。ダンディー大学と東京大学のグループは、化合物の詳細な生化学的特性評価を実施する予定です。ダンディー大学は、最適化への移行に適した、検証済みのヒットを提供するAI主導の技術の適用を通じて、優先順位付けされたヒットの最適化を主導します。MMVは、マラリア創薬の専門知識とマラリアのライフサイクル活動のヒットの完全なプロファイリングを提供します。