Investment

プロジェクト

4種すべての血清型に対して中和活性を有する抗デングウイルス抗体の前臨床開発

イントロダクション/背景

イントロダクション

デング熱は、世界中の熱帯および亜熱帯地域で見られる蚊媒介性ウイルス感染症です。 デング熱の原因となるデングウイルス(DENV)には4種の異なる血清型があり、感染によって、高熱、激しい頭痛、関節、筋肉および骨の痛み、ならびに皮膚の発疹などの症状を引き起こします。DENVは血液凝固機能を阻害するため、軽度の出血がしばしば観察されます。重症の場合には血漿が血管から漏出し、致命的となる体液喪失が認められます。最近の調査によると、年間におよそ3億9000万人が感染しており、50万人の重症患者が入院しています。デング熱に対する治療法はまだ確立されていません。

 

プロジェクトの目的

本プロジェクトでは、抗体依存性感染増強(ADE)リスクのないデング熱の治療薬として、4種すべての血清型を中和できる安全かつ有効性の高い抗DENV抗体の開発を目指しています。なお、ADEは2回目のDENV感染における重症化に関連すると考えられています。

 

プロジェクト・デザイン

中外製薬とSIgNはGHIT fundのパートナーとして新規抗DENV抗体の前臨床開発に取り組んでいます。この継続プロジェクトでは、以下の目的を達成する予定です。

1)        ヒト初回投与臨床試験(FIH)に使用する治験薬のGMP製造

2)        臨床試験を開始するために必要な前臨床試験の完了(GLP毒性試験など)

本プロジェクトによって、グローバルヘルスの課題はどのように解決されますか?

デング熱の症状を伴う患者は、高熱、激痛ならびに消耗のために、1〜2週間仕事を休むことを余儀なくされます。子供が感染した場合には、その両親も1〜2週間仕事を休むことになります。DENVの流行時期あるいは突発的に流行した状況では、入院患者だけでなく外来患者の数も急増し、医療機関のリソースに大きな負担がかかります。デング熱の医療費や経済的損失の費用を含む年間の経済的負担は、世界全体で89億ドルと推定されており、デング熱による経済的損失は相当なものになります。そのため、発症期間の短縮、重症化の抑制、入院期間の短縮には大きな経済的効果があると考えられます。

抗DENV抗体により、デング熱からの回復を促進し、入院期間を短縮することが期待されます。また、抗体医薬品としての特性によって、即効性かつ長い半減期を示す特殊な予防薬として使用される可能性もあります。ワクチンとは異なり、抗DENV抗体の投与を受けた個人の免疫能に依存することなく、迅速な予防効果を得ることができます。抗DENV抗体の開発により、世界中の流行国において疾患および経済的負担を最小限にする新たな治療の選択肢が提供されるようになることが期待されます。

本プロジェクトが革新的である点は何ですか?

デング熱の予防を目的として、現在、DENVに対する複数のワクチンが開発ならびに評価されています。しかしながら、ワクチン接種にはいくつかの制限と限界があり、ウイルスを標的とする有効な治療薬の開発が早急に求められます。重要なことに、抗体医薬品とワクチンは相互に補完しながら利用することも可能です。抗DENV抗体は、デングワクチンの接種を受けていない、あるいはワクチン接種による予防効果が不十分であった患者に対しても有効性を示すことが期待されます。

各パートナーの役割と責任

中外製薬は、前臨床研究から臨床試験に至るまでの抗体医薬品開発において、さまざまな高度の抗体技術と長年の経験を持っています。中外製薬は、本プロジェクトにおける計画管理、治験薬製造、非臨床毒性試験および薬物動態試験、臨床試験、薬事ならびに規制当局との連絡を担当します。

SIgNはDENVに関する幅広い専門知識を持ち、デング熱の流行地域の1つでもあるシンガポールにおいてデング熱研究ネットワークの一端を担っています。SIgNは、in vitroならびにin vivoの抗ウイルス試験を含む、非臨床薬理学試験を担当します。

他(参考文献、引用文献など)

Xu M. et al. A potent neutralizing antibody with therapeutic potential against all four serotypes of dengue virus. npj Vaccines 2, 2 (2017).