プレスリリース

September 30, 2014

マラリアの新しい治療薬開発に600万円の新規助成を決定 -薬剤耐性マラリア対策の新規化合物開発に助成-

本日、グローバルヘルス技術振興基金(以下、GHIT Fund)は、現在増加している薬剤耐性マラリアに対する新規治療薬開発に向け新たに600万円の助成を行うことを決定いたしました。

 

本助成は、北海道大学と北里研究所、そしてスイスに拠点を置くMedicines for Malaria Venture(MMV)とのパートナーシップに対して行なわれるもので、GHIT Fundが実施するHit-to-Lead Platform(HTLP: 2014年3月公募)への初めての投資となります。

 

現在マラリア治療の最先端では、植物から抽出されるアルテミシニンの誘導体が第一選択薬として用いられています。このパートナーシップでは、アルテミシニンにそっくりな構造を持つ薬剤を設計し、これを全て化学的に合成するアプローチで新しい抗マラリア薬を創薬します。具体的には、複雑な構造の薬剤を安価に安定供給するシンプルな合成プロセスを開発し、アルテミシニンの薬効を合理的に改善するとともに、近年深刻化している薬剤耐性マラリアに有効な治療薬の開発に取り組みます。さらに、マラリア原虫の伝搬や再感染を防ぐ化合物の創薬を目指します。

 

「マラリアの薬剤耐性という深刻な脅威に直面している中、安全かつ有効な新薬はマラリアの治療と撲滅にとって極めて重要です。」と、スリングスビーBT(GHIT Fund CEO)は述べています。「今回の研究開発プロジェクトは、次世代のマラリア治療薬の創薬となり、毎年約2億人が感染するマラリア撲滅への重要な投資です。」

 

 

早期の探索研究を支援するHit-to-Lead Platformについて

Hit-to-Lead Platform (HTLP)は、膨大な数の化合物ライブラリーの中からスクリーニングによって同定されたヒット化合物を、リード化合物へと導くためのプログラムであり、今回が第1回目の助成となります。マラリア、結核、顧みられない熱帯病の製品開発を行うProduct Development Partnershipsと連携することによって、日本の企業、学術機関、研究機関等が保有するヒット化合物の中からリード化合物を導きだすことを目的としています。HTLPプログラムはGHIT Fundが実施している候補化合物探索プログラム「Screening Platform」と、リード最適化〜非臨床・臨床試験〜申請登録の段階を助成対象とするプログラム「Grants」を繋ぐ、橋渡し的な役割を果たしています。

 

切に必要とされる、新しいマラリア治療薬

マラリアは1年間に2億人以上が罹患し、特にサハラ以南のアフリカで60万人が亡くなっており、その大部分は子供たちです。
アルテミシニン・ベースの合剤は、最も致死的なマラリアのための世界保健機関が推奨する治療薬です。しかし、主成分であるアルテミシニンはヨモギ植物に由来しており、その仕入量と価格は大きく変動することがあります。これに加えて、マラリア原虫はアルテミシニンに対する耐性を示しており、マラリアの発生と死者数を減らす世界的な対策の脅威となっています。研究者たちはこの化合物がアルテミシニン耐性地域でマラリアを抑制するための新しい治療薬になると考え、西カンボジアからの薬剤耐性株に対して治療薬の開発を進めています。

 

進行中の当該プロジェクトでは、すでにアルテスナート(アルテミシニン誘導体)に相当する、抗マラリア活性を示すいくつかの有望な化合物を生み出すことに成功しています。

 

本助成は、新たな半合成のアルテミシニン合剤がアフリカのマラリア蔓延地域に供給され始めた時点で行われます 。「より安全かつ有効なマラリア治療薬を低コストで安定供給させうるこの合成技術は、先駆的かつエキサイティングな取り組みであり、GHIT Fund がその進展に貢献できることを喜ばしく思います。」とスリングスビーは述べています。




GHIT Fundについて

公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)は、開発途上国に蔓延するHIV/AIDS、結核やマラリア、顧みられない熱帯病(NTDs)のための医薬品、ワクチン、診断薬の研究開発および製品化の支援を行う国際的な非営利組織です。日本国政府、日系製薬企業、ビル&メリンダ・ゲイツ財団により、共同設立されたグローバルヘルス分野の製品開発に特化した日本初の官民パートナーシップです。日本と海外の研究機関の連携促進や助成金交付を通じて新薬開発を促進し世界の最貧困層の健康改善、開発途上国の経済発展に貢献します。

GHIT Fundについての詳細は、https://www.ghitfund.org/jpをご参照ください。