Investment

ケーススタディ

疾病のインパクト


ラル一家は最近インドのムンバイに引っ越しましたが、ダラヴィスラムと呼ばれる人口が密集した貧困地域で、たちまち見えざる危険に晒されることになりました。ラジ・ラルは、カシミール地方で農業の仕事を失った後、仕事を求めて、最近ムンバイに引っ越してきました。ラジは、妊娠中の妻プリヤと4歳の娘ディアを連れ、ムンバイで最も貧しい住民が暮らすこの地へ越してきたのです。ダラヴィのほとんどの家には水道、トイレおよび電気がなく、この地域には効果的なゴミ処理管理プログラムがありません。ダラヴィは、500エーカーのスラムの中でおおよそ750,000から1,000,000人が暮らす人口密州地域で、感染症が広がりやすい環境です1,2

モンスーン期の激しい雨は、悪臭を放つよどんだ水溜りに流れ込みます。この溜まり水が、マラリアを媒介する蚊の生息地になります。 ラジは共同トイレの順番を待っていたある夜、知らない間に感染した蚊に刺されてしまいました。数週間後、彼は昏睡状態になり、診療所に運びこまれました。初期症状は高熱、悪寒による震え、嘔吐および下痢でした。幸運なことに抗マラリア薬投与による治療が間に合い、恒久的ダメージを受けずに済みました。もし治療を受けていなければ、感染によって腎不全、発作、重篤な貧血を招き、死んでいたかもしれません3。ラジは回復しましたが、マラリアに罹患したことにより数週間分もの給料を失った上、看病をしていた妻も給料をもらうことができませんでした。

マラリアは熱帯および亜熱帯地域の少なくとも97ヵ国、地理的にはサハラ以南のアフリカや南アジア、中央アメリカの一部、南アメリカ、カリブ海、東南アジア、中近東を含む広範囲の地域で感染が報告されています。2013年には世界で584,000人がこの病気により死亡しました。また同年に約1億9800万人がマラリアを発病し、およそ32億人(世界人口のほぼ半数)が感染リスクに晒されています4。これだけ多くの人々に感染リスクがある理由のひとつは、マラリアのある地域では無症状のままマラリア原虫を宿している人の割合が高いことです。その場合、患者は感染に気づかぬまま治療を受けず、病気の伝搬をさらに拡大させてしまうことになります。実際に、無症状性のマラリアは、症状のあるマラリアよりも多いと推定されています4,5

ラル一家は、まだ危険を脱していません。ディアの年齢が低いことやプリヤの妊娠は、マラリアに感染して合併症を引き起こすハイリスク要因です。5歳以下の子どもは免疫系が弱いため、マラリアが重症化しやすく、感染した場合の死亡リスクは大人より高いのです4。子どもの場合マラリアは、重篤な貧血、呼吸困難および脳性マラリアを引き起こし、その結果として、脳が損傷し、昏睡に至ることさえあります4,6。残念なことに、2013年における世界のマラリアによる死亡数のうち78%(453,000人)が、5歳以下の子どもなのです。これは感染した蚊に刺された結果であり、1日あたり1,200人以上の子どもが亡くなった計算になります4。プリヤが感染すれば、流産、母体死亡、重篤な貧血および胎児への病気伝搬のリスクが増大します4。胎児が感染すると、出生時に低体重となり、これが幼児死亡率や発達障害の主要原因になります6。さらにラル一家の誰もが、マラリアに何度も再感染する可能性があります。一度マラリアにかかったからといって、今後同一もしくは異なる種類のマラリア寄生虫に感染しないとは限りません。また、感染後に寄生虫が完全に身体から排除されていなければ、症状が再発することもあります。多くの場合寄生虫は体内に潜んでおり、のちに再度活発化して症状を引き起こします4,5

