プレスリリース

June 2, 2015

DNDiと製薬企業4社が、とりわけ顧みられることのない 2つの病気-リーシュマニア症およびシャーガス病-に対する 新薬の発見を加速・拡大するための「創薬ブースター」の試みについて発表

2015年5月29日

 DNDi

エーザイ株式会社

塩野義製薬株式会社

武田薬品工業株式会社

公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金

AstraZeneca plc

 

 

DNDiと製薬企業4社が、とりわけ顧みられることのない

2つの病気-リーシュマニア症およびシャーガス病-に対する

新薬の発見を加速・拡大するための「創薬ブースター」の試みについて発表

 

公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)による支援の下

顧みられない熱帯病に立ち向かう複数の企業とDNDiによる初の取り組み

 

[ジュネーブ、スイス/大阪・東京/ロンドン、英国-2015528日]

Drugs for Neglected Diseases initiative(DNDi )とエーザイ株式会社、塩野義製薬株式会社、武田薬品工業株式会社、及びAstraZeneca plcの4社の製薬企業が、世界で最も顧みられない2つの病気であるリーシュマニア症とシャーガス病の早期における創薬を加速し且つコストを削減する、画期的な試みに取り組むことを発表しました。「顧みられない熱帯病に対する創薬ブースター」のコンソーシアムは、慎重を極めた工学的手法により、参加製薬企業4社間の早期創薬における商業的障壁を取り除き、DNDiにとって初めてリーシュマニア症とシャーガス病の新たな治療の「リード化合物」を特定するための何百万という化合物を同時に探索することが可能となりました。

 

DNDiの最高責任者であるベルナール・ペクール(Bernard Pécoul)医師は、「顧みられない病気の創薬を根本的に変えるこの実験的な試みは、十年以上にわたり製薬各社と発展させてきたパートナーシップの賜物といえます。この試みは、新しく有望な治療の誘導体化合物を特定する時間とコストを大幅に削減し、革新的な研究開発の提携に繋がる大きな可能性を秘めています。」

 

新たな治療を見出すための早期創薬は、従来から高価で時間の掛かるプロセスでした。顧みられない病気に対する有望な新規化合物を特定するために、DNDiは多くの製薬企業とパートナーを組み、化合物ライブラリーの膨大なデータの探索や感染細胞に対する試験を行って来ました。「創薬ブースター」は、参加企業間における多角的な同時探索プロセスを用いた新たなアプローチによるもので、これによりDNDiは何十年にもわたる研究から得られた化合物にアクセスすることが可能となります。また最先端の技術を駆使することにより、さらなる試験に進むことのできる有望な特徴を持った化合物を特定することができます。

 

「創薬ブースター」の革新的な要素は多角的なアプローチのみならず、探索の双方向的な性質という特徴にもあります。すなわち、探索が進むにつれ、企業はより適した化合物を特定するためにライブラリーを継続して調べます。この「創薬ブースター」を行うことで、通常であればおよそ5年かそれ以上を要する早期の創薬プロセスを最高で2年短縮できる可能性があり、研究活動全般で費用対効果も向上させることができます。

 

この新たなプロセスは、この「創薬ブースター」を進めるにあたり、DNDiが参加製薬企業4社に最初に共通の「シード化合物」の化学構造を開示するところから始まります。この化合物はリーシュマニア症およびシャーガス病を引き起こす原因となる寄生虫のリーシュマニアおよびクルーズトリパノソーマに対して有望な活性を示しますが、将来の治療においては、まだ最適な化合物とは言えないかもしれません。製薬企業4社は、それぞれ独自の特長があり、高品質な化合物が揃っているそれぞれの化合物ライブラリー全体を探索し、有効性が同等又はそれ以上と考えられる最も有望な化合物を選びDNDiに送ります。DNDiはリーシュマニア症及びシャーガス病の死に至る可能性もある寄生虫性疾患に対する有効性を調べるためにその化合物のスクリーニングを行います。このプロセスの目的は化合物の有効性を継続して改良することです。

 

DNDiはその後、さらなる研究開発に最適とみなされる「ヒット化合物」を選択します。この選択プロセスは、4社のコレクションのいずれかから選定され、有効性の向上が認められたこの「ヒット化合物」の化学構造情報は4社で共有され、これを次のシード化合物とすることにより、最高3回反復が繰り返され、次の研究開発に有望な「リード化合物」を創出します。初期のプロジェクトゴールは、各疾患に対して少なくとも4つの有望な「リード化合物」を見つけるために、コンソーシアムの全ての化合物ライブラリーを探索することです。このプロセスから得られた少なくとも2つの「新規化合物」が新薬開発に向けた次のステージに進むことになります。

 

「創薬ブースター」から得られるリーシュマニア症及びシャーガス病の治療の進歩や新たな薬剤開発の成功は、全ての参加パートナーの貢献によるもので、これらのパートナーは新薬開発が成功した場合に、新たな治療に対して知的財産の障壁を作らないことに同意しています。

 

2013年に発足した公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)はグローバルヘルスに関する研究開発(R&D)パートナーシップを奨励し支援しています。また、DNDiへの640,000ユーロ、すなわち7,950万円の助成金の提供を通じて、GHITは日本企業3社のプロジェクト参加を支援しています。なお、AstraZeneca plcのプロジェクトへの参加は、DNDi本体の資金によりまかなわれています。

 

「創薬ブースターは、世界でもっとも貧しい人々の健康と生活を脅かす病気との闘いのあり方を変える可能性を秘めた、画期的な取り組みになると思われます。とりわけ顧みられない病気に対して、患者の命を救う治療薬の開発を加速させるために、製薬業界は革新的なリーダーシップを発揮することが不可欠です。その実現に必要な日本企業による貢献を、今回GHITが支援できることを誇りに思います。」とGHIT Fund CEOである BTスリングスビーは述べています。