Investment

プロジェクト

真菌性マイセトーマ治療薬としてのホスラブコナゾール提供に向けた準備と研究

イントロダクション/背景

イントロダクション

マイセトーマ(菌腫)は、深刻な障害を引き起こす慢性感染症です。利用可能な治療薬は限られており、少し前まで、12ヶ月間、投与してもその効果は低いことが示されていました。安全性に関するデータも限られており、治療に高額な費用もかかるため、治療中断による再発の可能性が高いのが現状でした。

エーザイ株式会社(エーザイ)が爪白癬の治療薬として開発したアゾール系経口抗真菌剤であるホスラブコナゾールは、真菌性のマイセトーマの最も一般的な病原体であるMadurella mycetomatisに対する強力なin vitro活性を有します。Drugs for Neglected Diseases initiative(DNDi)は、エーザイおよびスーダンのマイセトーマ研究センター(MRC)と協働し、スーダンで真菌性マイセトーマの患者様を対象とした初めての無作為化臨床試験を実施しました。最近完了したこの試験により、良好な治癒率が示されました。ホスラブコナゾールは安全性にも問題なく、週一回の投与など、望ましい特性を有しています。

 

プロジェクトの目的

本プロジェクトは、スーダンにおけるホスラブコナゾールの無作為化臨床試験の結果から、真菌性マイセトーマの治療薬としてのホスラブコナゾールの承認、およびアクセスに向けた準備を行うことを目的としています。

1. 承認
目的:承認までの間、スーダンの患者様がホスラブコナゾールを利用できるようにする。

2. アクセスに向けた準備
i. コホート研究
目的:MRCの監督のもとで100名の患者様をホスラブコナゾールで治療し、安全性と治療結果に関する追加データを収集する。

ii. 開発戦略の策定
目的:マイセトーマの開発戦略を策定する。他の蔓延地域(インドやセネガルなど)のニーズと機会を理解するため、現地視察や専門家会議により、単剤、または重度の真菌性マイセトーマを対象とした併用療法の可能性を含む、ホスラブコナゾールの利用に関する次のステップを検討し、計画をまとめる。

 

プロジェクト・デザイン

1. 承認
無作為化臨床試験結果を踏まえ、承認申請に向けた準備が行われる予定です。ホスラブコナゾールは、日本では爪白癬を適応症として承認されています。

2. アクセスに向けた準備
i. コホート研究
治療結果と安全性をモニタリングしながら、ホスラブコナゾールによる治療を、コントロールされた方法条件下で早期に提供するものです。コホート研究に登録された約100名の患者様は、ホスラブコナゾール200mgを週112ヶ月間服用し、治療開始6ヶ月時点で病変部の外科的処置を受けます。

ii. 開発戦略の策定
無作為化臨床試験の事後解析を行います。専門家会議を開催し、試験データや結果の他、他の真菌症で開発された新薬の評価について議論します。インドやセネガルなど、他の重要な蔓延地域を訪問し、現在の治療状況や現地ニーズを把握するとともに、疫学データを収集し、疾病負荷を評価します。

本プロジェクトによって、グローバルヘルスの課題はどのように解決されますか?

マイセトーマは、最も顧みられない熱帯病(NTDs)の一つで、WHONTDsロードマップ2021-2030でもその目標が明記されています。ゆっくりと組織を破壊し重篤な障害を引き起こす感染症で、通常、貧困と関連し、保健医療へのアクセスが限られた農村部の貧困層が罹患します。外観の著しい変形や障害は、偏見や社会的差別につながり、地域や保健医療サービスに大きな影響を与えています。マイセトーマの効果的な制御は、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」、特に2030年までにNTDsやその他の感染症の流行を終わらせることを求めるSDGs目標3.3.を達成するために欠かせません。このプロジェクトは、重要なギャップの解消に取り組み、この痛ましいほどに顧みられない病気で苦しむ患者様のニーズに対応するものです。

本プロジェクトが革新的である点は何ですか?

真菌性マイセトーマの治療法については、最近完了したホスラブコナゾールとイトラコナゾールの試験を除き、無作為化臨床試験で検討された薬剤がないため、これまで共通した見解は得られていませんでした。ホスラブコナゾールは、最近完了した試験で示された良好な結果に加え、週1回の投与、良好な安全性プロファイル、飲食物なしで服用できるなどの利点を有し、真菌性マイセトーマの新たな治療法に関する切実なニーズに応え、大きな改善をもたらすことが期待されています。

各パートナーの役割と責任

DNDiは、プロジェクトの管理および調整に関する全体的な責任を担います。

エーザイとDNDiは協働し、委託した代理人を通じてスーダンの規制当局(NMPB)とホスラブコナゾール承認申請に関する協議を行い、必要な書類を準備します。

DNDiは、MRCと協働でコホート研究を実施し、データ入力および解析を行い、試験報告書を作成します。エーザイは、DNDiがコホート研究でホスラブコナゾールを利用できるよう準備します。

重要な課題や新たなニーズが発生した際は、DNDiとエーザイで協議の上、対応します。