Investment

プロジェクト

MMV 田辺三菱製薬協働による抗マラリア剤リード化合物最適化研究
完了プロジェクト
 

イントロダクション/背景

イントロダクション

本プロジェクトは、約5万の田辺三菱製薬が所有する化合物ライブラリを対象に実行した高速スクリーニングから選抜した3つの化合物シリーズに対して、薬効、物性、薬物動態評価を指標にヒットツーリード誘導体展開を進めてきた。その結果、シリーズ1の化合物群は抗マラリア薬として新規の分子作用メカニズムが期待され、GHIT/MMVにより設定されたリード最適化研究を進めるクライテリアを満足するに十分な即効性があり、マラリア原虫の各寄生段階の標的候補薬剤プロファイル(TCPs;1. 症状軽減目的の迅速な抗マラリア原虫作用 4. 肝臓ステージでの治療効果、予防的使用法 5. 感染地域における再感染予防)に合致した強力な薬効を示し、併せて物性面と薬物動態面においても優れた特性を持ち、ヒトマラリアのマウスモデルにおいてもin vivo薬効を示すことから最適化研究を進めることとした。

 

プロジェクトの目的

本プロジェクトの目的は、MMVにおいてプロジェクト進行基準により定義されているように18か月以内に後期リード候補化合物を見出し、さらに、最後の6か月はヒト初回投与臨床研究に進められるような前臨床候補化合物の選抜、育成を目指す。加えて、現在研究を進めている作用機序を解明することにある。最終的には本プロジェクトでは、既存薬の耐性が出現している地域においても、安全にマラリアを治療する能力を持つ化合物の可能性を評価する。

 

プロジェクト・デザイン

本プロジェクトは創薬化学、分子設計、寄生虫学、薬物動態、安全性研究の専門家による多様な技術と経験を活かし、多面的に創薬研究を進めていく。初期リード化合物を出発点として、MMVMTPC相互に協力し、更なる薬効、薬剤選択性、物理化学的性状改良、薬物動態、安全性における問題点の改善を着実に進め、前臨床候補化合物創製を目指し系統的に誘導体を合成していく。

本プロジェクトによって、グローバルヘルスの課題はどのように解決されますか?

マラリアは毎年、特に5歳以下の幼児や妊婦において、最も重要な疾患の一つであり、推計で年間2億人が発病し、約40万人が死亡する。現行の治療はアルテミシンベースの併用療法(ACTs)に依存している。一方、併用薬の耐性出現が顕著であるのもかかわらず東南アジア地域においては、ACTsではうまく治療が進まず、マラリア原虫の薬剤感受性をさらに押し下げる懸念もある。もっとも死亡例が多いアフリカにおいて耐性株出現が広範囲になれば、深刻な健康被害をもたらす。MMVは、こういった切迫した危機に立ち向かい、病気根絶を目指し、既存療法に関連した耐性出現にも打ち勝つ新しい作用機序を持った新薬の発見、開発に取り組んでいる。伝染を防御し、化学療法が有効で予防でも使用可能な新薬の開発は、マラリアの緊急治療に加え、病気そのものの根絶課題解決にも貴重である。チームは協力しながら多面的に化合物を評価し、前臨床化合物を創製したい。

本プロジェクトが革新的である点は何ですか?

現在研究を進めているリードシリーズの新規性に加え、我々のチームはこのプロジェクトからより早く前臨床候補化合物を創製するため、最先端の構造情報に基づく薬剤設計やたんぱく結晶化技術を活用しプロジェクトを進めていく。この多面的アプローチを成功裏に実行するいため、両組織の卓越した技術や経験に投資することでMMVのポートフォリオを拡充していきたい。

各パートナーの役割と責任

MMV田辺三菱製薬協働チームはプロジェクト目的を達成するために、新しい化合物のデザイン、合成、評価を1つの組織のように協力しながら進めていく。日々の実験は契約研究機関やアカデミアの研究協力者と進める一方、全般にわたる研究方針は両組織の代表により構成されるリーダーシップチームにより決定していく。

他(参考文献、引用文献など)

  1.          World Health Organization (WHO). WORLD MALARIA REPORT 2015. (2015). doi:ISBN 978 92 4 156515 8
  2.          Wells, T. N. C., Huijsduijnen, R. H. Van, Voorhis, W. C. Van, van Huijsduijnen, R. H. & Van Voorhis, W. C. Malaria medicines : a glass half full ? Nat. Rev. Drug Discov. 14, 424–442 (2016).
  3.          Meister, S. et al. Imaging of Plasmodium liver stages to drive next-generation antimalarial drug discovery. Science 334, 1372–7 (2011).
  4.          Duffy, S. & Avery, V. M. Development and optimization of a novel 384-well anti-malarial imaging assay validated for high-throughput screening. Am. J. Trop. Med. Hyg. 86, 84–92 (2012).
  5.          Lucantoni, L. & Avery, V. Whole-cell in vitro screening for gametocytocidal compounds. Future Med. Chem. 4, 2337–2360 (2012).
  6.          Wassermann, A. M. et al. Dark chemical matter as a promising starting point for drug lead discovery. Nat. Chem. Biol. (2015). doi:10.1038/nchembio.1936
  7.          Burrows, J. N., van Huijsduijnen, R. H., Möhrle, J. J., Oeuvray, C. & Wells, T. N. C. Designing the next generation of medicines for malaria control and eradication. Malar. J. 12, 187 (2013).
  8.          Katsuno, K. et al. Hit and lead criteria in drug discovery for infectious diseases of the developing world. Nat. Rev. Drug Discov. 14, 751–8 (2015).