Investment

プロジェクト

抗マラリア薬の前臨床候補化合物創出
Project Completed
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イントロダクション/背景

イントロダクション

2000年以降マラリアに由来する死亡率は50%以上低下している。しかしながら、2015年においても約2.14億人マラリア患者が発生していると推定され、その感染者の内43万8千人が死亡しその大部分(80%以上)は子供である。1 2015年3月に第一三共とMMVはGHIT fundによるサポートを受け抗マラリア活性を持つ3つの化合物シリーズに関しHit-to-Leadの共同研究を開始した。第一三共インド(ニューデリー、インド)、Centre for Drug Candidate Optimization(CDCO) (メルボルン、オーストラリア) と Eskitis Institute (ブリスベン、オーストラリア)を含む多様な機関での共同研究の結果、GHITとMMVが規定する初期リード化合物のクライテリアを満たす2つの新規化合物シリーズが得られた。2その結果2016年10月より新規化合物シリーズを基にした共同研究提案がGHIT Product Development Platform(GHIT PDP)に採択されプロジェクトを開始する事になった。

 

プロジェクトの目的

このプロジェクトの目的は、共同研究開始から24ヶ月以内にTarget Candidate Profile (TCP)を満たす抗マラリア作用を持つ新規臨床候補化合物を創出することである。3

 

プロジェクト・デザイン

このプロジェクトでは、2つのリード化合物シリーズの研究を同時に進めることにより、物理化学的、生物化学的及び、薬物動態的特性や毒性所見が基準を満たさないことによる研究の中止リスクを低減させる。また創薬化学担当者が関わる化合物デザインと試験、in vitroとin vivoの寄生虫学的試験、薬物動態試験の反復サイクルにより化合物の最適化を実現する。MMVのExpert Scientific Advisory Committee (ESAC)が、戦略的かつ科学的な観点から合成された化合物シリーズが非臨床及び臨床のグローバルなポートフォリオに沿っているか助言を与える。

本プロジェクトによって、グローバルヘルスの課題はどのように解決されますか?

科学的に大きな進歩があるにも関わらずまだ達成されていない、既存のアルテミシニンとの組み合わせ治療に対する耐性に有効で、脆弱な人々を治療し、媒介への感染を阻止することによりマラリア原虫の生活環を阻害し感染を防ぎ、肝臓で休止状態のマラリア原虫を阻害するような、新しく、入手し易く、安全なマラリア薬の創製は喫緊の課題である。これらの理由のため、本プロジェクトではグローバルなマラリア薬ポートフォリオに無い化合物シリーズに力点を置いた。1つ目の化合物シリーズは、血液ステージのマラリア原虫を新規の作用機序により早く駆逐し、薬剤耐性マラリア原虫に対しても効果を持つことが期待されるプロファイルを持つ。2つ目の化合物シリーズは血液ステージのマラリア原虫へ比較的ゆっくりと作用するが、他の作用時間が長い薬剤と併用して完治を目指す薬剤や、マラリア原虫の伝播を防ぎ再発予防薬として開発できる可能性を持つ。化合物がもともと持つマラリア薬としての資質は、臨床での成功可能性を高める重要な要素であるため、我々が手がける化合物シリーズは両方ともGHIT FundとMMVが定めた抗マラリア薬としてのリードクライテリアを満たす化合物から選択されている。2

本プロジェクトが革新的である点は何ですか?

本プロジェクトに対し、個々の研究パートナーはそれぞれの特定の専門知識を研究チームにもたらしている。そこでは、ピアレビューされた環境下で共同研究を実施し、学際的かつ多国籍な研究チームで、顧みられない病気の研究に対し広く互いに敬意を持ち研究を進めている。伝統的な創薬の典型である“囲いこまれたイノベーション”ではなく、我々が取っているこのイノベーティブな方法により、創薬にかかる時間を短縮するのみならず、創薬の成功確率をも高めることができると考えている。

 

MMVはマラリア薬の研究開発の優れたProduct Develop Partnershipとして知られ、マラリアの治療のみならず、根絶を目指した次世代型のマラリア薬創製に注力している。世界保健機構(WHO)のグローバルな技術戦略に沿い、MMVは新規マラリア薬の目標製品プロファイルの明確化に寄与し、研究パートナーの大きなネットワークを構築している。

 

第一三共は日本発のグローバルな創薬企業として、GHIT fundとのパートナーシップを通じ顧みられない病気の治療薬研究に貢献している。

 

