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受領年2019
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投資金額¥95,315,987病気Tuberculosis対象Drug開発段階Lead Identificationパートナー中外製薬株式会社 , The Global Alliance for TB Drug Development過去の案件
イントロダクション/背景
イントロダクション
中外製薬とTBアライアンスは、GHIT FUNDのサポートを受け共同プログラムを行っています。 その結果、これまでの結核薬開発パイプラインには前例のないある種の天然物が、結核菌(M.tb)に対して強力な活性を持つことを発見し、医薬品開発に向けた次の段階で開発可能性を調べて参ります。
プロジェクトの目的
このプロジェクトの主な目的は、結核の原因菌であるM.tbに対する天然物スクリーニングで発見した化合物を開発することです。すなわち、M.tbに対する化合物の薬効を改善するだけでなく、薬物動態特性と安全性面も改善して、動物モデルで薬効の活性を確認することが含まれます。 2年間のプロジェクト終わりには、リード最適化と呼ばれる次の開発フェーズに移行できる化合物を同定することを目指します。
プロジェクト・デザイン
本プロジェクトヒット化合物は、発酵プロセスを通じて微生物によって生産された天然物から発見されました。次のステップでは、発酵プロセスの代わりに、合成化学を使用して、比較的短時間に多数の誘導体を合成する予定です。新たな誘導体は、薬効、代謝特性、安全性、そして最終的にはマウス病態モデルでの薬効を試験します。これらのヒット化合物のM.tbに対する抗菌作用の機序は検討中であり、これが解明されれば、標的物質の構造を考慮して新たなアナログの設計が可能となります。
本プロジェクトによって、グローバルヘルスの課題はどのように解決されますか?
世界保健機関の最新のデータによると、2018年には推定1,000万人もの人が新規の結核患者となりました。薬物感受性の結核を治すことができる薬物はいくつかありますが、患者は6か月以上毎日治療を受けなければなりません。この並外れた治療期間は、患者のコンプライアンスを低下させ、薬剤耐性結核の出現に繋がる可能性があります。また、2018年には、約50万人の薬物耐性結核患者が生じています。耐性菌と闘うため、また、薬剤感受性株を持つ患者の治療期間を短縮するためには、新薬が必要です。このプロジェクトで得られたヒット化合物は、これまでのテストでは耐性株に対しても有効です。開発がうまくいけば、新たな治療選択肢として、これまでにない結核治療のレジメを医療提供者に提供できる可能性があります。
本プロジェクトが革新的である点は何ですか?
歴史的には抗生物質の豊富な供給源である天然物に焦点を当てることにより、ヒット化合物を同定しました。天然物のスクリーニングは、パラレル合成とターゲットベースのスクリーニングの台頭により、近年あまり重要視されていませんが、天然物に立ち戻り、同時に最先端の合成技術を適用することにより、2つのアプローチのメリットを組み合わせることができると考えています。得られたヒット化合物は、これまでのデータによると新しい作用機構ではないかと予想されています。化合物の標的物質が特定されれば、新しいアナログの設計と分析に計算アプローチを使用する計画です。
各パートナーの役割と責任
中外製薬の研究チームは、多種多様な医薬品開発で培った専門知識や経験を提供します。また、新たなアナログ設計や安全性に関わる評価系の選択に貢献します。 TBアライアンスの研究チームは、天然物化学と結核固有の生物学的研究のデザインに関する専門知識を提供します。 2つのチームは、頻繁な電話会議と対面の会議でコミュニケーションを取ります。化合物合成は臨床研究機関によって実施され、主な生物学的研究はシカゴのイリノイ大学等で実施されます。中外製薬とTBアライアンスの研究チームは、双方の産業界ならびにアカデミアとの接点を活用しつつ、ヒット化合物の開発を加速します。
最終報告書
1. プロジェクトの目的
GHITの支援を受け、中外製薬提供の天然物から結核の原因菌(Mycobacterium tuberculosis, M.tb)に効果を示す、これまでの結核薬とは異なる構造、特性を持ったHit化合物を発見しました。そこで、このHit化合物が新しい結核薬のリード化合物となるかを探索しました。
2. プロジェクト・デザイン
Hit化合物は抗M.tb薬として新しい構造をしていましたが、誘導体も含め全合成を行い、構造と活性の関係性を明らかにするとともに、薬物代謝と毒性を評価しました。良い誘導体が得られたら動物モデルでの評価を計画しました。併せて、どの様にM.tbに対し作用するのか作用機序解明も試みました。
3. プロジェクトの結果及び考察
Hit化合物は複雑な構造を持っていましたが、効果的な合成経路を確立することができ、2年間でおよそ80の誘導体を合成しました。In vitro試験では、Hit化合物よりも強い抗菌活性をもつ化合物を幾つか得ることが出来ましたが、代謝を受けやすくin vivo試験で十分に作用を発揮するには安定性を改善する必要があることが解りました。そこで代謝安定な誘導体合成に焦点をしぼり、様々な構造変換を試みましたが、残念ながら、良い誘導体を得るには至りませんでした。また作用機序については、従来の結核薬とは異なる様式で抗M.tb作用を示す結果が得られましたが、まだ、完全には解明されていません。合成の難易度が高く、合成経路の確立や誘導体合成に時間が掛かったため、提供された期間と費用では、十分な種類の誘導体を評価することができませんでした。研究を継続するには、さらに多くの時間と費用が必要となることが見込まれたことから、研究中止の判断に至りました。
Investment
プロジェクト
表現型スクリーニングで得られたヒット化合物からリード化合物への開発