Investment

プロジェクト

WHO オンコセルカ症撲滅プログラムの支援: 高感度で非常に特異度が高い迅速診断検査を商業化可能な段階まで推進する。
  • 受領年
    2023
  • 投資金額
    ¥66,870,532
  • 病気
    NTD (Onchocerciasis)
  • 対象
    Diagnostic
  • 開発段階
    Product Design
  • パートナー
    株式会社医学生物学研究所 ,  Big Eye Diagnostics, Inc. (BEDx) ,  Drugs and Diagnostics for Tropical Diseases

イントロダクション/背景

イントロダクション

本件で私達は、2,100万人が罹患しており、さらに2億1,800万人が罹患の危険にさらされているオンコセルカ症との戦いを支援するにあたり、WHOが呼びかけた新規の診断検査に対する要求に応えます。WHOは、大規模薬物投与の開始と休止の判断材料となる 2つのターゲットプロダクトプロファイル(TPP)を発行しました。最も厳しいTPP基準は、テストが非常に特異的(99.8%以上)でなければならないということです。

DDTDは、原因となる病原体である回旋糸状虫(Onchocerca volvulus)に特異的な2種の新規抗原から構成される測定系の開発に成功しました。CDCでの検証により、この測定系の感度が89.6%、特異性が100%であることが分かりました。これは、私たちの検査がTPPの感度、特異性の要件の両方を満たしており、注目すべき点は、その特異性95%信頼区間下限であっても >99.8% であることです。これらの傑出したデータを考慮して、USAIDは、2023年に約10,000人を対象にフィールでの測定系の評価するための資金提供を約束しました。私たちは、最初のフィールド評価に対応するため、すでに10,000 のキットを作製しました。

これらの希望が持てる結果をもって、公衆衛生との大きな関連性、および主要な関係者 (TFGH、USAID、CDC、BMGF、WHO) によって得られつつある大きな流れを考慮して、私たちのチームは、テストの製造および迅速な商業化の推進に向け、GHIT Fundと NIH から寛大な資金を獲得できたことに感謝し、うれしく思っています。

 

プロジェクトの目的

私たちは、オンコセルカ症の原因となる病原体である回旋糸状虫への曝露を検出するための迅速診断検査(RDT)を提案します。二重形式で構築された私達の測定系は、2 種のO. volvulus 抗原に特異的な IgG4 抗体を検出します。私達のRDTは、WHOのTPP の両方を満たすのに十分な感度と特異性があり、下限95% CIであっても >99.8%の特異性を備えていることが CDC によって示されました。 GHIT と NIH の資金は、ISO-13485 規格に基づいて重要な生物学的材料をISO-13485グレードでの生産と、キット製造をロースループットのカードツーカード形式からハイスループット製造に適したオープンリール システムに移行するために使用されます。キットの性能は、CDCによって実験室環境で検証されますが、その際にCDCは、以前に別途、締結したDDTDとの共同研究契約を活用して進めます。この契約下ではCDCはGHITから資金を受け取りません。最後にキットの性能はTFGH/USAID で指定されたオンコセルカ症流行国の地域ラボでも検証されます。

目標 1: 重要な試薬(抗原、ポジティブコントロール抗体、抗 IgG4 検出抗体)を作製します。

目標 2: RDT の最適化を完了します(キット間のばらつきを最小限に抑え、テスト結果が得られるまでの時間を短縮します)。

目標 3: 多数の患者検体を使い、実験室環境で最終版の RDT を再検証します。

目標 4: キット製造をカードツーカード システムからオープンリール生産ラインに移行し、移行後も性能が同等(またはそれ以上)であることを実証します。

目標 5: 20,000キットを5ロット分製造し、この撲滅運動に携わる方々に提供します。

 

プロジェクト・デザイン

年間最大100万キットの需要予測を考慮して、

- ISO13485規格に準拠し、生産ロット間のばらつきを最小限に抑えることで、安定した製品品質を保証します。再現可能な製品品質を保証する重要な要素の1つは、キットの生物学的原料、特に2つの O. volvulus 抗原の安定し信頼できる供給源にアクセスできることです。これらは、ISO13485 品質基準に基づいてMBLによって製造されます。MBLはそのうち一つ抗原に対するポジティブコントロール抗体も生産し、その後DDTDはそれを熱安定性を持った製剤とします。最後に、現行の測定系で使用している検出用抗IgG4抗体は製造業者の都合で製造中止となるため、MBL が入ることにより独自の代替供給源を確保したいと考えています。

- 現行の低スループットのカードツーカード生産プロセスを、高スループットで製造に適したオープンリールプロセスに置き換えます。Big Eye Diagnostics (BEDx) は、ロット間の一貫性をしっかりと確保しながら、コストの最小化と速度の最大化を目的とした製造プロセスを確立します。SOPとQCプロトコルは製造環境に合わせて作成および検証され、ロット間の再現性データはISO13485準拠の品質管理システムに記録されます。生産ニーズに応じた規模で5ロット生産し、ロット間の一致度(カッパ値)を決定します。重要な点は、各ロットは異なるバッチの原材料で製造されることで、原材料のバッチ間差が最終製品に影響を与えないということを確証することです。

開発後期の試験としてTPPで定義されている感度と特異度の基準が満たされていることを確認するため、最終段階の候補キットをCDCに送付しますが、この作業はGHITから独立した別の共同研究契約にて進められます。その後、開発したキットを使い、WHOが推奨するオンコセルカ症撲滅にむけたマッピングの道筋に沿って、その達成を加速させることを目標に、主要な関係者全員(CDC/TFGH/USAID/NIH/BMGF/WHO/GHIT)が参加する円卓会議を開催します。キットの性能プロファイルによっては、追加の臨床応用についても検討します。

本プロジェクトによって、グローバルヘルスの課題はどのように解決されますか?

