Investment

プロジェクト

多様性指向型合成 (DOS)由来の抗トリパノソーマ活性を有する低分子化合物ML341のシャーガス病の新薬開発(IND)に向けた最適化
Project Completed
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  • 受領年
    2013
  • 投資金額
    ¥50,000,000
  • 病気
    NTD (Chagas disease)
  • 対象
    Drug
  • 開発段階
    Lead Identification
  • パートナー
    エーザイ株式会社, ブロード研究所

イントロダクション/背景

最新の推計によると、シャーガス病を患っている方は世界で約800万人に上ります。シャーガス病の病原体である寄生虫「クルーズトリパノソーマ」は、この疾患の蔓延地域・中南米諸国でベクター(媒介動物)を通して接触感染を引き起こす。衛生的な生活施設の不足、ベクター昆虫の殺虫剤を噴霧することができない実態、人と感染した動物や家畜との接近した環境といった問題により、最貧層の人々に与える影響は甚大で、偏った実情がみられます。シャーガス病の治療剤として承認された薬物は現在、ベンズニダゾールとニフルチモックスの2つしかなく、どちらの薬も、この疾患の急性期の治療剤としての適用しか承認されておらず、強い副作用を持つ。現在、シャーガス病の慢性期の適用で承認された治療剤は未だありません。従って、シャーガス病の急性期・慢性期で苦しんでいる数多くの人々への治療を提供するための、安全でかつ有効な治療剤が強く求められている。この2年間を経て、我々の努力の結果として、「クルーズトリパノソーマ」に対する著しく良い有効性、選択性、そして毒性を示す新たな化合物群を同定した。本提案は、この同定した各候補化合物に関するデータをベースに、構造骨格を最適化して、シャーガス病の急性期・慢性期の治療を目指すIND申請の資料を当局に提出し試験実施の承認を取得することを目的としています。

本プロジェクトによって、グローバルヘルスの課題はどのように解決されますか?

ブロード研究所の「治療の科学センター(Center for the Science of Therapeutics)」では、ブロードに関わる生物学者や臨床医学者達との協力のもと、患者様における、小分子を利用した治療仮説の試験を目指す、治療剤の探求プロジェクトを行っています。当社はブロード研究所の化合物ライブラリーを活用し、細胞内型の「クルーズトリパノソーマ」に対するナノモル殺活性を持つ小分子ベースの抗感染剤を発見しました。

 

日本の東京都に本社を置くエーザイでは、政府機関、国際機関、および非営利民間組織との連携を通じて、世界での医薬品へのアクセスの改善を積極的に取り込むことを目指しています。エーザイは、2020 年までにNTDs(顧みられない熱帯病)10 疾患の制圧をめざす過去最大の国際官民パートナーシップ「ロンドン宣言」に参画しています。

 

同リード・シリーズを更に開発を進め、前臨床試験の候補化合物につなげることを目指すエーザイとブロード研究所との間の連携提案は、共通の使命や両社のベネフィットをもたらす機能などを持つ、理想形のコラボレーションと考えられます。

本プロジェクトが革新的である点は何ですか?

従来、シャーガス病創薬は、ニトロレダクターゼに対するニトロヘテロ芳香族、CYP51に対するアゾール、そしてクルザインに対するビニルスルホンを含めて、数少ないケモタイプ(化学型)に依存したものでした。本プロジェクトが検討するML341など各小分子は全て、構造的にユニークで、今まで探求された機能は含まないため、独特な生物学的作用を有すると期待されます。

最終報告書

1.プロジェクトの目的

ブロード研究所の保有する、構造的、立体化学的に異なるキラル分子の多様性指向型合成(DOS)化合物コレクションのハイスループットスクリーニングから、トリパノソーマ・クルージTulahuen(TcVI)株に対して阻害活性を有するML341を同定した。本プロジェクトの目的は、最適化研究を実施してこのユニークな化合物のターゲットメカニズムを決定することである。

 

2.プロジェクトのデザイン

本プログラムは次の3つの目的を持って進められた。1)最小ファーマコフォア同定のための創薬化学的な最適化、2)in vitro ADME(吸収・分布・代謝・排泄)およびin vivo薬物力学的な最適化、3)慢性トリパノソーマ・クルージ感染マウスモデルにおける最適化化合物のin vivo効果の証明。

 

3.プロジェクトの結果及び考察

ブロード研究所の保有する、構造的、立体化学的に異なるキラル分子の多様性指向型合成(DOS)化合物コレクションを用いた、シャーガス病の原因病原体であるトリパノソーマ・クルージの組み換えTulahuen株に対する表現型ハイスループットスクリーニングから、強力なトリパノソーマ・クルージ生育阻害剤としてML341を同定した( ACS Med. Chem. Lett, 2014, 5,149-153) 。

 

ML341の創薬化学研究は、トリパノソーマ・クルージの無鞭毛型に対する強力な阻害活性(EC50 = 1 nM)を維持し、生体内からの化合物の固有クリアランスを低下させ、好ましくないオフターゲット作用によるヒトのCYP3A(様々な薬剤の代謝に必須の役割を担うチトクロームP450スーパーファミリー遺伝子のひとつ)阻害活性を軽減することに注力して実施された。薬理活性に影響する立体化学的および構造上の要因を理解するために、ML341に存在する3つの立体不斉中心および8員環を体系的に修飾した。これらの取り組みの結果、最終的にたった一つの不斉中心しか持たない7員環誘導体BRD2813を得た。そのトリパノソーマ・クルージに対するEC50は32 nM、PBSに対する溶解度は>100 mM、ヒト肝臓マイクロソームにおける固有クリアランスは29 mL/min/kgであり、シャーガス病に対するリード化合物として望まれるターゲット・プロダクト・プロファイルに合致するものであった。BRD2813およびその周辺の活性のある誘導体は、大部分がCYP3A阻害活性を有していた。その後、Dundee大学のKevin Read教授との共同研究において、BRD2813は、トリパノソーマ・クルージのエルゴステロール生合成に関わるチトクロームP450酵素であるCYP51阻害剤であることが示された(EC50 = 110 nM)。これまでに、同様にトリパノソーマ・クルージのCYP51阻害剤であるポサコナゾールが、臨床試験においてシャーガス病の持続的な治癒に失敗していることから(N Engl J Med., 2014 370(20), 1899-908)、このシリーズのさらなる開発への取り組みの優先順位を下げた。