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受領年2018
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投資金額¥442,209,139病気NTD(Dengue)対象Vaccine開発段階Preclinical Developmentパートナー長崎大学熱帯医学研究所(熱研) , 国立健康危機管理研究機構国立感染症研究所 , Johns Hopkins University , Latham BioPharm Group , VLP Therapeutics過去の案件論文
イントロダクション/背景
イントロダクション
デングウイルスは、世界の最も深刻な公衆衛生の問題であり、現在、世界人口の約50%がデングウイルス感染のリスクがある。しかしながら、現在のところデング熱に対する有効な治療法は存在せず、また、現在の承認された生ワクチンは9歳以上のみに使用できる。また、その生ワクチン接種時において、血清反応が陰性の人に対してはデングの重症化のリスクが高まることが懸念されている。ゆえに、次世代のデングワクチンの開発は喫緊の課題である。
VLPワクチンは、実際のウイルスと同じ外部構造を持つが中身は空っぽ(ウイルスの遺伝子を持たない)なため、高い免疫反応を示すが安全で、VLPを用いたワクチン開発は魅力的である。VLPワクチンはデングウイルスに脆弱な乳幼児を含めたすべての人に接種することができる。
プロジェクトの目的
長崎大学熱帯医学研究所および国立感染症研究所(NIID)との共同研究のもと、VLP Therapeuticsは、独自の技術を使って新規のデングワクチンの開発を行っている。現在までに、サルなどの動物を用いた前臨床試験でこのVLPワクチンの有効性を確認した。今回、我々はこのワクチンの治験を行うためのこのVLPの製造を行う。また、長期的なこのプロジェクトのゴールは、デングウイルスなどを含むフラビウイルスで初めての試みであるVLPワクチンを商品化させることである。
プロジェクト・デザイン
治験用ワクチンの製造細胞作製、VLPワクチンの製造、治験許可申請、治験デザインなどを含んだデングの4種血清型すべてのワクチン製造を行う。
本プロジェクトによって、グローバルヘルスの課題はどのように解決されますか?
デングウイルスは、世界の最も深刻な公衆衛生の問題であり、現在、世界人口の約50%がデングウイルス感染のリスクがある。しかしながら、現在のところデング熱に対する有効なワクチンは存在しない。このVLPワクチンは、すべての人に接種することができる新規の非常に有効なワクチンである。
本プロジェクトが革新的である点は何ですか?
現在開発中のデングワクチンはすべて生ワクチン(ウイルスの毒性を弱めた弱毒化ワクチン)である。最もデングに脆弱である乳幼児へのデング生ワクチンの接種はリスクがあると考えられるため、すべての人に接種できるVLPを用いた新規デングワクチンの開発は革新的であると考えられる。
各パートナーの役割と責任
VLP Therapeutics: このプロジェクトの統括責任者として、デングワクチン製造を含めすべてのプロジェクトを統括する。
国立感染症研究所(NIID): 治験用ワクチンの効果を動物実験で確認する。
長崎大学熱帯医学研究所:国立感染症研究所で行った動物実験の解析を行う。
Latham Biopharm Group:タイムラインやすべてのプロジェクトの管理を行う。
ジョンズホプキンス大学:Anna Durbin 教授のもと、治験許可準備及び申請、治験のデザインを行う。
最終報告書
1.プロジェクトの目的
本プロジェクトは、新規の4価デングウイルス様粒子(DENVLP)ワクチンの開発を一歩前進させることを目的として実施されました。最終的な目標は、フェーズI臨床試験に使用するためのGMPグレード製剤の製造です。
その達成のために、まず全4血清型のVLPを安定して製造できるプロセスの構築が求められました。あわせて、製剤の無菌性や同一性、有効性を確認するための試験基準や分析手法の確立も必要でした。また、規制当局への申請を見据えた追加の非臨床試験の実施、さらにアジュバントの選定も重要なステップとなりました。最終的には、FDAへの臨床試験開始に向けた提出書類の準備を進めるという流れで、本プロジェクトは進行していきました。
2.プロジェクト・デザイン
デングウイルスの各血清型に対応するVLPを安定して発現する研究グレードの哺乳類細胞バンクは、VLP TherapeuticsからGMP認証を受けたCDMOに移管されました。移管後は、製造スケールに対応した上流および下流工程の開発が行われ、それに続いてGMPグレードのマスターセルバンク(MCB)が、VLPTおよびLatham Biopharma Groupの監督のもとで製造・出荷されました。
また、非臨床試験については、VLPTのほか長崎大学、国立感染症研究所、国立健康危機管理研究機構が共同で実施しました。これらの試験は、規制当局への提出資料として活用されたほか、非ヒト霊長類におけるワクチン有効性を示す重要な成果として論文化されました。
3.プロジェクトの結果及び考察
G2018-103プロジェクトは、開始当初からさまざまな困難に直面しましたが、GHITファンドのご理解と支援をいただきながら、ひとつひとつの課題を乗り越えていくことができました。
特に大きな壁となったのは、4つすべての血清型に対してGMPグレードのマスターセルバンクを安定的に構築する作業でした。中には、長期の継代培養の過程で、DENVLPを安定して発現する能力を失ってしまう細胞株もあり、配列の再設計や細胞株の再構築、さらには新たなMCBの評価と前臨床での免疫原性の再検証が必要となりました。
このような技術的課題に取り組む一方で、モノバレントのDENVLP製剤を先行してcGMPで製造することにより、得られた知見を今後の開発に活かす方針をとりました。非臨床試験では、それぞれの血清型に特化したDENVLPが、同一血清型の生ウイルスに対する中和抗体価の多くを担っていることが示され、モノバレントワクチンを用いた初回ヒト試験の可能性を探っていました。
しかし最終的には、GHITファンドおよび他の出資パートナーの助言を受け、初回の臨床試験は4価(テトラバレント)のDENVLPワクチンで実施する方向へと舵を切りました。この方針転換に伴い、製造拠点も日本国内の新たなGMP認証CDMOへと移行しました。
本プロジェクトを通じて得られた技術的な知見や運営上の経験は、今後のワクチン開発に大きく貢献するものであると確信しています。そして、これらの成果が実現できたのは、GHITファンドの継続的なご指導とご支援のおかげであり、改めて深く感謝申し上げます。
Investment
プロジェクト
ウイルス様粒子(VLP)を用いた新規デングの4種血清型ワクチンの治験用ワクチン製造と開発