CDCOは過去10年以上のマラリア薬研究開発の経験(例えばOZ439, DSM265 and MMV048)を通じADMEと薬物動態の測定とその解釈の観点から創薬へ多大な貢献をしてきた。

 

Eskitis Instituteは過去の実績として、現在臨床で研究が進められているMMV048などの新規マラリア薬のin vitroの寄生虫学的試験への貢献がある。またasexual blood5 及びsexual blood6 stageのマラリア原虫への作用を評価するアッセイ系を多数立ち上げている。また、彼らのハイスループットスクリーニング(HTS)から本プロジェクトで扱っている化合物が見出された。

各パートナーの役割と責任

このプロジェクトは、第一三共とMMV及び共同研究者の緊密な協力により進め、第一三共とMMVがプロジェクトの管理に責任を持つ。第一三共はDesignated Development Partnerとしてプロジェクトに参画し、プロジェクトの成果創出と各共同研究者の規則遵守に責任を持つ。MMVはプロジェクト管理に加え、プロジェクトに対する戦略的なインプットや、MMVの研究ネットワークを通じ専門家の意見や最新のアッセイを研究チームに提供する。化合物のデザインと合成は第一三共インド(DSIN)が担当する。マラリア原虫に対する試験(asexual and sexual blood stage assays)はEskitis InstituteのAvery教授が担当する。それ以外のin vitroとin vivoの寄生虫学的試験と伝達阻害試験はMMVの協力機関で実施する。物理化学試験と薬物動態試験はCDCOのCharman教授が担当する。

他(参考文献、引用文献など)

1. WHO. World Malaria Report 2015. WHO (2015).

2. Katsuno, K. et al. Hit and lead criteria in drug discovery for infectious diseases of the developing world. Nat. Rev. Drug Discov. 1–8 (2015).

3. Burrows, J. N., van Huijsduijnen, R. H., Möhrle, J. J., Oeuvray, C. & Wells, T. N. C. Designing the next generation of medicines for malaria control and eradication. Malar. J. 12, 187 (2013).

4. WHO. Global technical strategy for malaria 2016-2030. WHO Geneva 1–35 (2015).

5. Guiguemde, W. A. et al. Chemical genetics of Plasmodium falciparum. Nature 465, 311–5 (2010).

6. Duffy, S. & Avery, V. M. Identification of inhibitors of Plasmodium falciparum gametocyte development. Malar J 12, 408 (2013).

最終報告書

1. プロジェクトの目的

本プロジェクトの目的は、共同研究開始から24ヶ月以内にTarget Candidate Profile (TCP)を満たす抗マラリア作用を持つ新規臨床候補化合物を創出することであった。

 

2. プロジェクト・デザイン

本プロジェクトでは、物理・生物化学及び薬物動態的特性や毒性の基準未達による研究中止リスク低減のため、2つの化合物シリーズの探索を進め、化合物デザイン/薬理・薬物動態評価サイクルによる化合物最適化を目論見た。さらに、プロジェクト方針がMMVの非臨床/臨床ポートフォリオに沿うか、External Scientific Advisory Committeeが助言する事とした。

 

3. プロジェクトの結果及び考察

リード同定ステージにおいてin vivo SCIDマウスモデルで薬効を示した2つの化合物シリーズについて探索を実施した。両シリーズのプロファイリングの結果、TCPならびにMOAは両シリーズ間で異なることが明らかとなった。さらに、in vitro初期毒性評価から、シリーズ2については構造由来の毒性が懸念されたことから中止することとした。シリーズ1化合物についてはSARおよび物理化学的特性を注意深く分析しながら更なる化合物最適化を実施した。その結果、SCIDマウスモデルでの薬効において、我々の先行化合物を上回る化合物をひとつ見出すことができたものの、Late Lead Criteriaを満たす化合物を取得することは困難であった。更なる合成展開を実施してもクライテリアを満たす化合物を取得することは困難であると考えられることから、共同研究中止の判断をした。

これらの結果を踏まえ、研究の中止リスクを低減させる目的で複数骨格のヒット化合物を取得するため、より大きな化合物ライブラリーを用いたスクリーニングを実施することが必要であると思われた。また、物理化学的・薬物動態的特性が低いヒット化合物からの展開を実施する際は、リード同定の後半からリード最適化の初期段階において、より積極的なScaffold Hoppingの試みを実施することが併せて必要なのではないかと思われた。