Investment

プロジェクト

スクリーニングから見出されたヒット化合物からの抗マラリア薬としてのリード化合物探索プログラム
Project Completed
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イントロダクション/背景

 

イントロダクション

マラリアは毎年2億人以上が感染し、2015年には感染による死者は推定43万8千人に達している(そのうち78%の死者は5歳以下の子供である)。マラリアを撲滅させるには、耐性株対策、原虫感染時、形態変化時や肝臓休眠体に有効な新しい薬剤の創製が必要である。これまでに、多様な経験と知識を保有する武田薬品の研究者によってデザイン・構築されてきた2万個の化合物ライブラリーを用いて、ブリスベンのGriffith大学のVicky Avery教授とカリフォルニア大学サンディエゴ校のElizabeth Winzeler教授のもとで赤血球期及び肝臓休眠期の抗マラリア原虫作用のスクリーニングが実施されてきた。このプロジェクトではその結果の中から、4ケモタイプのヒット化合物を選択し、マラリア撲滅を最終目的とする新規医薬品の開発候補化合物をめざすリード化合物創製を行う。なお、このうちの1つのケモタイプは武田が研究してきた化合物の適応症再検討(リポジショニング)研究である。

 

プロジェクトの目的

このプロジェクトでは、見出されたヒット化合物を基にリード化合物の探索を行うが、2018年4月までに、GHIT/MMVで設定されているLead Optimization段階に進む条件を満たし、in vivo病態モデルでの効果を示す化合物を、少なくとも1種類、創製することをめざす。

 

プロジェクト・デザイン

最初の段階では、このリード化合物探索プロジェクトのために選択された化合物シリーズの中から有望な化合物に対して、マラリア原虫の形質変換(生活環)の各ステージに対する作用のプロファイリングを実施する。並行して、新規誘導体合成と構造活性相関研究を展開し、その抗マラリア活性と毒性の指標となる細胞障害性を評価する。物理化学的性質、安定性そして薬物代謝指標も検討する。その後、有望な化合物についてげっ歯類における薬物動態試験を実施し、ヒトマラリアの評価モデルにおいて有効性を検証する。最適な化合物構造の探索研究を進め、GHIT Fundの次の研究ステージに進める際の基準となる医薬品リード化合物を見出すことが目標である。

本プロジェクトによって、グローバルヘルスの課題はどのように解決されますか?

マラリア撲滅には、有効な新薬が不可欠となる。現時点での治療方法は、Artemisininを含む数種の薬剤の組み合わせ投与が行われているが、さらなる改善が可能である。例えば単回投与で有効な治療方法や、より安価で、より安全性が高く、より有効な治療方法、また臨床現場において保存中の安定性が高い薬剤の創製が期待されている。有効なワクチンがない現状においては、新薬の創出が患者数の拡大防止に必須である。さらに、ビル&メリンダ・ゲイツ財団と世界保健機関が支持するマラリア撲滅アジェンダにおいても、蚊から人への伝染を防ぐ薬剤や肝臓での休眠期マラリアに有効な薬の開発が要請されている。残念なことに、現在のパイプラインはすべての用件を満たしていないばかりでなく、増加しつつある既存薬への耐性を示すマラリアに対して有効な新規メカニズムを備える化合物が非常に少ない。MMVは広範なネットワークを使って、マラリアのコントロールにとどまらず根絶に繋がる次世代抗マラリア薬に必要な候補化合物プロファイルを設定した(7)。武田薬品、MMVそしてGHIT Fundによる本共同研究プロジェクトでは下記の要件のうち少なくとも一つを満たす化合物を創出することに注力する。ⅰ) 症状を速やかに軽減するために迅速な抗マラリア原虫作用を有する、ⅱ)長期的に作用を発揮し、他剤併用時にマラリア原虫の完全駆除治療が可能で、再発防止効果がある、ⅲ)マラリア原虫Plasmodium vivax種とPlasmodium ovale種の休眠体からの再発を阻害する、ⅳ)感染者のマラリア原虫の生殖母体(gametocyte)をターゲットにした、あるいは、媒介する蚊への移行を阻止して、感染を予防する、感染地域における再感染を予防する効果を有する。

本プロジェクトが革新的である点は何ですか?

本プロジェクトで取り組む化合物シリーズは、化学構造の新規性(すなわち新規作用機序を持つと推定される)、マラリア根絶に関係する原虫の形質変換のステージ(特に赤血球期と肝臓休眠期)に対する有効性プロファイル、そしてMMVの研究開発戦略の未充足部分にどの程度フィットするか、という点で革新性を考慮し選択された化合物群である。今後検討される化合物の中でGHIT FundおよびMMVが設定した基準(8)を満たし、かつその時点でMMVが実施している他のプロジェクトと差別化された化合物、すなわち類似薬のない革新的なリード化合物のみが次のステージに移行する。