マラリアがもたらす経済的および社会的インパクトは、疾患そのものと同様非常に深刻です。マラリアにより労働者の生産性が低下し、医療コストが膨張した結果、一国の国内総生産が6%も下がる例もありました7。流行地域で病気がネックとなって観光業や投資が停滞すれば、地域のビジネスは衰退します。アフリカ単独でも、マラリアが原因で年間あたり生産性が120億ドル、世帯収入が約25%減少しています 。最近の研究によると、世界中でマラリアを減らし、さらに根絶することができれば、2013年から2035年までの間に2,086億ドルもの経済利益が実現されると見積もられています9

社会的インパクトは、教育面で最も顕著です。子どもが学校を病欠する原因でもっとも多いのがマラリアです10。アフリカの学校では、マラリアが原因の欠席は年間1,000万日にもなります。マラリアが原因の平均欠席日数は国と地域により大きく異なり、例えばケニアでは、小学生1人あたり年間20日間となっています。学校を欠席すれば落第率が高まり、留年やドロップアウトが増えます10,11 。このように、世界的なマラリアによる健康への影響、また経済的および社会的インパクトは甚大であり、この病気を根絶するため、効果的かつ患者に負担可能な価格の介入策が早急に求められています。

現在のマラリア対策


マラリアに対する現在の取り組みは、蚊に刺されることを未然に防ぐこと、症状のある者に投薬すること、感染リスクの高い集団への予防薬投与です4。マラリア感染を防ぐワクチンは現時点では存在していません。蚊に刺されないようにするためには、流行地域に居住もしくは渡航する際に、肌を衣服で覆い虫よけを使用して、水が溜まっているところは全て見つけて排水(または蓋)をして、家の中に殺虫剤をまき、ベッドや窓に蚊帳をとりつけるようにすることです。

対 策 限 界
薬剤含浸蚊帳
  • 使用者の行動に依存するため全体的に効果が低い
  • 蚊帳の外にいる間は防御効果が得られない
  • 成功率50%
室内殺虫剤
  • 使用者の行動に依存するため全体的に効果が低い
  • 殺虫剤に対する耐性が生じてきている
  • 6~9ヵ月ごとに処理を繰り返す必要がある
  • 成功率60%
治療薬
  • 診断に至らない場合が多いため使用する患者が限られている
  • 感染を防ぐわけではない
  • 一種類の薬剤ですべてのマラリア原虫からの防御は不可能
  • 数日間に渡り複数回の投薬が必要となり治療を中断する患者が多い
  • 薬物耐性をもつ寄生虫が出現している
  • ACTと併用する薬剤の効果が低減する
予防薬
  • 最も必要とされる最貧民層に届かない
  • 一種類の薬剤ですべてのマラリア原虫からの防御は不可能
  • 数カ月に渡り複数回の投薬が必要となり患者のコンプライアンスが低くなる
  • 数日間に渡り複数回の投薬が必要となり治療を中断する患者が多い
  • 薬物耐性をもつ寄生虫が出現する
  • 投与回数が多いため高額になる
  • 成功率56%
マラリアは原虫を体外に排出する抗マラリア薬によって治療が可能であり、ラジをはじめ適切に診断、治療されている約70%の患者にとってこれは朗報といえます4。医療従事者は通常特定の医薬品を投与する前に様々な分析を行います。たとえば感染を引き起こした原虫の種類、その原虫の感染地域における薬剤耐性、病気の段階、女性患者の妊娠状況等を明らかにする診断テストなどです12。今日行われているマラリア治療で最も有効なものの1つが、主にP. falciparum原虫によるマラリア感染に使用されているアルテミシニン誘導体多剤併用療法(ACT)と呼ばれる一連の薬剤です4。それ以外の原虫によるマラリアやP. falciparumの感染に合併症を伴う場合の治療薬には、クロロキンやプリマキン、アルテスナート、メフロキン、キニジンが挙げられます12

