プレスリリース
EDCTPとGHIT Fundによる 小児用プラジカンテル・コンソーシアムへの共同投資について
公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金(以下、GHIT Fund)はこのたび、サハラ以南のアフリカにおける感染症に対する新薬開発の推進ならびに臨床試験を支援するオランダの機関であるThe European & Developing Countries Clinical Trials Partnership(以下、EDCTP)との新たなパートナーシップを発表します。GHIT FundとEDCTPは本パートナーシップの下でグローバルヘルス分野における革新的な製品開発のための共同投資を行います。具体的には、GHIT Fundが先般、第III相試験への投資を発表したプラジカンテル小児製剤の開発です1。
このプラジカンテル小児製剤の開発は、日本のアステラス製薬株式会社、ドイツのMerck KGaA、オランダのLygatureなどが参画する「小児用プラジカンテル・コンソーシアム(Pediatric Praziquantel Consortium、以下、本コンソーシアム)」が実施しています。本コンソーシアムは、新規プラジカンテル小児製剤(口腔内崩壊錠剤)の開発、薬事申請、および普及を目的として、2012年に設立されました。GHIT Fundは2014年以降、本コンソーシアムに対して総額約11.4億円を投資しています2。
今回実施される第III相試験では、就学前児童の住血吸虫症の治療に用いるプラジカンテル小児製剤の臨床データ取得や薬事申請の準備等が行われます。本日、EDCTPはこの第III相試験に対して、約2.6億円(約€1.99M)の投資を発表し、GHIT Fund及び他のコンソーシアムメンバーとともに今後共同で製品開発を推進していきます3。
EDCTPのエグゼクティブ・ディレクターであるマイケル・マカンガ博士は、このたびの共同投資について次のように述べています。「GHIT Fundとの本コンソーシアムへの共同投資は、住血吸虫症蔓延国における解決策を見出すという壮大な目標を掲げた、国際的なパートナーシップによる真価を表しています。今回実施される第III相試験では、確固たるエビデンスを構築し、薬事申請のための準備を行い、顧みられてこなかった患者や疾患のための施策に取り組んでいきます。EDCTPは今後も、臨床試験の対象から除外され、様々な医療課題に悩む人々のための共同プログラムを行っていきます。」
GHIT FundのCEOである、BTスリングスビーは、「GHIT Fundは、本コンソーシアムを支援できることを大変誇りに思います。EDCTPとの共同投資を通じて、GHIT Fundの投資インパクトをさらに拡大できるだけでなく、日本のイノベーションを活かした製品開発をより加速させることができます。」と述べています。
住血吸虫症は、サハラ以南のアフリカに広く見られる寄生虫病であり、貧血、栄養失調、幼児期発達障害などを引き起こします。効果的な治療としてプラジカンテル錠がありますが、小児が飲み込むことが困難なほど大きく、かつ不快な苦味を有しており、錠剤を粉砕して投与することができません。「住血吸虫症を有する就学前児童に適した新しいプラジカンテル口腔内崩壊錠剤に関する第Ⅲ相試験および薬事申請」と名付けられたこのプロジェクトでは、以下を実施します。
・ ケニアおよびコートジボワールにて第Ⅲ相試験を実施し、マンソン住血吸虫およびビルハルツ住血吸虫に感染した生後3ヵ月〜6歳の就学前児童におけるプラジカンテル経口崩壊錠剤の単回投与の有効性と安全性を実証
・ 医薬品原薬および小児製剤(医薬品)の最終製剤工場における商業プロセスの確立
・ 欧州医薬品庁(EMA)への薬事申請準備(第58条)、ならびに世界保健機関(WHO)の事前認証取得準備
・ プロジェクトに対する認知向上、製品供給戦略の構築、ステークホルダーからの支持獲得
GHIT FundとEDCTPはともに、HIV/エイズ、マラリア、結核、および貧困に関連する感染症などを対象とした製品開発に投資を行っており、今後さらなる共同投資の可能性を検討していきます。
1第III相試験に対しては、約4.7億円(約€3.22M)の投資を発表しています。https://www.ghitfund.org//about/mediacenter/pressdetail/detail/172/jp および
https://www.ghitfund.org/impact/portfolio/awpdetail/detail/103/jpを参照のこと。
2GHIT Fundによる投資総額約11.4億円(約€8.63M)の中に、第III相試験に対する約4.7億円(約€3.22M)の投資が含まれています。
32017年12月現在、第III相試験に対する投資総額は、GHIT Fund、EDCTP、コンソーシアム参画団体から投資、in kindによる支援を合わせて、約15.9億円(約€12.1M)となります。
EDCTPについて
EDCTPは、HIV、結核、マラリアなどのグローバルヘルスにおける諸課題に対応するため、欧州連合(EU)からの支援を得て、16の欧州諸国による共同研究プログラムとして2003年に発足しました。サハラ以南のアフリカにおける臨床試験を支援するプログラムとしては、当時EUの中でも最大規模のプログラムでした。現在、EDCTPは、欧州、サハラ以南のアフリカ、およびEU各国のパートナーシップ(Public-Public Partnership)として、EDCTP加盟国により運営されており、欧州委員会(EC)、アフリカ連合(AU)、世界保健機関(WHO)の代表がオブザーバーを務めています。EDCTP加盟国には以下の国々が含まれます。オーストリア、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、アイルランド、イタリア、ルクセンブルグ、オランダ、ノルウェー、ポルトガル、スペイン、スウェーデン、英国が含まれます。ブルキナファソ、カメルーン、コンゴ、ガボン、ガンビア、ガーナ、マリ、モザンビーク、ニジェール、セネガル、南アフリカ、タンザニア、ウガンダ、ザンビア。また、スイスはEDCTPのaspirant memberです。EDCTPは、オランダの法律に基づいて運営されています。
欧州連合(EU)について
欧州連合は、研究とイノベーションの枠組みプログラムである「Horizon 2020」の下でEDCTPを支援しています。