Investment

プロジェクト

マラリア予防を目的とした、マラリア電子伝達系を標的とする持続性注射剤の最適化研究、および前臨床開発候補品の選抜
  • 受領年
    2023
  • 投資金額
    ¥332,074,377
  • 病気
    Malaria
  • 対象
    Drug
  • 開発段階
    Lead Optimization
  • パートナー
    長崎大学 ,  国立感染症研究所 ,  Medicines for Malaria Venture (MMV) ,  塩野義製薬株式会社

イントロダクション/背景

1.イントロダクション

マラリアは現在でも世界の公衆衛生上の脅威であり、5歳未満の幼い子供を中心に年間60万人以上が亡くなっています。マラリアは急性に増悪し命に関わる特徴があるため、医療アクセスが十分でない地域では予防が非常に重要です。現在、世界保健機関が推奨する予防プログラムが広がりを見せており、例えば季節性マラリアによる5歳以下の子供の予防プログラムでは、2022年に約4900万人の子供が恩恵を受けています*1。しかしながら現在用いられている薬剤は、有効性や安全性は一般に良好とされますが、耐性の出現や服薬順守の難しさ、さらに各家庭に毎月薬剤を届けるために多大なリソースを必要とする等、様々な問題があります。そうした中、患者が集中する流行期間の間、1回の注射で高い有効性を保つことができる持続性注射剤が実現すれば、こうした問題の解決に繋がると期待されます*2。

 

2.プロジェクトの目的

本プロジェクトは、マラリア予防に有用な長期持続性注射剤の創出を目指します。具体的には、これまでに長崎大学、塩野義製薬、国立感染症研究所、Medicines for Malaria Venture(MMV)の協働により見出された、マラリア電子伝達系を標的としたリード化合物の持続性注射剤に向けた最適化研究を実施し、MMVの定める前臨床開発候補品クライテリア*3を満たす開発候補品の創出を目指します。

 

3.プロジェクト・デザイン

本プロジェクトは2年間のうちに前臨床開発候補品を見出すことを目指します。まず現在見出されつつある有望な化合物について、先行して安全性や薬物動態に関する評価を進め、開発候補品となる可能性を検証します。上記と並行して最適化研究を実施し、先行化合物よりもさらに有望な化合物の創出を目指します。2つ目の有望化合物についても安全性や薬物動態に関する評価を行い、MMVの定めるクライテリアを満たす前臨床開発候補品の選抜を行います。

本プロジェクトによって、グローバルヘルスの課題はどのように解決されますか?

マラリアは公衆衛生上の脅威であり、幼い子供を中心に命を奪い、また保健衛生や経済発展の重荷となっています。世界保健機関はその排除、撲滅を目指していますが、近年患者数は高止まりしており、より有効な介入手段が求められています*4。我々は、1回の注射によって患者が集中する流行期間を通じて予防可能な、マラリアの複数の生活環に有効かつ耐性化リスクが低い持続性注射剤を目指しています。このように有効性と利便性に優れた持続性注射剤は、既存の経口剤による予防プログラムの課題を解決しうるものです。また現在効果的な予防プログラムが行われていない、通年性にマラリアが伝播している地域、毎月薬剤を届ける事が難しい遠方地域等での活用も期待されます。こうした薬剤をお届けすることで、最もリスクの高い人々のマラリアからの解放、さらにはマラリア排除、撲滅に貢献したいと考えています。

本プロジェクトが革新的である点は何ですか?

マラリア予防に向けた持続性注射剤の創出を目指していることです。持続性注射剤は、筋肉または皮下への投与により、有効成分がゆっくりと吸収されることで、長期間有効性が発揮されます。現在の予防プログラムは毎月薬剤を各家庭に届ける必要があり、また服薬を完遂し続けることは容易でありません。そのような中、1回の注射で流行期を通じた予防が完結する持続性注射剤は、マラリア予防プログラムを革新しうるものです。

各パートナーの役割と責任

塩野義製薬は低分子創薬の経験を活かし、化合物デザインと化学合成、持続性注射剤を含む薬物動態と安全性評価を実施し、構造活性相関研究をリードします。長崎大学、および国立感染症研究所は、化合物の薬理作用の特徴付けに向けた評価を実施します。MMVは豊富な抗マラリア創薬研究経験に基づくプロジェクトのサポート、および目標達成に必要な薬理評価を提供します。

他(参考文献、引用文献など)

1, World Malaria Report 2023, WHO

https://www.who.int/teams/global-malaria-programme/reports/world-malaria-report-2023

2, Macintyre et al., Injectable anti-malarials revisited: discovery and development of new agents to protect against malaria, Malaria Journal, 2018, 17, 402.

https://malariajournal.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12936-018-2549-1

3, Preclinical candidate criteria 2021, MMV

https://www.mmv.org/frontrunner-templates

4, Global technical strategy for malaria 2016-2030, 2021 update, WHO

https://www.who.int/publications/i/item/9789240031357