Investment

プロジェクト

リーシュマニアへの暴露ならびに免疫応答検出のためのリーシュマニン皮内テスト (LST)の生産・検証・使用
  • 受領年
    2019
  • 投資金額
    ¥225,769,996
  • 病気
    NTD (Leishmaniasis)
  • 対象
    Diagnostic
  • 開発段階
    Product Development
  • パートナー
    長崎大学熱帯医学研究所(熱研) ,  マギル大学 ,  Gennova Biopharmaceuticals Ltd. ,  アメリカ食品医薬品局 ,  オハイオ州立大学

イントロダクション/背景

イントロダクション

リーシュマニア症は典型的な細胞内寄生原虫であるリーシュマニアによって引き起こされ多彩な病態を示す。同症は感染した雌サシチョウバエの吸血によって媒介され、世界で3億5000万人が感染のリスク下にある。世界保健機関(WHO)はリーシュマニア症を顧みられない熱帯病(NTD)に分類する。リーシュマニン皮内テスト(LST)はリーシュマニアへの暴露と免疫応答を検出するために何十年も使用されてきたが、LST に使用するリーシュマニン抗原はもはや入手不可能である。LST の復活・再導入を目指すのには切実な理由がある。まずLSTはリーシュマニアが現在もしくは過去に活発に伝播していた地域や村の同定に機能し、内臓リーシュマニア症制圧プログラムの遂行に重要な役割を果たす。またLSTは現在開発が進む前途有望なリーシュマニアワクチンの効果の判定に有効に機能する代用マーカーとなりうる。

 

プロジェクトの目的

本プロジェクトの目的は、1.ドノバンリーシュマニア抗原(リーシュマニン抗原)を生産しその安定性を検証すること、2. 免疫した動物でのドノバンリーシュマニア由来のリーシュマニン抗原の機能を検証、3. 内臓リーシュマニア症から治癒した患者ならびに不顕性感染者でのリーシュマニン抗原の有効性を検証することにある。

 

プロジェクト・デザイン

ドノバンリーシュマニア原虫からリーシュマニン抗原を作るプロトコールを確立し、リーシュマニン皮内テスト(LST)のためにGMP レベルのリーシュマニン抗原を生産する。内臓および皮膚リーシュマニア症の前臨床動物モデルとしてハムスターとマウスを各々用いて、リーシュマニン抗原をテストし、LSTによる潜伏感染と免疫応答(遅延型過敏反応)の検出能を検証する。前臨床動物モデル動物では関連する免疫応答も解析する。動物を用いた前臨床試験が完了したら、浸淫地でリーシュマニア症を発症した患者ならびに不顕性感染者でLSTの有効性を評価する。

本プロジェクトによって、グローバルヘルスの課題はどのように解決されますか?

本プロジェクトは、皮膚・内臓リーシュマニア症ならびに免疫応答の効果的な検出目的に過去広く使用されてきたLSTの復活・再導入に繋がる。LSTの再導入には切実な理由がある。まずLSTは現在もしくは過去にリーシュマニアが活発に伝播していた地域や村の同定を可能とし、インド亜大陸における内臓リーシュマニア症制圧プログラムの遂行に不可欠な役割を果たす。またリーシュマニア伝播が極めて巣状集積を示す理由や地域の再流行リスクの推定を可能とする。さらにLSTは開発が進む前途有望なワクチンの効果の判定に有効に機能する代用マーカーとなりうる。このように、LSTは現在進行中の内臓リーシュマニア症制圧へ向けた取り組み、ならびに将来のワクチン開発研究をサポートするものとなる。

本プロジェクトが革新的である点は何ですか?

現在、リーシュマニアの潜伏感染や免疫応答を検出できる診断法はない。使用可能な血清診断やPCRは急性感染を同定できるものの過去の暴露や細胞性免疫の状態を効果的に検出・評価できない。リーシュマニン皮内テスト (LST) はリーシュマニアへの暴露と免疫応答を検出するために何十年も使用されてきたが、LST に使用するリーシュマニン抗原はもはや入手不可能である。LSTが使用できれば、リーシュマニアへ暴露された個人を同定できるにとどまらず、我々は共同体における効果的なサーベイランスを行うことができる。さらにLSTは開発が進む前途有望なワクチンの効果判定に有効に機能する代用マーカーとなりうる。

各パートナーの役割と責任

オハイオ州立大学(OSUは本プロジェクトの指名被交付機関でありプロジェクト全体の調整・統合に責任を有する。またOSUは新世界に蔓延する皮膚リーシュマニア症のモデル動物を用いてLSTの評価を行う。さらに、インドのビハール州で行う臨床試験を支援・監督し、ヒトにおけるLSTの有効性を評価する。

長崎大学・熱帯医学研究所(NUITMは安全性試験を担当する。また旧世界に蔓延する皮膚リーシュマニア症の前臨床モデルを用いてLSTの評価を行う。

Gennova Biopharmaceuticals Ltd は製品の開発計画を行い、動物モデルとヒトでの評価に十分なGLPレベル品質のリーシュマニン抗原を製造する。またインドのビハール州で臨床試験を実施し、必要に応じてインドにおける規制に関する申請から承認までの手続きを完遂する。

アメリカ食品医薬品局(FDAはサシチョウバエを介した感染実験を通してcGMP レベルの LSTによる潜伏感染と免疫記憶の検出能を検証する。内臓リーシュマニア症の前臨床動物モデルとしてハムスターを、皮膚リーシュマニア症の前臨床動物モデルとしてマウスを用いる。

マギル大学はリーシュマニン抗原の製造プロトコールを確立し、抗原の安定性を精査する。またインドのビハール州において内臓リーシュマニア症から治癒した患者ならびに不顕性感染者を対象に行う臨床試験を通してLSTの有効性を評価する。

他(参考文献、引用文献など)

1.   Reed, S., Badaro, R., Masur, H., Carvalho E., Lorenco R., Lisboa, A., Texeira, R., Johnson W., and Jones, T. Selection of a skin test antigen for American visceral leishmaniasis. Am. J. Trop. Med. Hyg. 35: 79-85, 1986.

2.   Alimohammadian M., Kojori Z., Darabi H., Malekzadeh M. et al. Soluble Leishmanin as an ideal reagent for skin testing in human leishmaniasis. Iran. Biomed. J. 1: 39-47, 1997.

3.   Gramiccia M., Bettini S., Gradoni L., Verrilli L., Loddo S., and Cicalo C. Leishmaniasis in Sardinia. Leishmanin reaction in the human population of a focus of low endemicity of canine leishmaniasis. Trans. Roy. Soc. Trop. Med. Hyg. 84: 371-374, 1990.