Investment

プロジェクト

シャーガス病治療薬創出のためのリード化合物の最適化

イントロダクション/背景

イントロダクション

シャーガス病(別名:アメリカトリパノソーマ病)はクルーズトリパノソーマという寄生原虫がサシガメという昆虫の媒介により動物やヒトに感染して引き起こされる病気で、放置すると死に至る可能性もあります。流行地はラテンアメリカで感染者は世界中で600~700万人と推定されていますが、ワクチンや副作用の少ない治療薬はなく、新薬の開発が求められています。Drugs for Neglected Diseases initiative(以下、DNDi)と第一三共株式会社(以下、第一三共)は2016年からシャーガス病患者に対してより安全で効果的な治療を提供することを目指して経口投与可能なまったく新しい薬の開発に取り組んでいます。

 

プロジェクトの目的

本プロジェクトはHit-to-Lead研究で選定したフタラジン系化合物を有望なリード化合物として最適化を実施し、2022年第1四半期までに前臨床試験に進むために必要なプロファイル(Target Candidate Profile: TCP)を満たすシャーガス病に有効な候補化合物を見出すことを目的としています。また、フタラジン系化合物の作用メカニズムの解明も目指します。

 

プロジェクト・デザイン

プロジェクトチームはフタラジン系化合物の研究開発に対応するために評価カスケードを策定し、各評価項目に明確な達成基準を設けています。基本的に新たにデザイン・合成された化合物のうち、in vitroで適切な抗寄生虫活性、選択性、代謝安定性を有する化合物は体内動態試験を実施します。十分な血中曝露を達成した化合物は急性感染モデルで寄生虫除去能力を評価し、投薬終了時に検出不可能なレベルまで寄生虫除去効果を示す化合物を選抜します。選抜された化合物で初期安全性の評価基準を満たす化合物を慢性感染モデルで評価し、持続的に寄生虫を除去可能な化合物を選抜します。この段階まで進んだ化合物については安全性評価や化合物の特性を見極める評価を実施します。化合物の合成と種々の評価を繰り返して化合物に改良を加え、DNDiの定義したTCPを満たす前臨床候補化合物の創出を目指します。

本プロジェクトによって、グローバルヘルスの課題はどのように解決されますか?

シャーガス病は主にラテンアメリカの21カ国で見られる風土病で、世界中で約7000万人が感染リスクに晒され、約600万人の感染者がおり、毎年約1.2万人が死亡すると推定されています。汎米保健機構(PAHO)の報告では出産年齢(15〜44歳)の約180万人の女性が感染し、アメリカ大陸地域では毎年1.4万人の先天性シャーガス感染が発生しています。ラテンアメリカからの移民増加により先進国(オーストラリア、カナダ、日本、スペイン、米国など)でも感染が拡大しています。現治療法は40年以上前のものであり、長期投薬が必要で重い副作用を引き起こします。また、シャーガス病制御の大きな課題の一つは感染者の多くが無自覚で治療を受けていないことです。

本プロジェクトはこれらの課題に取り組み、慢性シャーガス病患者に安全で経口投与可能な治療の提供を目的としています。急性シャーガス病患者にも有効で、妊婦に適用可能な薬剤の創出につながることを期待しています。

本プロジェクトが革新的である点は何ですか?

現在シャーガス病の治療に利用できる薬剤はベンズニダゾールとニフルチモックスの2つですが、これら薬剤は副作用発生頻度(治療を受けた患者の最大40%で発生)、禁忌(妊婦や腎臓・肝臓疾患患者、神経疾患・精神疾患の既往がある患者)、投薬期間、疾患慢性期での治療効果不足などの実質的な制約があり、安全で効果的な新薬候補化合物が求められています。初期共同研究で選定されたフタラジン系化合物はin vitroおよびin vivoで優れた抗寄生虫活性を示し、既存薬とは異なる作用機序であることが示唆されています。リード最適化研究や臨床研究の段階にある新たな化合物は少なく、本プロジェクトはシャーガス病治療薬パイプラインの充実に貢献することが期待されます。また、フタラジン系化合物の作用機序を解明することにより、シャーガス病の治療および創薬研究に新たな知見を提供できると考えています。

各パートナーの役割と責任

第一三共とDNDiはシャーガス病治療の新規候補化合物を提供するために共同して本プロジェクトを推進します。第一三共は、その創薬研究基盤を活用して新規化合物をデザイン・合成するとともに、それら化合物の物理化学的評価、体内動態評価、初期安全性評価を行い、前臨床評価候補化合物の創出を図ります。DNDiはシャーガス病創薬に関する専門知識や戦略的な助言を提供するとともに、DNDiの協力研究機関でin vitro やin vivoでの抗原虫活性の評価や作用機序解析を含む様々な評価を行います。

協力研究機関:韓国パスツール研究所(韓国)、ダンディー大学(英国)、アントワープ大学微生物学・寄生虫学・衛生学研究所(ベルギー)、グリフィス大学グリフィス創薬研究所(オーストラリア)、ロンドン大学衛生・熱帯医学大学院(イギリス)、スイス熱帯公衆衛生研究所(スイス)