Investment

プロジェクト

AWZ1066Sの第II相臨床開発、低分子抗ボルバキア殺マクロフィラリア候補薬

イントロダクション/背景

1. イントロダクション

リンパ系フィラリア症とオンコセルカ症は寄生虫感染による顧みられない熱帯病であり、世界の 8,600 万人以上に影響を与えています。これらの病気の制圧に向けてグローバル集団投薬プログラムが進行中ですが、成虫の寄生虫を殺す薬が無いことから、病気に苦しむ農村地域において大規模な薬剤投与を何年も実施する必要があります。我々は、寄生虫内のボルバキア共生細菌の排除により成虫を殺虫できることを実証しました。この手法は制圧プログラムの期間を大幅に短縮し、現在は対処できない地域で使用するツールを創出する可能性を秘めています。抗生物質ドキシサイクリンを用いることですでに証明された概念ですが、4~6週間の連日投与を必要とし、治療対象の多数を占める小児や妊婦には使用できません。我々は、ドキシサイクリンよりも迅速かつ効率的に作用し、前臨床試験および第I相臨床試験で安全性が示された新薬候補AWZ1066Sを創出しました。

 

2. プロジェクトの目的

このプロジェクトの目的は、オンコセルカ症に苦しむ患者における有効性を評価する第II相臨床試験を完了することにより、この薬剤候補の開発をさらに継続することです。これは、新薬の開発に不可欠なステップであり、これらの疾患の新規治療法の実現をめざします。

 

3. プロジェクト・デザイン

プロジェクトには以下が含まれます。

・臨床試験開始前の重要な前臨床安全性試験の完了

・臨床試験プロトコルの完成と登録

・新薬のライセンスに関する国際的な要件に沿った第II相臨床試験の完了

 

4. 全てのパートナーそれぞれがプロジェクトにおいて果たす役割

リバプール熱帯医学校 (LSTM) は、研究代表機関としてプロジェクト全体の管理を担当し、第 II 相臨床試験のスポンサーになります。また、全てのパートナーおよび資金提供者である GHIT と連携します。

エーザイは、業界標準の前臨床および臨床開発の専門知識を提供し、臨床試験用の薬剤製造を行います。薬事・臨床戦略においてLSTMと協力します。

リバプール大学(UoL)は、前臨床研究、放射性標識合成、合成ルート最適化戦略の監視と調整を支援します。

ブエア大学は、ボン大学病院(UKB)と共同で、治験実施施設の選択、コミュニティの意識向上、患者の募集、治療の割り当て、有害事象の報告と管理、追跡調査のサンプリング活動と主要評価項目分析を担当します。

UKBは、パートナーと協力して第 II 相臨床試験を実施します。治験実施施設の選択などについてブエア大学と協力します。パートナーと協力して試験結果分析を実施します。

本プロジェクトによって、グローバルヘルスの課題はどのように解決されますか?

寄生虫感染症は熱帯地域の公衆衛生における深刻な問題であり、制圧するためのグローバルプログラムが開発されてきました。既存薬は主に幼虫のみに作用し、長寿命の寄生虫の伝染サイクルを遮断するには持続的かつ長期的な薬剤供給が必要です。アクセス困難な17カ国では、世界でのリンパ系フィラリア症の制圧プログラム開始後22年を経た今も集団投薬を実施できていません。既存薬への耐性が増加し、類似の感染症の流行地域では安全性の課題があることから、成虫を殺す安全な新薬が求められています。今回の手法では寄生虫内の共生細菌を殺菌することで成虫が死滅し、高い治療成績と疾患の進行抑制という利点があります。ドキシサイクリンを用いた殺虫治療が実証済みですが、長期間の薬剤供給と子供および妊婦への禁忌によって使用が制約されます。上記障壁を克服した新薬として、AWZ1066Sはこれらの疾患に苦しむ人々に大きく貢献すると期待されます。

本プロジェクトが革新的である点は何ですか?

寄生虫内の必須のボルバキア細菌を標的とすることによって寄生虫を殺すアプローチは、大変ユニークであり、寄生虫を直接標的とする薬剤よりも多くの利点が有ります。概念実証の臨床試験では、この代替アプローチが有効であり、排除期間を大幅に短縮できることが示されています。我々の薬剤候補は、子供や妊婦を含む全人口に使用出来る可能性も秘めています。

他(参考文献、引用文献など)

Johnston KL, Hong WD, Turner JD, O'Neill PM, Ward SA, Taylor MJ. (2021) Anti-Wolbachia drugs for filariasis. Trends in Parasitology. S1471-4922(21)00143-4.

 

Hong WD, Benayoud F, Nixon GL, Ford L, Johnston KL, Clare RH, Cassidy A, Cook DAN, Siu A, Shiotani M, Webborn PJH, Kavanagh S, Aljayyoussi G, Murphy E, Steven A, Archer J, Struever D, Frohberger SJ, Ehrens A, Hübner MP, Hoerauf A, Roberts AP, Hubbard ATM, Tate EW, Serwa RA, Leung SC, Qie L, Berry NG, Gusovsky F, Hemingway J, Turner JD, Taylor MJ, Ward SA, O'Neill PM. AWZ1066S, a highly specific anti-Wolbachia drug candidate for a short-course treatment of filariasis. Proc Natl Acad Sci U S A. 2019 Jan 22;116(4):1414-1419.

 

https://cen.acs.org/biological-chemistry/infectious-disease/Developing-rapid-attack-against-parasitic/97/i2