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受領年2025
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投資金額¥99,670,808病気Malaria対象Diagnostic開発段階Concept Developmentパートナー長崎大学熱帯医学研究所(熱研) , マレーシアサバ大学 , 愛媛大学
イントロダクション/背景
イントロダクション
マラリアは毎年60万人以上の命を奪い、その多くが子どもです。妊婦にも深刻な影響を及ぼし、貧血や流産、低出生体重を引き起こします。低出生体重はその後の死亡リスクや発達の遅れにつながるため、大きな問題です。マラリアを正しく治療するには、まず他の病気と区別し、さらに感染している原虫の種類を特定する診断が必要です。特に熱帯熱マラリア原虫(Pf)だけでなく、他のヒト間で伝播するマラリア原虫や、近年東南アジアで重要視されるサルから伝播する二日熱マラリア原虫(Pk)を見分けることが求められます。しかし現在、Pkと三日熱マラリア原虫(Pv)、さらに近縁の種を正確に区別できる診断法は十分に整っていません。こうした原虫の種類を簡単に、しかも高感度で検出できるラテラルフローアッセイ(LFA)による迅速診断法を開発することは、早期診断と適切な治療に直結し、マラリア対策に大きな前進をもたらします。
プロジェクトの目的
現在使われているLFAによるマラリア迅速検査は抗体に依存していますが、感度が十分でないことや種類を正確に見分けにくいことが課題です。本研究では、抗体の代わりに新しい人工タンパク質を利用した検査用試薬を開発し、主要な病原体であるPfだけでなく、その他のマラリア原虫や新興のPkも高感度に検出できる診断法を目指します。開発する試薬は既存の検査キットにそのまま組み込めるため、COVID-19の簡易検査のように世界規模で普及させることが可能です。さらに臨床検体を用いた検証を行い、世界保健機関(WHO)が重要とする「高感度」「安定性」「低コスト」「変異に強い」という条件を満たす技術を実現します。これによりマラリア対策に大きな進展をもたらすだけでなく、将来の新興感染症にも対応可能な診断プラットフォームを築くことを目指しています。
プロジェクト・デザイン
本研究では、これまでマラリア用LFAに使われてきた抗体の代わりに、コンピュータで設計した「モノボディ」と呼ばれる新しい分子を利用します。抗体は結合力に限界があり感度を上げにくいのですが、モノボディを複数組み合わせて二重に結合させることで、まるで両手でしっかりつかむように結合を強め、従来よりもはるかに強固な結合を実現できます。さらに、コンピュータ設計により抗原の異なる部位を狙えるため、この工夫が可能になります。このプロジェクトチームはこうして作った二重モノボディの結合力や他の分子への影響を調べ、検査に必要な性質を確認します。最終的にこれらを試作検査キットに組み込み、その性能を確かめることで、より高感度で信頼性の高いマラリア診断につなげます。
本プロジェクトによって、グローバルヘルスの課題はどのように解決されますか?
本研究は、WHOや研究者が指摘するマラリア診断の重要課題に挑みます。まず、遺伝子欠失により従来検査では見逃されるPfを高感度で検出する新しい検査法を開発します。さらに、現在の迅速診断検査では顕微鏡検査に比べ感度が劣るため、顕微鏡と同等のレベルで原虫を検出できる技術を目指します。加えて、Pvを含む非Pf系マラリア原虫とPkを正確に診断できる初のLFAを基盤とする迅速診断検査を開発します。既存の迅速診断検査は感度不足や種の識別困難といった問題を抱えていますが、本研究は新規人工タンパク質設計を活用し、それらを克服します。これにより、アフリカやアジアでのマラリア診断・治療に大きな進展をもたらし、新興マラリア対策にも貢献することが期待されます。
本プロジェクトが革新的である点は何ですか?
このプロジェクトチームはコンピュータを使ったタンパク質設計により、新しい診断用分子を作り出す技術を開発しました。この方法では、特定の標的に結合する分子を機械学習で設計でき、抗体の代わりに「モノボディ」と呼ばれる小型で丈夫な分子を利用します。モノボディは熱に強く、製造コストも安いため、電力や設備が限られる地域でも使えるマラリア診断に特に適しています。ゼロから分子を設計できるため、抗体を超える強い結合力を持つ分子を作れるのも大きな特徴です。本研究ではこの設計技術を応用し、従来の抗体に代わる結合分子を開発してマラリアの迅速診断に役立てます。このプロジェクトチームは、Pkの研究やタンパク質発現、マラリア原虫の解析に関する専門知識も有しており、それらを活かして研究を進めます。
各パートナーの役割と責任
本研究では、愛媛大学がマラリア特異的抗原に強く結合するよう設計された新しいタンパク質(モノボディ)の開発を主導します。対象はPfやPvなどのLDH、さらにPk特異的抗原です。これらの抗原は、独自に改良された小麦胚芽を使った無細胞タンパク質発現系で作製され、ELISAや簡易検査の試作を通じてモノボディの有効性が検証されます。長崎大学は、培養サンプルや患者検体を質量分析で解析し、検査に使えるPk抗原を同定、さらに診断用試薬の評価や試作検査の実証に協力します。マレーシア・サバ大学は、現地で収集される患者検体を使い、試作検査の応用や現場での試験を担当します。大学間の国際連携により、新しいマラリア診断法の実現を目指します。
Investment
プロジェクト
ゼロから設計する人工タンパク質を使った高感度で信頼性の高いマラリア迅速検査開発