感染後に投与する薬剤の他に、マラリア感染そのものを予防できる薬もあります。これは抗マラリア化学保護薬といって、合併症のリスクが高く伝搬性が高い地域に住むプリヤやディアのような妊婦や乳幼児、子どもに投与されます。流行地域への渡航者も、これらの化学保護薬を予防策として服用することが勧められています。残念ながら、現在のマラリア治療薬は人々の行動や日常的なコンプライアンス次第で効果が薄れてしまいます。例えば、抗マラリア薬や化学保護薬は数日から数ヵ月間複数回服用する必要があるため患者のコンプライアンスは低くなり、治癒は不完全、薬物耐性をもつ寄生虫が発現しやすくなります13。最近はカンボジアやラオス、ミャンマー、タイ、ベトナムで耐性をもつ原虫が発生し、治療法選択や撲滅への取り組みがさらに困難になってきました4。またACTと併用する薬剤には効能が低下するものもあります13

現在ある介入策のおかげでマラリア治療が大幅に進歩してきたのは事実ですが、これら既存策には限界があり、さらに良い方法が求められています。マラリアによる世界各地での健康や経済への甚大な影響を払拭するため、GHIT Fundはマラリアに対する有効かつ確実な治療薬の開発を目指す革新的パートナーシップを構築してきました。マラリア撲滅にむけたGHIT Fundの多面的アプローチには、(1)第一三共株式会社とMedicines for Malaria Ventureによる薬剤開発パートナーシップ(2)愛媛大学とPATH Malaria Vaccine Initiativeによるワクチン開発パートナーシップという2つの協力関係があります。


抗マラリア薬開発パートナーシップ


抗マラリア薬開発パートナーシップはGHIT Fundによる「ヒット・トゥ・リード・プラットフォーム(Hit-to-Lead Platform)」、つまり新薬発見・開発のプロセスの中で「ヒット化合物」を「リード化合物」へと進化させる段階に的を絞ったプログラムの投資を受けています。こうしてできたリード化合物をさらに最適化したものが新薬候補となります。日本の第一三共株式会社(以下、第一三共)と、スイスを拠点に製品開発を行っている非営利組織MMVが連携するもので、この類のない協力関係によってマラリアの新薬開発を目指すMMVは、第一三共の持つ創薬ポートフォリオと専門知識にアクセスできるようになります。

このパートナーシップのもと、第一三共の化合物ライブラリーから50,000種類もの薬剤がすでにスクリーニングされ、有望と思われる幾つかの「ヒット化合物」が特定されて今後さらにテストされることになっています。第一三共とMMVはこれらのヒットから少なくとも1種類の「リード化合物」を見いだすことを目指します。この新薬候補がさらに開発されていきます。新薬候補は、既存のマラリア治療介入策の抱える問題をクリアするため、以下のような条件を備えている必要があります。
  • 治療効果の向上:新薬候補は、ヒトに感染する5つのマラリア原虫すべてに対して有効であり、1回の投薬で済み、薬物耐性を生じにくいものです。さらに以下の条件を備えた薬剤候補が理想です。
  • 即効性:血流から即座に寄生虫を排除し症状を速やかに緩和すること
  • 持続性:体内に残って長期間にわたって有効性を発揮、残存している寄生虫を最長4週間にわたって駆除すること
  • 再発予防と伝搬阻止:病気の再発や伝搬が抑えられるよう、活動休止状態(つまり患者が無症状の間)のマラリア原虫を駆除すること
  • 効能の向上した化学保護剤– 薬剤候補として望まれるのはマラリア感染を予防し、現在の抗マラリア化学保護剤よりも用量が少なくて済むもの(発症ごとに1回、もしくは1ヵ月に1回等)です。

    連携がスタートしてまだ日は浅いものの、GIFT Fundと開発パートナーは、どのようにしたら世界中に新しい抗マラリア薬を簡便かつ安価に届けられるのか、すでに検討をはじめています。その内容として以下の点が挙げられます。
  • コスト – マラリアの流行地はほとんどの場合最貧地域であるため、マラリアによる健康や経済への影響を払拭するためには安価な抗マラリア薬が必要不可欠
  • 薬剤の形状および投与法 – 患者が確実に摂取し続けて簡単に入手できるよう、経口用の錠剤が理想的
  • 梱包 – 効果を得るため他剤との併用が必要な場合はそれらを1つの錠剤にまとめるか、それが難しければ1つの梱包にまとめることが理想である。また梱包には模倣品対策を施し、患者が正規品と確認できるようにしなければならない
  • 試験 – 新しい抗マラリア薬が既存の介入策よりも安全で効果的であることを確実にするため、じゅうぶんな臨床試験を行わなければならない