河川盲目症としても知られているオンコセルカ症に対する戦いは薬物の大規模投与(MDA)により進められてきました。WHOはオンコセルカ症の撲滅を支援するため、新規の高感度で非常に特異的な迅速診断検査を必要としています。WHOはMDAプログラムの開始と休止の判断の助けとなる新規の診断検査を緊急に必要としており、2021年にそれに対するTPPを発表しました。これは、そのような検査の開発の緊急性に関してWHOが発することができる最も強力な表示です。

DDTD は、世界保健タスクフォース(TFGH)と USAID による資金提供を礎に、アッセイ ストリップ上の2つの異なるテストラインを配置した2種のO. volvulus抗原から構成されるRDTの開発に成功しました。CDCの独立した評価により、この測定系の感度は 89.6%、特異性は100%であることが分かりました。注目すべきことに、特異性は95%信頼区間下限 であっても >99.8% です。これは、私たちの測定系が少なくともマッピングTPPの感度と特異性の要件を満たしていることを意味しており、おそらくMDA休止 TPPの感度と特異性の要件も満たしていると考えられます。これを考慮して、USAIDはすでに約 10,000人を対象とした現場での測定系評価するための資金提供を約束しています。この研究は今年、TFGHとCDCの支援を受けて地域の厚生省によって実施されます。

この希望が持てる結果、公衆衛生との大きな関連性、および主要な関係者の間ですでに得られている大きな機運を考慮すると、現在、この測定系の大規模製造およびより広範な実地試験に迅速に進める必要があるという共通の緊急性に対する認識が生まれています。GHITの資金提供と、最近の寛大な NIH 助成金を合わせることにより、私たちのチームはこの目標を達成することができるでしょう。

したがって、私達の新しい検査が、2,100万人の感染者と2億1,800万人の感染リスクのある人々を抱えるオンコセルカ症の撲滅に貢献することで、グローバルヘルスにとって非常に重要なアンメットニーズに応えるものであることに敬意をもって提示します。

本プロジェクトが革新的である点は何ですか?

ラテラルフローイムノアッセイ(LFIA)自体は目新しいものではありませんが、迅速診断検査開発の分野で実証済みの技術であり、リソースが少ないフィールドワークの状況に特によく適合しています。そのためWHOはこのアッセイ系を推奨します。 私達のLFIA の分野における当社の革新的な貢献により、リンパ性フィラリア症やブルーリ潰瘍を含む複数の疾患に対してベストインクラスの測定系を提供できるようになりました。このプロジェクトに関連する革新的な貢献は次のとおりです:

- NIHで最近発見された新規のO. volvulusバイオマーカーの使用(機密)。これは、もうよく知られているもう一つのO. volvulusバイオマーカーと並べて新規のバイプレックスアッセイ形式にて使用されます。

- 光学検出のための新しいプラズモンナノ粒子の使用。従来の40nmコロイド金粒子と比較して、テスト感度が2~10倍(測定系による)向上します。

- 独自のテストストリップ構造(機密)により、チェイスバッファーの添加時に検体が最初にテストラインに到達し、その後初めてナノ粒子が放出されるような仕組みとなっているアッセイストリップを実現し、これが感度の向上につながります。

- 独自のカセット設計(機密)。

各パートナーの役割と責任

- Drugs & Diagnostics for Tropical Companies (DDTD) は指定開発パートナーであり、プロジェクト全体とコラボレーション パートナーの管理を行います。DDTDはまた、プロジェクトの調整とタイムリーな実行を確実にし、進捗状況と GHIT Fundへの財務報告に関するガバナンスを提供します。さらに、DDTDはBEDxへのスムーズな技術移管を担当します。プロジェクト中に作成されたすべての実験手順、化学、生化学、生物物理学、および臨床データは、DDTDによってISO-13845規格に基づいて分けてつくられたデータベースに収集されます。

- (株)医学生物学研究所(MBL)は、回旋糸状虫の抗原2種と、これらの抗原のうちの一つに対するポジティブコントロール抗体、および新規の抗IgG4検出抗体の作製・生産を担当します。抗原と抗体は、まず研究開発グレードの品質で少量生産され、次にISO13485グレードの品質でより大きなバッチが生産されます。

- 疾病管理予防センター(CDC)、具体的には寄生虫病・マラリア部門のキム・ウォン博士が、DDTDおよびBEDxによって生成される迅速診断キットの性能(感度と特異度)を独立しバイアスがかからないラボ環境で評価します。評価は、CDCの血漿および血清のコレクションを使用して行われます。こうすることにより、CDCとDDTDは、2022年初頭に別途、締結した共同研究契約書を活用して進めることができます。従って、CDCは本GHIT Fundからの資金は一切受け取りません。

Big Eye Diagnostics, Inc. (BEDx) は、堅牢なハイスループットの製造標準操作手順(SOP)と厳格な品質管理(QC)プロトコルの開発を担当し、これらは5ロットの10,000~40,000個の最終版 RDT デバイスを生産することで検証されます。