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受領年2021
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投資金額¥131,743,584病気Malaria対象Drug開発段階Lead Identificationパートナーアステラス製薬株式会社 , Medicines for Malaria Venture (MMV) , TCG Lifesciences Private Limited. (TCGLS)
イントロダクション/背景
1. イントロダクション
マラリアはPlasmodium属の原虫により引き起こされる疾患で、全世界で年間2億人以上が罹患し、40万人以上の命が失われています。治療薬としては、アルテミシニン誘導体とその他の抗マラリア薬を併用するArtemisinin-based combination therapy(ACT)が世界標準となっています。近年はアルテミシニンの耐性及びパートナー医薬品の耐性を含む多剤耐性が問題となっており、MMVとパートナーであるアステラス製薬は、薬剤耐性に対処する新しい作用機序を有する薬を見出し、開発、提供することを目指し研究を進めています。急性期治療に加えて、感染を予防し、化学的保護/予防に使用できる化合物の開発は、マラリア根絶の課題を推進するために特に重要と考えます。スクリーニングプロジェクトでは、アステラス製薬の化合物ライブラリーを用いて抗マラリア活性を持つ化合物を特定しました。ヒット化合物の初期プロファイリングにより、ヒット化合物についてHit-to-Leadプロジェクトに向けて新規性があり魅力的な特徴を持ち、新しい抗マラリア薬を創出する可能性があると考えました。
2. プロジェクトの目的
MMVとアステラス製薬は、化合物探索プロジェクトで約20,000化合物の探索を行い、異なる化学構造を有する4種の候補化合物シリーズを特定しました。本Hit-to-leadプロジェクトではそれら化合物の新しい類縁体を合成し、構造活性相関や薬物動態、安全性情報の解析・収集を行います。こうして得られた研究データについて、MMV Early Lead Criteriaをもとにマウスを用いた動物実験に進むべき候補化合物の創製を目指します。予定している研究を実施することにより、次の最適化研究につながるリード化合物を特定することを目指しています。
3. プロジェクト・デザイン
本Hit-to-leadプロジェクトは、MMVとアステラス製薬が共同で実施したマラリアに対する化合物探索プロジェクトの後継となるプロジェクトであり、2段階で構成されています。最初の6か月では化合物探索プロジェクトで特定された4種の候補化合物シリーズを用いて周辺誘導体の探索合成を実施しプロファイリングを行います。構造活性相関を明らかにし、化合物プロファイル(効力、DMPK、安全性など)を改善するように新規化合物合成を進めます。続いて有望な2つの化合物シリーズをHit-to-lead研究として選択し、残りの18か月では最適化研究(優れた結果が期待されるシリーズの優先順位付け)を行いMMV Early Lead Criteriaに合致する最適なリード化合物を特定することを目指しています。
本プロジェクトによって、グローバルヘルスの課題はどのように解決されますか?
MMV は、革新的な医薬品でマラリアに苦しむ患者さんを治療し、最終的にはこの重篤な疾患を根絶するために製薬会社、アカデミアおよびマラリア流行国と連携しており、1999 年の設立以来、パートナーシップを通じてマラリア治療薬に関する豊富な研究開発ポートフォリオを構築し目指す薬剤像(TCP)を構築するために取り組んできました。
主な特徴は次のとおりです。
・即効性があり、効果持続時間が長い治療、予防に適した新薬。
・すべての既知の耐性に対して有効であり、耐性が生じるリスクが低い新薬。
・子供および妊娠の可能性のある女性にも使用できる、安価で固定用量の併用薬として開発可能な新薬。
本プロジェクトのスクリーニング段階で特定されたヒット化合物の初期のプロファイリングでは、ヒット化合物がこれらの基準を満たす可能性があることを示しています。
本プロジェクトが革新的である点は何ですか?
探索中のすべての化合物シリーズは、ケモタイプ新規性、ライフサイクルフィンガープリント、およびMMVポートフォリオ戦略に基づいて優先順位が付けられています。MMV初期リード基準(1)を満たし、LO提案時点でMMVポートフォリオの既存のシリーズと区別される化合物シリーズのみリード最適化のために提案されます。本プロジェクトのすべてのシリーズは、既存の抗マラリア薬や臨床パイプラインの化合物とは異なる新規のドラッグライクな化学構造と作用機序を有している点が特徴です。
各パートナーの役割と責任
TCGLS は化合物合成及びin vivo系での抗マラリア活性評価、毒性並びに体内動態の測定を実施します。その他解析はMMVネットワークやCROよりデータを提供します。MMVは国際的なマラリア根絶の目標に従いプロジェクトの戦略、医薬品化学(データ解析や化合物デザイン)について貢献します。アステラス製薬は、新規類縁体化合物のデザイン支援や得られたデータの解釈について支援します。
最終報告書
1.プロジェクトの目的
約2万化合物の探索から見出したヒット化合物について類縁体を合成し,構造活性相関や薬物動態、安全性情報の解析・収集を行います。得られた研究データからGHIT/MMVの初期リード基準を満たす新しい抗マラリア薬の初期リード化合物を創出し,後期リードへの最適化につなげることを目的としています。
2.プロジェクト・デザイン
二段階で構成されており,まず4種のヒット化合物について探索合成と初期プロファイリング(SAR, DMPK, 安全性など)を行い,化合物シリーズの優先順位付けを行います。次に有望な2つの化合物シリーズについて最適化研究を行い,GHIT/MMVの初期リード基準を満たす化合物の創出を目指しています。
3.プロジェクトの結果及び考察
MMV1964583に代表されるシリーズ2の化合物は、クロロキンに匹敵する速効性の寄生虫殺傷率を持ち、AReBarアッセイでの薬剤耐性株に対する成長抑制は新しい作用機序や耐性の可能性を示唆しています。MMV2214556は耐性リスク評価アッセイで再発が見られず、耐性抵抗性特性を示しました (Log MIR ≥ 8.3)。
シリーズ2の化合物は低いDD2/3D7比を示し、クロロキン関連の耐性メカニズムが存在する可能性が低いことを示唆していますが,MMV1964583とMMV2214556はブラジルPf野生株への活性低下を示し、さらなる研究が必要です。
化合物は、分子量が350以下で高い溶解性(pH 7.4で100μM以上)、低い脂溶性(logD7.4 = 1-3)を示し、代謝研究でアミノ基が主な代謝部位であることが確認されため,2-アミノピリジン基をピペリジンやアゼチジンに置換し、代謝安定性と抗マラリア活性を向上しました。
MMV2324045は良好な透過性を示し、高い全身曝露と経口バイオアベイラビリティ(33%)を実現しました。MMV2480670も高い経口バイオアベイラビリティ(27%)を示しましたが、低い吸収と高いクリアランスが課題です。
図1.MMV1964583、MMV2324045、MMV2480670のカセットラットPK結果(IV=0.4mg/kg、PO=2mg/kg)。
MMV2324045とMMV2480670のヒト血漿MPCの予測値は、血漿曝露とよく一致しており、4x50 mg/kgの用量で治療レベルを達成する可能性があることを示しています。
安全性に関しては、MMV2324045およびMMV2480670は細胞毒性を示さず(HepG2 SI ≥ 100)、MMV2480670はhERG阻害活性(IC50 ~1μM (SI ~59))を示しましたが,小さな構造変換でhERG阻害活性を改善可能であることが分かっています。
今後、MMV2324045のSCID試験などの追加試験から良いデータが得られた場合、GHITにPDP資金提供を申請する計画です。
Investment
プロジェクト
抗マラリア活性を持つ新規化合物のHit-to-Lead研究