Investment

プロジェクト

CoPoPリポソームを用いたPfs230/CSP多価マラリアワクチン
完了プロジェクト
 

イントロダクション/背景

イントロダクション

マラリアは、マラリア原虫を病原体とし、蚊によって媒介される重篤な感染症で、アフリカの子ども達の主要な死因となっています。マラリアの撲滅には、マラリア原虫の生活環を断つ治療薬、ワクチン、媒介蚊対策等の新たなツールの開発が必須です。本プロジェクトでは、ワクチン抗原や投与法の最新の研究成果に立脚して、「ヒトから蚊」、及び「蚊からヒト」への双方向の伝搬経路を全て断つことのできる、多価マラリアワクチンの開発を目指します。具体的には、有望なワクチン抗原であるPfs230(ヒトから蚊)およびCSP(蚊からヒト)を新規投与法であるCoPoPリポソーム上に載せ、双方向の伝搬経路を断つことができるか検証します。本プロジェクトの遂行により、この多価ワクチンを前臨床試験へと進めるか否か判断します。

 

プロジェクトの目的

以下の3点を目的に本プロジェクトを実施します。

1.CoPoPリポソームと免疫増強剤の組合せ(以下:CoPoPアジュバント)によるCSPの免疫原性増強効果の検証

2.CoPoPアジュバントへのPfs230C1とCSPの同時搭載による免疫原性および防御免疫増強効果の検証

3.上記で選択した製剤のGLP毒性試験に有用な他種の動物による免疫原性の検証;ワクチンとしての仕様を確立するための品質管理法の開発

 

プロジェクト・デザイン

Pfs230C1-CoPoPアジュバントによる研究成果を踏まえて、CSP-CoPoP の免疫原性の増強効果をマウスで検討します。次に、CoPoPアジュバントへのPfs230C1とCSPの同時搭載の可能性と、それぞれの抗原に対する免疫原性の増強効果をマウスで検討します。なお、CoPoPアジュバントへのPfs230C1とCSPの搭載効率とその安定性は、生化学的ならびに物理化学的方法で測定します。Pfs230により誘導されるヒトから蚊への伝搬阻止効果は、メンブレンフィーディング法(SMFA)で測定し、CSPにより誘導される感染阻止効果は、遺伝子改変マラリア原虫を用いて測定します。さらに、GLP毒性試験に有用な他種の動物を用いて、その免疫原性を検証します。また、将来のワクチンの仕様を確立するための品質管理法を開発します。

本プロジェクトによって、グローバルヘルスの課題はどのように解決されますか?

近年のマラリア対策の強化にもかかわらず、2017年現在でも全世界で2億人以上のマラリア患者がおり43.5万人が死亡しています(WHO)。マラリア撲滅のためには、現行の対策の有効活用に加えて、新しい対策の開発が必須です。本プロジェクトのワクチンは、マラリア患者や死亡者を減少できるだけでなく、マラリア感染蚊の減少による地域的マラリア撲滅にも貢献できる可能性があります。また、本ワクチンのヒトでの安全性と免疫原性が証明され、低コスト生産の見通しが立てば、CoPoPリポソームは、グローバルヘルスにおいて重要な他の疾患に対するワクチン開発にも応用可能となります。

本プロジェクトが革新的である点は何ですか?

新規投与法であるCoPoPリポソーム上に2種のマラリアワクチン抗原を載せ、「ヒトから蚊」、及び「蚊からヒト」への双方向の伝搬経路を全て断つことができる多価ワクチンの開発を目指す点が革新的です。

各パートナーの役割と責任

PATH: 設立以来20年間、各種マラリアワクチン開発に取り組み、資金提供、科学・技術・マネージメントで貢献してきました。本プロジェクトではPATHは研究代表者として、プロジェクトマネージメント、Pfs230C1及びCSPタンパク質の提供、研究のデザイン、伝搬阻止活性測定、ならびに研究データの解析を担当します。

SUNY: ニューヨーク州立大学は全米最大の総合大学で、SUNY Buffaloは1846年創立の基幹研究大学です。SUNYはCoPoPの開発者で、本プロジェクトではCoPoPの合成及び最適化、免疫実験用のCoPoPフォーミュレーションの作製と細胞性免疫アッセイを担当します。

愛媛大学: 愛媛大学は、マラリア基礎研究、中でもワクチン研究に有用なスポロゾイトの宿主侵入や伝搬阻止ワクチン研究の実績が豊富です。本プロジェクトでは、動物に対するワクチンの免疫原性と防御活性の測定を担当します。

他(参考文献、引用文献など)

・WHO Global Techincal Strategy for Malaria 2016-2030. https://www.who.int/malaria/publications/atoz/9789241564991/en/

・WHO World Malaria Report 2018. https://www.who.int/malaria/publications/world-malaria-report-2018/en/

・Lee SM, Wu CK, Plieskatt CL et al, N-Terminal Pfs230 Domain Produced in Baculovirus as a Biological Active Transmission-Blocking Vaccine Candidate. Clin Vaccine Immunol. (2017) 24:e00140-7.

・Huang WC, Deng B, Lin C et al, A malaria vaccine adjuvant based recombinant antigen binding to liposomes. Nat.Nanotechnol. (2018) 13:1174-82.