プレスリリース

February 5, 2015

薬剤耐性マラリアに対する新薬研究に、約6,370万円の投資決定

薬剤耐性マラリアに対する新薬研究に、約6,370万円の投資決定

新たな作用機序が期待されるヒット化合物群を同定

 

 

[東京 2015年2月5日] 本日、公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金(以下、GHIT Fund)は、次世代の抗マラリア薬の研究開発の初期段階において、複数のヒット化合物群を同定し、さらにこの研究開発促進に向けた新たな投資を決定したことを発表いたします。

 

東南アジアでは、抗マラリア薬アルテミシニンやその誘導体を使用した治療が長期化しており、既存薬に対する薬剤耐性が生じ、治療の有効性が低減しています。GHIT Fundはマラリア制圧に向け、薬剤耐性への対策を進めており、開発途上国に蔓延する感染症の治療薬になりうる新たな化合物の探索に対する支援を行っています。

 

このたびGHIT Fundは、第一三共株式会社(以下、第一三共)とスイスに本部を置く非営利組織であるMedicines for Malaria Venture(以下、MMV)とのパートナーシップに対して約6,370万円を投資することを決定いたしました。第一三共とMMVは共同で、より効果的な抗マラリア薬になりうる化合物の探索を進めていきます。

 

GHIT Fund CEOのスリングスビーBTは「第一三共とMMVのパートナーシップが極めて短い間に成果を生み出していることを大変喜ばしく思います。これは大きな一歩です。第一三共とMMVはGHITが設立されて間もない頃からパートナーシップを組み、抗マラリア薬の研究開発に取り組んでおり、さらに探索研究を前に推し進めていくでしょう。」と述べています。

 

第一三共は、GHIT Fundからの支援を受けて、同社が保有する50,000化合物のスクリーニングを行った結果、ヒット化合物群が見出されました。第一三共とMMVの研究者は、ヴィッキー・アベリー教授(豪国グリフィス大学エスキティス研究所)、スーザン・チャーマン(豪国モナシュ大学)、エリザベス・ウィンツェラー教授(米国カリフォルニア大学サンディエゴ校)とともに、ヒット化合物群が治療薬の特性を保有するかどうかに関する試験を行い、この中から少なくとも1つのリード化合物候補を導くことを目指しています。さらに、このパートナーシップでは、近年問題となっている薬剤耐性を持つマラリア原虫に対して、新たな作用機序を持つ化合物の探索に取り組むとともに、三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)と卵形マラリア原虫(Plasmodium ovale)に感染したことがある患者の再発防止に寄与する薬剤や、マラリアの感染防止や伝播阻止に寄与する薬剤を見出すことも検討しています。マラリアの制圧のみならず撲滅に貢献する抗マラリア薬の創出に向けて、今後は、マラリア感染の複数のステージに効果が期待されるヒット化合物群を用いて、リード化合物群の探索が行われる予定です。

 

「私たちのミッションは、革新的な医薬品を継続的に創出し、世界中の人々の健康で豊かな生活に貢献することです。今回、GHITと共に、マラリアのような世界に蔓延する深刻な感染症を制圧するための創薬を促進できることについて大変嬉しく思います。」と第一三共の代表取締役社長兼CEOである中山讓治氏は述べています。

 

今回発表した第一三共とMMVの案件は、GHIT Fundのヒット・トゥ・リード・プログラム(Hit-to-Lead Platform:HTLP)におけるプロジェクトとなります。HTLPは、膨大な数の化合物ライブラリーの中からスクリーニングによって同定されたヒット化合物を、リード化合物へと導くためのプログラムです。マラリア、結核、顧みられない熱帯病の製品開発を行うProduct Development Partnershipsと連携することによって、日本の企業や研究機関等が保有するヒット化合物の中からリード化合物を導きだすことを目的としています。HTLPは、GHIT Fundが実施している、スクリーニング・プログラムと、リード最適化〜非臨床・臨床試験〜申請登録の段階に投資する製品開発プログラムを繋ぐ事業です。

 

2013年にマラリアに感染した患者の数は世界で1億9,800万人にも上り、58万4,000人が死亡していると推定されており、サハラ砂漠以南のアフリカにおいては、その大多数を子どもが占めています。しかしながら、世界保健機関(WHO)の報告によれば、マラリアによる死亡率は、2000年から2013年の間に47%減少しています。目を見張る進歩が得られている一方で、抗マラリア薬に対する薬剤耐性は不可避の脅威であり、マラリア制圧・撲滅に向けた取り組みを継続していくためには、新規の効果的な抗マラリア薬、ワクチンの開発が必要です。

 

「薬剤耐性の問題が大きくなり、これまで以上に効果的な治療薬の開発が急務となっています。第一三共とMMVのパートナーシップを通じて、次世代の治療薬として期待される化合物の研究を進めていきます。この化合物が、多くの人々を苦しめるマラリアの撲滅に向けての大きな一歩となることを期待しています。」とMMVのCEO デイヴィッド・レディー氏は述べています。