Investment

プロジェクト

DNDi 田辺三菱の協働によるNTDs(シャーガス病、リーシュマニア症)を標的としたリード化合物創製研究
  • 受領年
    2020
  • 投資金額
    ¥117,066,370
  • 病気
    NTD (Chagas disease / Leishmaniasis)
  • 対象
    Drug
  • 開発段階
    Lead Identification
  • パートナー
    田辺三菱製薬株式会社 ,  Drugs for Neglected Diseases initiative
  • 過去の案件

イントロダクション/背景

イントロダクション

シャーガス病はTrypanosoma cruziという寄生虫の感染により引き起こされ、十分な治療が行われないと死に至り、世界で7,500万人に感染リスクがあり、600万人以上が罹患していると推定されている。毎年約3万人が新規に感染し、約1万人が死亡している(2019年:9,490人)。感染後、何十年も症状が現れず、感染に気づかない場合も多いが、患者の最大1/3が後に心臓を損傷し、進行性の心不全や突然死に至る可能性がある。

内臓リーシュマニア症はLeishmaniaという寄生虫の感染によって引き起こされ、発熱、体重減少、脾臓や肝臓の腫大がみられ、治療を行わないと死に至ることがある。世界中で6億人以上が感染リスクにある。年間推定5~9万の新規症例が報告され、約1万人が死亡している(2019年:5,710人)。新規症例の95%はブラジル、中国、エチオピア、インド、イラク、ケニア、ネパール、ソマリア、南スーダン及びスーダンで報告されている。

田辺三菱製薬株式会社(以下、田辺三菱)とDrugs for Neglected Diseases initiative(以下、DNDi)は、 2019年9月よりGHIT Fundの資金を活用した化合物探索スクリーニングを実施し、主にT.cruzi に対して選択的に活性を示す9種のHit化合物群(一部はT.cruziLeishmania donovaniの両方に活性を有する)の取得に成功した。これらはGHIT FundとDNDiのHit to Leadへ進む基準を満たし、新規性の高いT.cruzi 選択的な3系統を優先系統とした。

 

プロジェクトの目的

本プロジェクトの目的は、DNDiが定めるターゲットプロダクトプロファイル(TPP)に従い、シャーガス病及び/又は内臓リーシュマニア症に対するLead基準を満たす化合物の取得である。

 

プロジェクト・デザイン

Hit化合物から、その性能改善を目的にデザイン・合成された化合物について、両疾患に対するDNDiが定義したスクリーニングカスケードを用いることで、構造活性相関(SAR)を構築し、有望な化合物を探索する。in vitro活性の基準を満たした化合物については、さらに各種ADMET評価によるプロファイリングを行い、次いでPK試験を実施する。血漿及び培地の蛋白結合測定により、遊離画分として利用可能な薬物のレベルを評価することで、in vitro活性とin vivoでの薬物血漿中濃度との相関を評価する。十分な薬物曝露が期待される化合物については、in vivoでの有効性を検証するために、二次試験として、シャーガス病急性感染又はリーシュマニア症の動物モデルを用いたPD試験と並行して検討する。これらにより、DNDi Leadステージの基準を満たす化合物の取得を、この2年間のプロジェクトの最終目標として設定した。

本プロジェクトによって、グローバルヘルスの課題はどのように解決されますか?

現在、シャーガス病の治療薬はニフルチモックスとベンズニダゾールの2種類のみで、いずれも発見後、半世紀経過したものである。これら薬剤は感染急性期、あるいは慢性無症候期にも効果を示すが、副作用と治療期間が長期になることが問題となっている。また、重度の慢性症状がある患者に対する有効性は証明されていない。安全かつ有効で、安価な、現地に適した、疾患の慢性期のための新薬が求められている。

内臓リーシュマニア症に対する既存の薬剤は、安全性、薬剤耐性、安定性及び価格の点で重大な欠点を有する。忍容性が低く、単剤では投与期間が長く、投与法も現地に適していない。最終的な目標は、新規の経口薬を開発することである。

本プロジェクトでは、新しい有望な化合物群を提供することによりシャーガス病及び/又は内臓リーシュマニア症の初期の研究開発パイプラインを強化し、両疾患におけるアンメットメディカルニーズに応えることを目指す。

本プロジェクトが革新的である点は何ですか?

シャーガス病及び内臓リーシュマニア症に対するLeadステージ移行の成功確度は高くはない。従って、シャーガス病及び内臓リーシュマニア症に対するDNDi のTPPに沿った前臨床候補化合物を含む強固なポートフォリオの構築には、Hit to Leadステージの段階で十分な数の新規化合物が必要である。田辺三菱とDNDiは、スクリーニング共同研究を通して複数の有望なT.cruziLeishmaniaの活性化合物群を同定した。これらの化合物群は新規骨格であり、両疾患の創薬ステージポートフォリオへの拡充が期待される。なお、優先系統は、シャーガス病のポートフォリオ拡充に必要な T.cruziに選択的に活性を示している。

各パートナーの役割と責任

プロジェクトは、田辺三菱及びDNDiのプロジェクトリーダーと科学者で構成されるチームによって実施する。各種試験は、DNDiと田辺三菱の研究代表者等、及び各協力機関の協働により遂行される。

・新規化合物の設計:田辺三菱及びDNDi

・合成:DNDi

in vitro及びin vivo薬効試験:DNDiの各協力機関(Institute Pasteur Korea(韓国)、 University of Dundee(英国)、Laboratory of Microbiology, Parasitology and Hygiene at University of Antwerp(ベルギー)、The Griffith Institute for Drug Discovery, Griffith University(オーストラリア)、 London School of Hygiene and Tropical Medicine(英国)、 Swiss Tropical and Public Health Institute(スイス))

・物性評価、in vitro ADMET及びDMPK:田辺三菱及びDNDi

・プロジェクト進捗、及びデータ管理:DNDi