ヒット化合物からリード化合物へ

薬剤の開発過程に必ず必要とされるのは、コンピューターモデリングと臨床試験を併用して特に有望な化合物を探すスクリーニングです。その過程はいくつかの段階から成り、初めは「ヒット」と呼ばれる薬剤候補となりそうな一連の化合物を特定するためスクリーニングを行います。これらヒットをさらに詳しく評価し、ヒト対象の試験に適した最も有望な「リード」を探します。さらにその中で最も安全かつ有効なものが、薬剤となるのに適した化合物とされます。この過程では何千もの化合物がスクリーニングされることも珍しくありませんが、「ヒット」となるのは10種程度、「リード」はごくわずかで、最後に1つの薬剤へと絞られていきます。

伝搬阻止ワクチン開発のパートナーシップ


マラリア感染や伝搬を阻止するワクチンこそが、世界的にマラリアを根絶するものだと期待されています。これは、有効性が高いうえに使用者の行動に左右されることなく、投与が比較的簡単であるからです。例えば、一生涯を通して予防するのに必要な用量は2回のみという場合が多いのです。マラリア対策は、薬、蚊帳および殺虫剤処理によって大きく進歩し、2000年から2012年までの間に330万人の命を救ったと見積もられています。しかしながら、マラリアの広がりを考えると、今以上の対策が必要です。マラリア感染および伝搬サイクルを阻害するワクチンなどの介入策は効果が高く、使用者の行動に左右されない相対的に単純な治療法であり、地球規模でのマラリア根絶に最も有望な手段です。この目的を達成するため、GHIT Fundは、マラリアの原因となる寄生虫の拡散防止をねらいとする「伝搬阻止」ワクチンの開発を目指し、日本の愛媛大学と米国のPATHマラリアワクチンイニシアチブ(PATH MVI)とのパートナーシップに対して投資を行っています。
_image_ Photo Credit: PATH MVI PATH MVIと愛媛大学は、2013年から、伝搬を阻止するマラリアワクチンを共同開発しています。両パートナーとも、ワクチン開発に関して独自の専門技術を持っています。愛媛大学は、ワクチン成分の生産に使用できる独自の製造プラットフォームを所有しています。一方、PATH MVIは、開発プロセスを通じて、マラリアワクチン候補を同定し、製造を加速します。

ワクチンは、マラリアの原因となる寄生虫のうち最も致死率が高く、最も蔓延しているPlasmodium falciparum(熱帯マラリア原虫)の伝搬を阻止することを狙いとしています。ヒトに安全で有効であることが証明されれば、既存の介入策および他のワクチンと併用して、地球全体におけるマラリアの影響を低減することができます。

伝搬阻止ワクチンは、特にダラヴィなどの人口密度が高い地域のマラリア管理法として、非常に多くのメリットがあります。蚊は地域で生育し、マラリアが寄生した1匹の蚊は、何百人ものヒトを感染させる可能性があります。例えばラジは、家族や近隣の住民30人に、寄生虫を伝播させたと考えられます 。ダラヴィの住人のうち70%~80%が伝搬阻止ワクチンの接種を受け、既存の介入策を継続的に使用していれば、病気の伝搬数を30人からほぼゼロに減らすことができるのです14。伝搬率がこのレベルに落ちれば、コミュニティからマラリアを根絶することが可能です。また流行地域において人々がワクチンを受けることにより、感染した旅行者による病気の伝搬も確実に阻止され、根絶国でマラリアが再出現するリスクを減らすことができます。ワクチンは、人口密度が低く伝搬率が低い孤立地域のコミュニティを対象として、伝搬率が上昇する雨期などの前に使用することもできます。

現在ワクチン開発はまだ初期段階ですが、GHIT Fundと開発パートナーは、どうすれば世界で最も脆弱な地域の人々がこの画期的ワクチンにアクセスすることが可能になるか、すでに検討をはじめています。考慮すべきいくつかの点として、以下を挙げることができます。

伝搬阻止ワクチンとは?

