Investment

プロジェクト

熱帯熱マラリアを予防するモノクローナル抗体の前臨床開発
  • 受領年
    2021
  • 投資金額
    ¥538,661,663
  • 病気
    Malaria
  • 対象
    Drug
  • 開発段階
    Lead Optimization
  • パートナー
    愛媛大学, エーザイ株式会社, グラクソ・スミスクライン株式会社, PATH

イントロダクション/背景

1. イントロダクション                                                                           

2021年10月、WHOは世界初のRTS,Sマラリアワクチン(RTS,S)を流行地の小児への予防接種として推奨した。これによりマラリア患者と死者の大幅な減少が予想されるが、撲滅に向けては新しい対処法の開発が必要である。RTS,Sは、熱帯熱マラリア原虫のCSタンパク質(CSP)のアミノ酸リピート領域に対して高力価の抗体を誘導して効果を発揮する。従って、RTS,Sを接種されたヒト血中から防御効果の高いモノクローナル抗体(mAb)が得られれば、マラリア対策のツールとなりうる。本プロジェクトは、マラリア予防のための強力な抗CSP mAbを分離・開発することを目的としており、RTS,S接種後に熱帯熱マラリア感染試験(CHMI)で防御された方から多くの抗CSP mAbが得られたため可能となる。様々な方法で、効果及び血中安定性の高いmAbを4種類選択しており、さらに安全性を評価後に、最終候補とした1種のmAbを、マラリア予防抗体医薬品として前臨床開発および臨床開発を進める。

 

2. プロジェクトの目的                                                                            

本プロジェクトでは、CHMIを含むproof-of-concept臨床試験実施に必要なIND申請書類を作成するための前臨床開発を、以下の4項目で実施する。また長期目標として、サハラ以南の季節性マラリア流行地に住む小児と妊婦を熱帯熱マラリアから守るmAbについて、WHOの政策提言と資金を担保することである。 1)リードmAbを作成用細胞バンクの作製とマウスマラリアモデルを用いたリードmAbの効果の実証 2)プロセス開発の完了とGLP毒性試験に適したリードmAbの生産 3)米国FDAとのpre-IND会議を実施 4)マラリア予防mAbの商品価格の予備的検討の実施、総合的商品開発政策計画の立案

 

3. プロジェクト・デザイン                                                                            

本プロジェクトは、1)候補mAbsの同定、2)リード抗体の有効性と血中安定性の改良、3)ヒト組織、膜タンパク質への交叉反応性の検証、4)マウスモデルでの薬物動態と防御効果の検証、5)細胞株の樹立、6)製造工程の基盤整備、などの先行研究の成果の上に構築されている。 本プロジェクトでは、最初にmAbを分泌するプレマスター細胞バンクを作製する。mAbの生産工程を至適化し、GLP毒性試験や将来の臨床試験に備える。さらに、皮下注射のために高濃度でmAbの安定性が確保できる製剤開発を行う。生産したmAbの防御効果をマウスモデルで確認する。 米国FDAとのpre-IND会議を実施する。GLP毒性試験でmAbの反復投与による毒性と組織への交叉反応性を検証する。同時に、生産方法や製品形態による商品価格を検討し、マラリア予防法としてのmAbの競合分析を行う。最後に、臨床・規制・生産・国際保健における政策方針を盛り込んだ総合的商品開発政策計画を作成する。

本プロジェクトによって、グローバルヘルスの課題はどのように解決されますか?

2020年には、マラリア患者は2.41億人、死者は62.7万人にのぼり、新規マラリア対策ツールの開発は喫緊の課題である。季節性マラリア予防投薬(SMC)は、サヘル地域の小児に対して有効性が高い(〜80%)。しかし、毎月の投薬は容易でなく、アフリカ東部や南部の薬剤耐性マラリアの出現や妊婦へ使用できないことからその効果は限られている。第一世代のマラリアワクチンRTS,Sは、サハラ以南のアフリカにおける中・高度流行地の小児に接種した場合、公衆衛生上非常に有用な対策になると期待されている。しかし、RTS,Sは4回の接種が必要であり、マイルドな効果にとどまり、比較的早く効果の減弱が生じる。一方、本プロジェクトで作られるmAbは、たった1度の投与で流行期間中どんな熱帯熱マラリア原虫株に対しても高い有効性が維持され、SMCやRTS,Sの限界を突破できる可能性がある。

本プロジェクトが革新的である点は何ですか?

革新的な第1の点は、RTS,S接種後にCHMIに対して感染防御されたボランティアからCSP特異的な抗体が得られることである。RTS,Sの防御エピトープであるCSPの免疫優性に一致して、我々が保有する形質芽球は、高い割合でCSリピートに特異的な認識配列を有している。この焦点を絞ったアプローチは、他の、irradiated sporozoite免疫や、自然感染者からCS抗体を入手するアプローチよりも優れている。

第2は、「到達点」を念頭に置いた「line of sight」アプローチを導入し、マラリア対策のツールとしてのmAbの商品価格分析と総合的商品開発政策計画を策定する点である。これは、費用対効果とコミュニティへの高い受け入れを達成するために重要であり、またTPPにも反映させる。

最後に、本プロジェクトは、グローバルヘルスに貢献する経験豊富なトップクラスのコンソーシアムによって実施される。

各パートナーの役割と責任

PATHは、研究代表者として本プロジェクトに責任を持つ。PATHはINDホルダーとして、米国FDA等への申請、GLP毒性試験の契約、商品価格調査、および総合的商品開発政策計画の作成を担当する。

GSKは、mAbの有効性、血中半減期、プレマスター細胞バンクとしての細胞株の樹立への開発可能性等を評価し、リードmAbを同定する。また、GSKはmAbの防御効果を評価するためのマウス感染モデル実験を実施する。

エーザイはIND取得可能なGLP毒性試験に適したmAb製造工程の最適化とプロセス開発を担当する。さらに、mAb高濃度製剤の安定性確保のための製剤開発を行う。

愛媛大学は、mAb製品の出荷試験の一部となるmAbのリガンド結合アッセイの開発と実施を担当する。