Investment

プロジェクト

シャーガス病の治療のためのクルーズトリパノソーマホスホジエステラーゼの標的検証とAIに基づく阻害剤の同定
  • 受領年
    2020
  • 投資金額
    ¥71,007,750
  • 病気
    NTD(Chagas disease)
  • 対象
    Drug
  • 開発段階
    Target Identification
  • パートナー
    エーザイ株式会社 ,  ラ・プラタ国立大学

イントロダクション/背景

イントロダクション

シャーガス病の新しい治療法の開発が急務です。既存の薬物療法は慢性感染症に対する有効性に欠け、長期のレジメンを必要とし、いくつかの副作用があります。トリパノソーマのシグナル伝達における不可欠な役割とヒトの対応分子との低い相同性から、ホスホジエステラーゼ(PDE)はシャーガス病の薬物標的として位置づけられています。同定された標的の少なさと新しい作用機序を持つ薬剤の必須性を考慮すると、これらの酵素は、阻害剤の効率的な同定と開発に非常に有用だと考えられます。 

 

プロジェクトの目的

このプロジェクトは、PDEをシャーガス病に対する薬物標的として検証し、計算化学で強化されたスクリーニングカスケードを使用して、選択的阻害剤を特定することを目的としています。 

 

プロジェクト・デザイン

リパーパシングの機会に焦点を当てることにより、臨床試験に迅速に進むことができ、医薬品開発を加速することができます。これらは、エーザイの化合物ライブラリからの新しい化学物質のスクリーニングにより補完することができます。機械学習に基づいたバーチャルスクリーニングで特定された候補阻害剤は、実験的にプロファイリングされ、有望な化合物が動物実験に進みます。 

本プロジェクトによって、グローバルヘルスの課題はどのように解決されますか?

約700万人が罹患しているシャーガス病の新しい治療法の開発が急務です。現在承認されている2つの薬剤、ベンズニダゾールとニフルチモックスは、50年以上前に発見されました。これらの薬物療法は、長い治療コース(60〜90日)を必要とし、副作用を引き起こし、多くの場合、治療が中止されます。さらに、既存の薬剤はシャーガス病の死亡率と罹患率の大部分の原因である慢性感染症に対する有効性が不十分です。CYP51阻害剤のポサコナゾールとフォスラブコナゾールの最近の臨床試験の失敗により、開発中の新薬がますます不足しています。

このプロジェクトは、新しいシャーガス病治療薬の目標となる製品プロファイルを達成する可能性のある新しい化合物を効率的に開発することにより、この差し迫った必要性に対処することを目指しています。 

本プロジェクトが革新的である点は何ですか?

このプロジェクトでは、シャーガス病の新規治療の緊急の需要に対応するための3つの重要な要素に取り組みます。

まず、薬物標的の確実な検証を行います。シャーガス病に対する有効な薬物標的が欠如していますが、いくつかの証拠からトリパノソーマの必須タンパク質としてホスホジエステラーゼ(PDE)が指摘されています。ここでは、CRISPR/Cas9技術を使用して、3つのPDE酵素を薬物標的として確実に評価します。

第二に、創薬のために進歩した人工知能を利用します。高い予測能力を備えた機械学習モデルは、大規模な化合物コレクションをインシリコで迅速にスクリーニングし、優先順位を付けることができます。我々は、高度な機械学習ツールを採用し、選択的にPDE阻害剤の化学スペースを効率的に検索します。

第三に、医薬品開発を促進するためにリパーパシングアプローチを行います。ヒトの安全性プロファイルが知られている化合物の利用は、医薬品開発における時間とリスクを削減するための実証された戦略です。リパーパシングライブラリのスクリーニングは、フェーズIIに迅速に進む可能性のある化合物を特定することに焦点を当てます。補足研究として、エーザイの化合物ライブラリから、新しい殺トリパノソーマ構造をスクリーニングします。

共同チームの革新的なアプローチにより、製薬会社と流行国の学術研究者の間の人工知能、実験的スクリーニング機能、及び医薬品開発の専門知識の相乗効果を発揮できます。 

各パートナーの役割と責任

エーザイがプロジェクトリーダーとなり、全体的な管理を担当します。また、機械学習機能を開発してトリパノソーマ PDEに適用し、自社化合物ライブラリに対するスクリーニングを行います。さらに、リパーパシング候補化合物の評価のためのPKおよび安全性の専門知識を提供し、医薬品化学活動を主導します。

UNLPでは、タレビ教授のグループが、リガンドベースの機械学習モデルの開発とリパーパシングライブラリのスクリーニングを行い、分子ドッキングシミュレーションを実施します。また、CRISPR/Cas9を使用してPDEのターゲット検証研究、生化学的及び細胞アッセイ、シャーガス病マウスモデルのin vivo試験を監督します。UNLPは、シャーガス病が流行している国での調査者としての経験に基づいた知識を提供します。

最終報告書

1.プロジェクトの目的

本プロジェクトは、シャーガス病に対する薬物標的としてホスホジエステラーゼ(PDE)を検証し、計算化学で強化されたスクリーニングカスケードを使用して選択的阻害剤を創出することを目的としています。

 

2.プロジェクト・デザイン

シャーガス病に対する適切な薬剤標的としてのPDEであることを遺伝子ノックアウト法により確認しました。これは、Cas9を発現する寄生虫株を作製した後、3つのPDE遺伝子を標的とするsgRNAをトランスフェクションすることによって実施しました。臨床試験への迅速な移行を可能にするリパーパシングに焦点を当て、エーザイの化合物ライブラリーから新たな化学物質をスクリーニングすることで医薬品開発の加速化を図りました。機械学習に基づいたバーチャルスクリーニングで特定した候補阻害剤は、実験的にプロファイリングされ、有望な化合物の動物実験を行いました。

 

3.プロジェクトの結果及び考察

まず、薬剤ターゲットとなりうる候補(遺伝子)ファミリーの検証を行いました。シャーガス病に対する有効な薬剤標的はないため、標的候補の徹底的な探索が不可欠です。本プロジェクトでは、CRISPR/Cas9技術を用いて、3つのPDE酵素を薬剤標的候補として遺伝学的に評価しました。

また、本プロジェクトは創薬のための人工知能の進歩も活用しました。高い予測能力を持つ機械学習モデルは、大規模な化合物コレクションをコンピューターにより迅速にスクリーニングし、化合物の優先順位を決定することができます。エーザイとUNLPは、本プロジェクトで機械学習モデルを活用し、費用対効果の高い方法で選択的PDE阻害剤のケミカルスペースを効率的に探索することに成功しました。

最後に、医薬品開発を迅速化するために、リパーパシング・アプローチを採用しました。ヒトでの安全性プロファイルが既知で、承認済みまたは保存されている化合物の再利用は、医薬品開発における時間とリスクを削減するための実績ある戦略です。そこで、本プロジェクトにおいては、リパーパシング・ライブラリーに焦点を当てスクリーニングを行い、フェーズⅡの概念実証試験に迅速に移行できる可能性のある化合物を同定しました。エーザイの化学物ライブラリーを用いて、新規殺トリパノソーマ構造をスクリーニングし、補完しました。これらのスクリーニングから得られた有望な化合物は、シャーガス病治療薬としての可能性を検証する実験的スクリーニングカスケードで評価されました。

本共同研究チームの革新的なアプローチは、人工知能、実験的スクリーニング能力、製薬会社とシャーガス病蔓延国の学術研究者との医薬品開発の専門知識の相乗効果を活用したものです。