各パートナーの役割と責任

プロジェクトチームは武田薬品とMMVの合成化学者と生物学の専門家、そしてMMVと提携する寄生虫学および薬物動態学の専門科学者から構成される。武田薬品の役割は、MMV、Griffith大学そしてMonash大学の専門科学者と共同で、ヒットシリーズのプロファイリング、医薬品合成化学の方針、および精査試験に進める化合物の選択に対して科学的なアドバイスを提供することである。武田薬品は医薬品の研究開発に対する知見を活かして、薬物動態、物理化学的プロファイルそして安全性薬理に対してもアドバイスを実施する予定である。MMVはプロジェクトを主導する。武田薬品と密に連携し、プロジェクトに対して戦略的なインプット、薬物探索およびマラリア研究の専門性を提供する。またMMVは、プロジェクトが外部機関から支援を受けられる体制を整え、創出された化合物および実験データから的確に方針を決定できるよう導く。Griffith大学のビッキー・アベリー教授(Vicky Avery)およびMonash大学のスーザン・チャーマン教授(Susan Charman)はMMVのパートナーであり、赤血球期マラリア原虫に対する試験管内試験および動物実験、さらには薬物動態試験に関してプロジェクト内で選択された化合物を用いたデータの取得を担当する。

他(参考文献、引用文献など)

1. World Health Organization (WHO). WORLD MALARIA REPORT 2015. (2015). DOI:ISBN 978 92 4 156515 8

2. Wells, T. N. C., Huijsduijnen, R. H. Van, Voorhis, W. C. Van, van Huijsduijnen, R. H. & Van Voorhis, W. C. Malaria medicines : a glass half full ? Nat. Rev. Drug Discov. 14, 424–442 (2016).

3. Meister, S. et al. Imaging of Plasmodium liver stages to drive next-generation antimalarial drug discovery. Science 334, 1372–7 (2011).

4. Duffy, S. & Avery, V. M. Development and optimization of a novel 384-well anti-malarial imaging assay validated for high-throughput screening. Am. J. Trop. Med. Hyg. 86, 84–92 (2012).

5. Lucantoni, L. & Avery, V. Whole-cell in vitro screening for gametocytocidal compounds. Future Med. Chem. 4, 2337–2360 (2012).

6. Wassermann, A. M. et al. Dark chemical matter as a promising starting point for drug lead discovery. Nat. Chem. Biol. (2015). doi:10.1038/nchembio.1936

7. Burrows, J. N., Duparc, S., Gutteridge, W. E., van Huijsduijnen, R. H., Kaszubska, W., Macintyre, F., Mazzuri, S., Möhrle, J. J. & Wells, T. N. C. New developments in anti-malarial target candidate amd product profiles. Malar. J. 16:26 (2017). DOI: 10.1186/s12936-016-1675-x

8. Katsuno, K. et al. Hit and lead criteria in drug discovery for infectious diseases of the developing world. Nat. Rev. Drug Discov. 14, 751–8 (2015).

最終報告書

1. プロジェクトの目的

本プロジェクトでは、ハイスループットスクリーニングから見出されたヒットシリーズを基に、次のステップに繋がるリードシリーズの探索を行います。なお、GHIT/MMVで設定されているリードシリーズ最適化段階に進む条件を満たし、病態モデルでの効果を示す化合物を少なくとも1種類、2018年4月までに創製することをめざします。

 

2. プロジェクト・デザイン

まず選択された4つのヒットシリーズの中から有望な代表化合物に対して、マラリアの生活環の各ステージに対する作用のプロファイリングを行います。並行して、新規誘導体合成を行い、その抗マラリア活性と細胞傷害性を評価します。また物理化学的性質、安定性、薬物代謝指標、およびヒトマラリアを模した病態モデル動物における薬効試験を行います。これらの指標について最適化を進め、最終的には初期のリード化合物を創出することを目指します。

 

3. プロジェクトの結果及び考察

4つのヒットシリーズに関して、プロファイリングが完了しました。ハイスループットスクリーニングから見出された3つのヒットシリーズについて新規誘導体合成を行いました。うち2つのヒットシリーズについては、適切なプロファイル指標を維持した状態で抗マラリア活性を保つことが難しいと判断したため、以降の研究を中止しました。1つのヒットシリーズについては、強力な抗マラリア活性、早期の活性発現、明確な構造活性相関が確認され、マラリアの病態モデル動物において薬効を示すことが明らかになりました。構造最適化を目指して多くの誘導体を合成し、抗マラリア活性、物理化学的性質および薬物動態指標について入念に評価した結果、本プロジェクトのゴールであった初期のリード化合物創出を2018年4月に達成しました。しかしながら、このヒットシリーズの課題であった低溶解度を解決するには至らず、また構造活性相関が著しく狭いため、動物における薬物動態の改善を指向した更なる誘導体合成を行うのは困難であると判断しました。一方、ハイスループットスクリーニングとは別に武田薬品の研究パイプラインから直接本プロジェクトに提供されたヒットシリーズについては、プロファイリングの実施は完了したものの新規誘導体合成には至らず、先行する化合物の再合成を実施するにとどまりました。よってこのヒットシリーズはこれからGHITに提案する新たなリード創出プロジェクトにおいてさらに検討する予定です。本プロジェクトで得られた科学的知見は次のプロジェクトで最大限活用されます。