Investment

プロジェクト

新規結核ワクチンとしての組み換えヒトパラインフルエンザ2型ウイルス・ベクターの開発
Project Completed
Please click to see the final report.
  • 受領年
    2013
  • 投資金額
    ¥70,000,000
  • 病気
    Tuberculosis
  • 対象
    Vaccine
  • 開発段階
    Lead Optimization
  • パートナー
    国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所, Aeras

イントロダクション/背景

結核菌は空気感染し、呼吸器から身体に入り、通常、肺結核を起こします。肺結核は感染の拡大への貯蔵庫になります。一人の活動性結核患者は、咳やくしゃみや話すことで、15人もの人々に結核菌を広げます。結核は世界の人々の健康への脅威です。現在使われている結核ワクチンであるBCGは90年前に開発されました。BCGは小児の重症な結核の予防には有効ですが、若者や成人の肺結核には効果が限られています。肺結核は、世界の結核のほとんどを占めます。


毎年、新たに約860万人が結核を発病し、約130万人が結核で亡くなります。薬剤耐性結核の蔓延や結核とエイズの重複感染は、対策を一層複雑にしています。全く薬の効かない結核も発見される数が徐々に増えつつあり、人々の健康への新たなそして増大する危機の到来を告げています。
世界中で結核ワクチンの研究開発が精力的に行われていますが、まだ臨床試験で明確な有効性を示したワクチンは出てきていません。結核の深刻な状況や薬剤耐性結核の蔓延を目の前にして、この感染症から人々を守るには、期待できる新しいワクチン候補の開発を進めることが緊急に必要です。

本プロジェクトによって、グローバルヘルスの課題はどのように解決されますか?

WHOの統計によれば、結核の罹患率は、世界的には、減少傾向にあります。しかし減少の度合いは極めて遅く、現在使える手段だけでは、結核をゼロにするにはあと千年かかるでしょう。さらに、いくつかの高蔓延国では、結核の罹患率は、現実に上昇しています。また、HIVとの重複感染と薬剤耐性結核の増大は、事態をより深刻化し、対策を複雑化させています。この複雑で多面的な世界的感染症に立ち向かうために、私達は、診断やワクチン開発における最新の科学的進展を含め、新しい手段を必要としています。

 

医薬基盤研究所・霊長類医科学研究センター長の保富教授は、結核抗原Ag85Bを発現する組み換えヒトパラインフルエンザ2型ウイルスをベクターとするワクチン候補が、マウスでBCGよりも結核防御に有効であることを明らかにしました。このrhPIV2ベクターは、若者や成人の肺結核の予防に有効であるワクチン候補であることが期待されています。また、小児への使用にも安全であると予測しています。我々のパートナーシップのゴールは、このワクチン候補を実用化することです。これを開発し、市場に出すことができれば、世界の健康問題の劇的な改善、特に発展途上国の人々の健康の改善と経済発展をもたらすでしょう。

本プロジェクトが革新的である点は何ですか?

新しい効果的な結核ワクチンを開発するために、世界的に多大な努力が払われています。現在研究開発中の結核ワクチンには、組み換えBCG、弱毒化結核菌、ワクシニヤウイルスやアデノウイルスなどのウイルスをベクターとするもの、アジュバントを利用した組換え体の精製蛋白などがあります。しかしながら、強固な粘膜免疫の誘導を基本とする臨床試験段階のワクチン候補はありません。私達は、まさにそのようなワクチン候補の開発を提案するものです。


rhPIV2候補ワクチンは、経鼻接種後に粘膜免疫を誘導することを示しています。同時に全身性免疫も誘導する能力があります。さらに、前もってこのウイルスへの抗体を保有していたとしても、経鼻接種した時に、感染防御効果に影響がないことも示されています。また、このウイルスはヒトに感染するものの、毒性は極めて低い上に、ウイルスの複製に必要な遺伝子を除去することで安全性が強化されています。このように、この候補ワクチンは、的確に粘膜免疫を誘導することで肺結核防御への期待を抱かせる点で、他に例を見ないものであると言えるでしょう。本プロジェクトを通して、このような粘膜ワクチンのコンセプトをテストして行きます。

最終報告書

1. プロジェクトの目的

このプロジェクトの目的は、若人及び成人が結核にかかることを予防するため、組換えヒトパラインフルエンザ2型ウイルスベクター・ワクチンの開発を図るものである。このワクチン候補は、HIV陽性を含む乳幼児の結核予防にも期待できる。

 

2. プロジェクトのデザイン

このワクチン候補は、軽鼻接種後に粘膜免疫を誘導することが示されている。また、全身免疫の誘導も可能である。 このワクチン候補は、BCG接種後のブースターとして機能すると期待されている。さらに宿主がこのウイルスへの抗体を有していても、ワクチン効果に影響はないと思われる。それ故、我々は、臨床前動物試験で豊富なデータを収集し、最適な組換えヒトパラインフルエンザ2型ウイルス結核ワクチン候補を確立する。

 

3.プロジェクトの結果及び考察

BCGを接種したマウスにブースターとして結核抗原を組み入れた野生型のヒトパラインフルエンザ2型ウイルス(HPIV2)を接種したマウスが、BCG単独接種のマウスに比べて結核予防効果が増強されていることが確認された。 インターフェロンガンマ産生によるELISPOT解析により、結核抗原を組み入れたHPIV2の免疫原性が、先行して野生型のHPIV2に感染していても影響を受けないことが示された。 HPIV2は、マウスの細胞では複製能力がない。本ウイルスは、ヒトやマカク属のサルでは複製可能である。したがって、最適な複製能力のないワクチン候補を開発するためには、マウスではこのことの確認が不可能である。そのことから、我々は、マカク属のサルを用いて、複数の結核抗原を組み込みかつ複製能力を取り除いたHPIV2の効果を評価する実験へと進んでいくことを計画している。 2014年10月現在においては、結核抗原を組み込みかつ複製能力を取り除いたHPIV2の生産性がマカク属のサルの実験に必要充分なレベルには達していなかった。このためウイルス生産性の最適化を進めているところである。