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受領年2025
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投資金額¥64,693,198病気Malaria対象Diagnostic開発段階Concept Developmentパートナー愛媛大学 , マレーシアサバ大学
イントロダクション/背景
イントロダクション
人獣共通感染性マラリアの病原体の一つであるサルマラリア原虫、Plasmodium knowlesi (P. knowlesi) はマレーシアにおけるマラリアの主な原因であり、東南アジア全体、特にインドネシアとタイで症例数が急増しています。P. knowlesiはマカク属サルからハマダラ蚊(Anopheles Leucosphyrus種群)によってヒトへ媒介されています。森林伐採と土地利用の変化により、森林周辺部やヒト居住地において媒介蚊の個体数が増加し、それによりヒトの症例数が増えています。また、マカク属サルの自然生息地が破壊されることで、サルとヒトの接触機会が増え、サルマラリア感染のリスクが増加しています。
人獣共通感染性マラリアの増加は、マラリアの根絶達成に重大な影響を及ぼします。最近の世界保健機構(WHO)の指針によると、すべてのヒトマラリアが根絶され、人獣共通感染性マラリアの症例がほとんど見られない場合にのみ、根絶宣言が与えられるとされています。したがって、サルマラリア患者の診断や種特異的なマラリア対策を行なうために、P. knowlesi特異的な診断ツールの開発が急務となっています。プロジェクトの目的
現在、P. knowlesiに特異的な迅速診断検査は存在しません。pLDHバイオマーカーに基づく迅速診断検査は三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)とP. knowlesiの間で高い交差反応性を示すため、両者を区別することができません。現在の診断方法は時間がかかり、患者が治療を受けるまでのアクセスが遅れる原因となっています。シンプルで使用しやすい迅速診断検査の開発が必要です。
これまでP. knowlesiに特異的な診断マーカーについてほとんど注目されてきていませんでした。セリンリピート抗原(SERA)の多重遺伝子族は、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)や齧歯類のマラリア原虫で広く研究されており、寄生虫のライフサイクルを通して重要な役割を果たしています。P. knowlesi Serine Repeat Antigen 3 antigen 2(PkSERA3 ag 2)は、P. knowlesi特異的なマーカーとして同定されており、実験室や集団レベルでの評価において、系統的に近縁なP. vivaxとの交差反応性がないことが確認されています。
私たちはこの抗原に着目して、P. knowlesi特異的な迅速診断検査用試薬を開発します。プロジェクト・デザイン
全体目標: 急性サルマラリア感染症の診断のための迅速診断検査の開発に向けて、新規バイオマーカーと関連するモノクローナル抗体を検証します。
目標1: PkSERA3 ag 2タンパク質とその2つのバリアントに対するモノクローナル抗体(mAbs)を作製します。
目標2: 流行地域における急性サルマラリア感染時の種特異的なマーカーとしてPkSERA3 ag 2およびそのバリアントの有効性を分析し臨床検証します。
目標3: 作製したモノクローナル抗体をELISA法で検証し、選抜したモノクローナル抗体をテストストリップに印刷します。これらを診断検査開発受託機関(CRO)に提供し、ラテラルフローアッセイへの導入が技術的に可能か検証します。
目標4: ステークホルダーと協議を行い、どのような検査方法が適しているのか、その情報を製品設計に反映させ、ビジネスとして成立させるための検証を行います。
目標に対する結果: 迅速診断検査のためのP. knowlesi特異的モノクローナル抗体が検証されます。
本プロジェクトによって、グローバルヘルスの課題はどのように解決されますか?
短期的効果:
(i) P. knowlesi特異的な迅速診断検査の開発推進
(ii) P. knowlesiバイオマーカーの特性評価
(iii) 診断の課題の明確化、PPC開発、具体的な使用事例と市場規模推計により第三者投資を促進。長期的効果:
(i) 患者の診断と治療結果の改善を支援するツールの提供
(ii) 流行地域における感染リスクの地理的分布の理解
(iii) 国家レベルの根絶戦略に役立つ情報の提供本プロジェクトが革新的である点は何ですか?
このプロジェクトは、人獣共通感染性マラリアの問題に対応するため、新規で革新的な診断法の開発と生産を推進します。プロジェクト活動は、P. knowlesiに関する新たな知見を提供し、診断法の開発に向けた試薬の開発と検証という主要な成果に加え、研究とイノベーションを広く支援することが期待されています。
各パートナーの役割と責任
愛媛大学は、新規バイオマーカーおよび関連するモノクローナル抗体を最適化してスケールアップし、その後、診断法開発に繋がる検証を行います。愛媛大学のチームは、研究室内で保有しているP. knowlesiおよびP. falciparumを使用して、作製したモノクローナル抗体の特異性を評価します。また、マレーシアサバ大学(UMS)と協力して、目標3および目標4を推進します。
マレーシアサバ大学(UMS)は、臨床サンプルを収集します。UMSは、ELISA法による組換えタンパク質とモノクローナル抗体に対する臨床サンプルの反応性の検証、臨床サンプルで作製されたスライドの間接蛍光抗体法(IFA)によるモノクローナル抗体の反応性を検証します。また、UMSは迅速診断検査開発に貢献し、目標4でのステークホルダーとの協議を推進します。
両者は、運営委員会のメンバーとして、マイルストーンとステージゲートの評価にも貢献します。
Investment
プロジェクト
ZOO-RDT:東南アジアにおける人獣共通感染性マラリアの診断のための新規バイオマーカーおよび迅速診断検査用試薬の検証