Investment

プロジェクト

熱帯熱マラリアの抗マラリア治療薬耐性化に対する、アルテメテル-ルメファントリン-アモジアキン(ALAQ)を用いた三剤併用療法の有効性評価及び導入準備
  • 受領年
    2023
  • 投資金額
    ¥504,325,357
  • 病気
    Malaria
  • 対象
    Drug
  • 開発段階
    Clinical Phase3
  • パートナー
    丸紅株式会社 ,  マヒドン・オックスフォード熱帯医学研究ユニット ,  Medicines for Malaria Venture (MMV) ,  Shanghai Fosun Pharmaceutical Industrial Development Co., Ltd. (FOSUN PHARMA)

イントロダクション/背景

1. イントロダクション

熱帯熱マラリアは、サハラ以南の熱帯地域における特に小児の主な死因である。アルテミシニンベースの併用治療(ACTs)は代替薬のない第一選択薬として評価されるが、アルテミシニンの部分耐性(ART-R)の増加によりマラリアの制御と根絶は脅威に直面している。ART-Rは大メコン圏やルワンダ・ウガンダ等のアフリカ諸国で確認され、ACT併用薬への耐性化と拡大を引き起こし、治療失敗へと直結し得る。これに対しアルテミシニン誘導体と2種類の併用薬を組み合わせた三剤併用治療(TACTs)の開発は重要なアプローチであり、相互作用によって耐性化を防ぐことが期待できる。最も開発が進むALAQは安全性の懸念なく有効性と高い忍容性が確認されており、数学的モデリングでACTsの継続使用に比べART-Rを減少させることが示されている。患者のコンプライアンス向上のため3つの有効成分の多剤混合薬(FDC)とし、Fosun Pharmaが開発するALAQ-FDCのマラリア蔓延国における評価が本プロジェクトの目的である。

 

2. プロジェクトの目的

 1. 異なる抗マラリア薬耐性パターンを示す各地域において、Fosun Pharmaが開発、製造するALAQ-FDCの安全性、忍容性、有効性を、既存の第一選択薬であるALとASAQと比較して評価。
 2. ALAQ-FDCとAL、ASAQとの間での治療後の予防効果比較
 3. ALAQ-FDCの臨床上の使用に於ける潜在的な薬物間相互作用評価
 4. 臨床試験実施国におけるALAQ-FDCの登録、導入、商業化を成功させるための戦略検討・立案
 5. マラリア蔓延国にALAQ-FDCを展開するためのマーケティングポジションの検討

 

3. プロジェクト・デザイン

ALAQ-FDCの安全性、忍容性、有効性及び薬物動態学/力学的側面側面は、熱帯熱マラリア原虫の治療に対し、ALAQ-FDCをATCsであるアルテメテル-ルメファントリン(AL)及びアルテスネート-アモジアキン(ASAQ)(一部のサイトでは単剤低用量プリマキンと併用)と比較するランダム化対照非劣性試験で評価される。試験はルワンダ、ウガンダ、アンゴラ、ナイジェリア及びタイのサイトにて実施予定。

本プロジェクトによって、グローバルヘルスの課題はどのように解決されますか?

熱帯熱マラリアは依然熱帯地域における重大な健康上の脅威であるが、アフリカの多くの国でマラリアによる疾病負荷を軽減する取組が停滞している。アルテミシニンの部分耐性とACT併用薬耐性は、アフリカにおけるマラリア罹患率と死亡率を更に増加させ、アジアにおける現在のマラリア撲滅運動をも危なくする可能性がある。アルテミシニンの部分耐性とACT併用薬耐性の脅威は、WHO等によって世界的にも健康上の重要な課題と認識されている。ALAQ-FDCの導入は、ALAQ-FDCがアルテミシニン耐性や多剤耐性を持つ熱帯熱マラリアを治療・予防するための新たな抗マラリア薬の組み合わせをもたらすという観点から、この課題に対するグローバルな対応の重要な要素と成り得る。

本プロジェクトが革新的である点は何ですか?

熱帯熱マラリアは現在ACTs、つまり2種類の異なる抗マラリア薬の組み合わせにより治療されている。抗マラリア薬耐性の問題が増加している観点から、熱帯熱マラリアの治療にはHIVや結核と同様に現在使用されている薬剤を3種類組み合わせて使用する必要がある可能性がある。本プロジェクトは固定容量の三剤併用ACTを、マラリア蔓延国での導入に向けて試験、準備される初めてのプロジェクトとなる予定である。

各パートナーの役割と責任

Fosun PharmaはALAQ-FDCを開発、製造、商業化すると共に、MMVと協調してWHOの推奨方針及びWHOの資格認定に向けた申請を執り行い、ALAQ-FDCをマラリア蔓延国に於いて利用可能とすることを実現させる。

丸紅はプロジェクト全体の進捗管理を行う。企業の社会的責任という観点から、世界中にのマラリア患者がALAQ-FDC利用できる世界の実現を目指す。

MMVは薬事関連当局や規範作成組織との連携を推進し、WHOの資格認定プロセスの為に必要な薬事及びCMC/技術支援をFosun Pharmaに提供する。

MORUは臨床試験を執り行い、新たなALAQ-FDCのマーケティングポジション確立に向けた実務アクションに深く関与していく。

他(参考文献、引用文献など)

1. マラリアに対するアルテミシニンベースの三剤併用治療-新たなパラダイム?van der Pluijm RW, Amaratunga C, Dhorda M, Dondorp AM. Tredns Parasitol. 2021年1月; 37 (1): 15-24.

2. 合併症のない熱帯熱マラリアに対するアルテミシニンベースの三剤併用治療とアルテミシニンベースの併用療法: 多拠点、非盲検、ランダム化臨床試験。van der Pluijm RW, Tripura R, Hoglund RM, et al. Lancet. 2020年4月25; 395 (10233): 1345-1360.