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受領年2014
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投資金額¥6,000,000病気Malaria対象Drug開発段階Lead Identificationパートナー北里研究所 , Medicines for Malaria Venture (MMV) , 北海道大学
イントロダクション/背景
漢方薬の有効成分であるアルテミシニンは、何世紀にもわたり発熱患者の治療に活用されてきました。赤血球に侵入したマラリア原虫を数日以内にほぼ死滅させ、副作用が極めて少ないという優れた薬効を示します。また、これまで使われてきた抗マラリア薬クロロキンに耐性を獲得したマラリア原虫に対しても有効です。
一方、アルテミシニンの高い脂溶性が薬剤としての短所であり、化学的な変換を施して水溶性を向上させた誘導体アルテスネート等が開発されています。また、アルテミシニン系薬剤は速効性がある反面、マラリアの再発を防ぐことができません。
世界保健機関(WHO)は、アルテミシニン誘導体と持続性の薬剤を併用する療法を推奨しています。実際、アルテミシニン系の薬剤は著しい治療成果を挙げており、マラリア治療の第一選択薬となっています。ただ最近では、アルテミシニンに耐性を獲得したマラリア原虫の出現が報告されています。
本プロジェクトによって、グローバルヘルスの課題はどのように解決されますか?
アルテミシニン誘導体を活用したマラリア治療を持続的に発展させていくためには、まず薬剤を安価に安定供給する必要があります。アルテミシニンはヨモギ科の植物から抽出で得られますが、複雑な化学構造を持つので人工的に大量供給するのは困難とされてきました。また、水溶性を改善し優れた薬効を示す誘導体アルテスネートの生産には、抽出で得たアルテミシニンを用いて、更に化学変換する手間とコストが必要となっています。
北海道大学、北里大学、MMVとの国際共同研究を展開する本プロジェクトでは、母骨格の炭素を窒素に置き換えたアザ-アルテミシニンを設計し、窒素の特性を生かして簡便に化学合成する手法を開発しています。この元素置換戦略により、工程数を大幅に短縮した合成プロセスを実現すると同時に、水溶性や薬物動態を合理的に最適化します。さらに、分子構造を自在に改変できる合成化学を駆使して、アルテミシニン耐性原虫にも有効な薬剤の創製に取り組みます。
本プロジェクトが革新的である点は何ですか?
本プロジェクトでは、炭素を窒素に置き換える一原子レベルでの微細な分子構造の改変により、アルテミシニン系薬剤の生産効率や水溶性を大幅に改善しうる研究展望が描ける点です。窒素ならではの化学的性質を活用することで、複数の構築ブロックを一挙に連結し、アザ-アルテミシニン群を短い工程数で化学合成します。これにより、合成プロセスの大幅な単純化や低コスト化が期待できます。また同時に、活性発現に重要なトリオキサン骨格を簡略化せずに、アルテミシニンの構造を多様化した誘導体の創製が可能となります。
従来、アルテミシニン類の誘導化は、ラクトン環の改変に限定されていました。本プロジェクトでは、アルテミシニンの骨格に官能基や置換基を導入し、既存のアプローチでは入手が難しい誘導体を創製します。短段階での化学合成と分子構造の最適化を合理的に実現し、より優れた活性を発現する抗マラリア剤の創製に取り組んでいきます。
他(参考文献、引用文献など)
Jeremy N Burrows, Rob Hooft van Huijsduijnen, Jörg J Möhrle, Claude OeuvrayandTimothy NC Wells*“Designing the next generation of medicines for malaria control and eradication” Malaria Journal 2013, 12, 187.
Investment
プロジェクト
アザ-アルテミシニン群の設計と低コストde novo合成法の開発
完了プロジェクト