Investment

プロジェクト

フラビウイルス感染症治療薬創出に向けた新規抗ウイルス活性化合物の探索
完了プロジェクト
最終報告書
  • Project ID
    S2024-123
  • 受領年
    2024
  • 投資金額
    ¥12,653,193
  • 病気
    NTD(Others)
  • 対象
    Drug
  • 開発段階
    Target Identification
  • パートナー
    エーザイ株式会社 ,  Drugs for Neglected Diseases initiative

イントロダクション/背景

1.イントロダクション:

デング熱やジカ熱は、サハラ砂漠以南のアフリカ、南米、東南アジアで猛威を振るっているフラビウイルス感染症です。これらの疾患はマラリアと同様に蚊によって媒介され、気温上昇や降雨パターンの変化を含む気候変動により、将来的に世界で約39億人が感染リスクにさらされると予測されています。デング熱はすでに公衆衛生上無視できない規模で感染が拡大しており、ジカ熱やウエストナイル熱などの他の感染症についても、パンデミックのリスクが高まりつつあります。このような状況は、持続的な人類の健康福祉を脅かしています。現時点では、これらのフラビウイルス感染症に対する有効な薬剤は存在しません。そのため、重症化の抑制や感染拡大をコントロールするための医療ツールの充実が強く求められています。私たちはこの医療ニーズに応えるため、エーザイが保有する化合物ライブラリーを用いてフラビウイルス感染症治療薬創出に向けた薬剤開発を行います。

 

2.プロジェクトの目的

フラビウイルス感染症の原因となるデングウイルスやジカウイルスなどに対して抗ウイルス活性を示す新規化合物を探索し、新薬開発の起点となる創薬シードの同定を目指します。

 

3.プロジェクト・デザイン

デングウイルスおよびジカウイルスに対して抗ウイルス活性を示す化合物を探索するために、画像ベースの表現型アッセイシステムを用いて、活性が期待できる化学構造にフォーカスしたライブラリーおよび化学構造の多様性を重視したライブラリーの2種類の化合物ライブラリーをスクリーニングします。表現型アッセイシステムは、ウイルス由来タンパク質と宿主細胞の核をそれぞれ染色し、蛍光共焦点画像を解析することで化合物の抗ウイルス活性を測定します。フォーカスドライブラリーは、エーザイがこれまで蓄積してきたアッセイデータにより開発した機械学習モデルによって選択された化合物群で構成されています。ここに多様性ライブラリーを相補的に活用することで、効率的に抗ウイルス活性を示す化合物の探索を進めます。最終的に、構造活性相関、物理化学的特性およびその他の生物学的情報に基づいて、有望な創薬シードを同定します。

本プロジェクトによって、グローバルヘルスの課題はどのように解決されますか?

フラビウイルス属にはデング熱やジカ熱など、公衆衛生上の重要な感染症を引き起こす病原体が多く含まれます。これらのウイルスはヒトだけでなく、他の哺乳動物にも感染するため、根絶が非常に困難です。さらに、これらの感染症は主に蚊によって媒介されるため、地球温暖化の影響で発展途上国のみならず先進国にも蔓延する可能性が高まっています。SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)のパンデミックによる社会の混乱は記憶に新しく、これを繰り返さないために治療薬をはじめとした医療ツールの整備がグローバルヘルスにおける喫緊の課題となっています。私たちは、本プロジェクトを通じて新たな医療ツールの一つとしてフラビウイルス感染症治療薬を世界に提供することで、持続可能な人類の健康福祉に貢献することを目指しています。

本プロジェクトが革新的である点は何ですか?

私たちの取り組みにおける革新的な点は、スクリーニングに用いる表現型アッセイシステムおよび化合物ライブラリーの堅牢性と独自性にあります。表現型アッセイシステムでは、画像解析により感染細胞と総細胞の比率を定量化することで、化合物の抗ウイルス活性を再現性高く、かつハイスループットで測定することが可能です。また、化合物ライブラリーは機械学習モデルによってウイルスの複製を阻害する化合物が濃縮されているほか、化学的特性や物性値などについてフィルターを設け、活性化合物の探索に適した化合物を取り揃えています。さらに、活性化合物の構造活性相関情報を迅速に取得できることも私たちの強みの一つです。これらを効果的に組み合わせることで、有望な創薬シードの同定に繋がると考えています。

各パートナーの役割と責任

本プロジェクトにおいて、エーザイは代表機関として研究全体をリードし、化合物ライブラリーの提供と活性化合物の再供給、これらの構造活性相関や物理化学的情報の取得を担当します。またDNDiはスクリーニング実施機関である韓国パスツール研究所と綿密に連携しながら、スクリーニングの進捗管理を担当します。スクリーニングで得られた各種データの解析、活性化合物の選抜、優先順位の決定については双方が責任を持ちます。

最終報告書

1. プロジェクトの目的

デングウイルスやジカウイルスなどのフラビウイルスを標的として、化合物ライブラリーのスクリーニングを実施し、将来的な創薬開発の起点となるヒット化合物を同定することを目的としました。

 

2. プロジェクト・デザイン

デングおよびジカウイルスに対する抗ウイルス活性化合物を同定するため、イメージングアッセイを用いてフォーカスドライブラリーと多様性ライブラリーをスクリーニングしました。ヒット化合物の活性を評価し、構造活性相関や物性・代謝安定性・安全性情報を基に、有望な創薬シード候補を同定しました。

 

3. プロジェクトの結果及び考察

化合物スクリーニングを含む創薬シード同定のための各種評価は、エーザイと DNDi が協働で実施しました。最初の段階では、約2万化合物を対象にイメージングアッセイによる評価を行い、感染細胞の画像解析を通じて、ウイルスの増殖を抑える複数のヒット化合物を見出しました。また、この2万化合物の中には、ウイルスの特定のタンパク質を狙って計算科学により選抜された約5,000化合物も含まれており、これらについては別途そのウイルスタンパクの阻害活性を確認しました。またヒット化合物が細胞に対して強い毒性を示さないか、あるいは非特異的な作用による見かけ上の効果ではないかを判断する追加試験を行いました。品質確認を含めた後続の測定では、溶解性、代謝安定性、安全性といった創薬における基本特性の評価も進めました。多面的な検証を経て、最終的に複数の化合物群を特定することができました。本化合物群は、ウイルスの増殖を抑える作用を示すだけでなく、細胞への影響や安全性の面でも一定の基準を満たしており、将来的にフラビウイルス感染症の治療薬の出発点となる創薬シードへ発展する可能性を秘めています。現在は、有望な本化合物群についてさらに詳細な検証や比較検討を進めており、次の研究段階へ進めるべき化合物群の見極めを慎重に行っています。今回特定された化合物群には、これまでの開発パイプラインにはない新しい骨格を持つものも含まれており、新規の作用メカニズムにつながる可能性も期待されます。多様な化学構造を有する候補を複数得られたことは、創薬の選択肢を広げるだけでなく、将来の耐性ウイルスの出現や新たな感染症拡大といったリスクに備えるうえでも大きな意義を持つと考えられます。本プロジェクトで得られた知見は、デング熱やジカ熱の治療法の開発を前進させる重要な基盤となるものです。