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受領年2018
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投資金額¥93,057,133病気Malaria対象Vaccine開発段階Lead Optimizationパートナー愛媛大学 , iBET , 欧州ワクチンイニシアチブ(EVI)論文
イントロダクション/背景
イントロダクション
マラリアは患者ならびに死亡者数も依然として甚大で、グローバルヘルスにおける重要疾患の一つとなっている。また、これまでのマラリア対策も、薬剤耐性マラリアや殺虫剤耐性ハマダラカの出現により困難に直面している。そこで、新たな対策としてマラリアワクチンの開発が国際的に進められてきた。しかし、最も開発が進んでいる第一世代マラリアワクチン(Mosquirix)の効果は十分とは言えず、より有効な次世代マラリアワクチンが切望されている。そこで本プロジェクトでは、新規赤血球期マラリアワクチンの開発を進めることとした。このワクチンが実用化されれば、Mosquirixに追加することによって、マラリア原虫の発育を多段階で止めることのできる次世代マラリアワクチンの開発につながることが期待できる。
プロジェクトの目的
このプロジェクトでは、愛媛大学が大日本住友製薬株式会社との共同研究で発見したPfRipr5と呼ばれる熱帯熱マラリア原虫のタンパク質を、新規赤血球期マラリアワクチンとして開発を進めることを目的とする。先ず、臨床試験用のタンパク質が合成可能なタンパク質発現システムを用いてPfRipr5を合成する。次に、合成したPfRipir5タンパク質を、既にヒトに投与されている2種類のアジュバント(免疫増強剤)を用いて製剤化し、動物に投与して効果を判定し、最適のワクチン候補を決定する。
プロジェクト・デザイン
1)臨床試験用のタンパク質を大量合成することのできるタンパク質発現システムの内、昆虫細胞と哺乳類細胞の2種類を用いてPfRipr5を合成し、高品質なPfRipr5タンパク質が大量に合成できる発現システムを選択する。
2)合成したPfRipir5タンパク質を、既にヒトに投与されている2種類のアジュバント(免疫増強剤)を用いて製剤化する。
3)このワクチン製剤を実験動物に投与して免疫後の血清を採取する。この血清中の抗体価を測定し免疫原性を評価する。次に、この抗体を培養熱帯熱マラリア原虫に添加して、マラリア原虫の増殖阻害活性を測定しワクチン効果を判定する。これらの結果から、次のステップとなる前臨床試験に進む最適のワクチン候補を決定する。
本プロジェクトによって、グローバルヘルスの課題はどのように解決されますか?
マラリアは、アフリカおよび熱帯・亜熱帯のアジアやアメリカ大陸において、依然として非常に重要なグローバルヘルス課題である。さらに、これまでのマラリア対策によって患者数は減少傾向にあったが、近年減少が鈍化している。現在、マラリア撲滅が目標に掲げられたが、そのためには最も費用対効果が高く簡便に接種出来るマラリアワクチンの実用化抜きにはこの目標の達成は困難である。したがって、より有効な次世代マラリアワクチンの開発を目指す本プロジェクトは、これからのマラリア撲滅を目指したマラリア対策の強化に大きく貢献できる。
本プロジェクトが革新的である点は何ですか?
これまで開発が進められてきたほとんどの赤血球期マラリアワクチンは、ワクチン抗原の多型により臨床試験における有効性が示されなかった。一方、本プロジェクトで開発する熱帯熱マラリア原虫の抗原タンパク質PfRiprは、流行地の原虫に多型がほとんど無い。さらに、マラリア流行地の人々はPfRiprに対する抗体を保有し、その抗体価がマラリア防御と強く相関するため、PfRiprワクチンによるヒトへの防御効果が期待できる。さらに、よりワクチン効果が増強できる新規アジュバントも見つけることができる。以上の革新性により、これまでのマラリア赤血球期ワクチンを陵駕できる可能性がある。
各パートナーの役割と責任
研究代表者のヨーロピアン・ワクチン・イニシアティブ(EVI)は、これまでも各種のマラリアワクチン開発の経験が豊富で、本プロジェクト全体のマネージメントとアジュバント(免疫増強剤)を用いた製剤化を担当する。iBETは、数多くのワクチン開発の経験を持ち、本プロジェクトでは、ワクチンに使用可能な高品質のPfRipr5タンパク質の合成を担当する。愛媛大学は、赤血球期マラリアワクチン候補タンパク質の探索ならびに機能解析の経験が豊富で、本プロジェクトでは、ワクチン製剤の動物への免疫、抗体のマラリア原虫に対する増殖阻害活性を測定しワクチン効果の評価を行う。
他(参考文献、引用文献など)
World Health Organization (WHO). World Malaria Report 2018. Geneva: WHO; 2018.
最終報告書
1. プロジェクトの目的
このプロジェクトでは、愛媛大学が大日本住友製薬株式会社との共同研究で発見したPfRipr5と呼ばれる熱帯熱マラリア原虫のタンパク質を、既にヒトに投与されているアジュバント(免疫増強剤)を用いて製剤化し、新規赤血球期マラリアワクチンとして開発を進めることを目的とする。
2. プロジェクト・デザイン
1)哺乳類細胞と昆虫細胞の発現系を用いてPfRipr5を合成し最適な発現・精製方法を決定する。
2)PfRipir5を既にヒトに投与されている3種類のアジュバントを用いて製剤化する。
3)これらの製剤を実験動物に免疫し、抗体価により免疫原性を評価する。また抗体の熱帯熱マラリア原虫増殖阻害活性を測定する。
3. プロジェクトの結果及び考察
1)哺乳類細胞と昆虫細胞の発現系を用いてPfRipr5を合成し、最適な発現系及び精製条件を詳細に検討した結果、至適発現システムと精製条件を見出した。さらに、精製PfRipr5抗原の保存に適する至適バッファー組成も決定した。その至適条件を用いて、2Lから50Lのバイオリアクターにスケールアップし、PfRipr5の合成及び精製を実施した結果、40 mgの精製PfRipr5を得た。本プロセス開発の成果を、現在論文投稿準備中である。
2)得られたPfRipr5を、既にヒトに投与されている3種類のアジュバントを用いて製剤化し、その物理化学的ならびに免疫学的性状を解析した結果、3種類のアジュバント全て、PfRipr5との製剤化に適合した。
3)これらのPfRipr5製剤を低及び高投与量、また比較対照としてアジュバント未使用のPfRipr5のみ、でウサギに免疫した。PfRipr5製剤の免疫原性を評価するため血清中の抗体価をELISAで測定し、また得られた抗体のワクチン効果を判定するため、熱帯熱マラリア原虫増殖阻害活性(GIA)を測定した。いずれの測定結果も各群間で差異が認められたが、検討した製剤の内の一つが、ELISA抗体価105以上、かつ熱帯熱マラリア原虫増殖阻害活性60%以上のプロジェクトマイルストーンを達成した。現在、本製剤化試験と動物実験の成果を2報めの論文として投稿準備中である。
以上より、PfRipr5を新規赤血球期マラリアワクチンとして、次の開発段階に進める予定である。
Investment
プロジェクト
新規赤血球期マラリアワクチンの開発