ポリオや麻疹などに用いられる「伝統的」ワクチンは、「感染を防ぐ」ように設計されています。このようなワクチンは、体の免疫系を刺激して、将来感染源に出会ったときに、それを認識して無効化させるための抗体を作らせます。マラリア用の伝統的ワクチンであれば、マラリア原虫に曝露した際に病気の発症を防ぐことになります。 一方、「伝搬阻止」ワクチンは別の方法で作用します。このワクチンは、感染源の「伝搬を断つ」のです。マラリア用の伝搬阻止ワクチンは、ヒトがマラリアを発症するのを防ぐ作用はありません。発症を防ぐのではなく、感染したヒトから他の人へ寄生虫が伝達されるのを防ぐのです。蚊がワクチンを受けたヒトを刺すと、蚊に抗体が取り込まれ、蚊の体内の寄生虫の増殖サイクルが阻害されるのです。これによって、寄生虫が他の人に伝達されることを防ぎます。 効果的なマラリア根絶キャンペーンでは、両方のタイプのワクチンを利用することになるでしょう。伝搬阻止ワクチンは、マラリアのように寄生虫が複雑なライフサイクルをもち、感染予防ワクチンの開発が困難な複雑な病気にも利用できます。
  • コスト – マラリアの流行している地域は、ほとんどの場合、最貧地域であるため、マラリア根絶という目標達成のためには、経済的に負担可能なワクチンが必要です。
  • 投薬 – 理想的には、接種を必要とする地域における既存のワクチン接種スケジュールに追加して行われ、1回か2回の接種で、生涯免疫を獲得できることが望まれます。
  • 安定性 – ワクチンは、病気の流行している地域の極度の高温多湿環境に耐えられるだけの安定性が必要です。そうでなければ、確実に製品を保全し、患者に届けるための、費用効率のよい輸送手段や保存方法を考案しなければなりません。
  • 相互治療作用 – 上記のように、伝搬阻止用のワクチンは感染そのものを防ぐというわけではありません。現状では、感染している患者は抗マラリア薬による治療を続けなければいけません。マラリア予防ワクチン(開発されれば)との併用は、マラリア排除にむけてより包括的なアプローチとなる でしょう。したがって、伝搬阻止ワクチンが他の薬剤やワクチンと併用した場合でも安全で有効であることを確かめる試験を行う必要があります。先に記載したように、伝搬阻止ワクチンは、感染を防ぐものではありません。感染した患者は、治療のために、抗マラリア薬の投与を受ける必要があります。現存する介入策と予防型ワクチン(開発された場合)を同時に使用すれば、より包括的なマラリア根絶アプローチになります。伝搬阻止ワクチンを他の治療法と併用した場合の安全性について、確認試験が必要になるでしょう。


安全で効果的な薬剤やワクチンによってマラリアを撲滅できれば、世界の人々の健康や経済に大きく貢献することができます。安全で効果的なワクチンを用いてマラリアを根絶することは、世界全体の健康と経済を目に見える形で向上させます。例えば、上記の疾病によるインパクトに関する統計によると、ワクチンがマラリアのインパクトをたった25%減少させるだけで、感染数が5,000万人減り、146,000人が死を免れ、労働生産性が30億ドル上昇すると見積もることができます。病気の流行している地域に住む人々の、学校欠席日数の減少、栄養状態や子どもの認知能力発達の改善、子どもの死亡の減少、社会参加促進と生産性向上などの副次的メリットもあります。
イノベーションを推進するこのような連携関係によって、非常に厄介でありながらこれまで予防法や治療法がなかった数々の病気を根絶する新たな介入策が開発される可能性が大いに期待できます。