Investment

プロジェクト

Fujifilm SILVAMP TB LAM-結核診断用高感度迅速診断キットの開発

イントロダクション/背景

イントロダクション

結核は、世界で最も死亡者数の多い感染症です。結核による死亡者数は、HIVによる死亡者数より多く、HIV感染者の最も一般的な死因です。 2016年には374,000人のHIV感染者が結核で亡くなりました。しかし、結核は治療可能であり、結核による死亡の大半は、早期の診断と治療によって救うことができる疾患です。一般的に、結核診断は喀痰を用いた検査に基づいて行われますが、結核診断が必要なHIV感染者の20〜60%が喀痰を出すことができないというデータがあります。喀痰が取れず、その場で検査することができないことにより、治療が間に合うタイミングで結核と診断されることなく多くの患者が取り残される結果となり、高い罹患率と死亡率につながっています。

尿の検体は、喀痰よりも容易に採取することができます。FIND(スイス、ジュネーブ)と富士フイルム(日本、東京)が共同開発した新たな結核検査は、結核/HIV共感染者の尿中のLAM抗原を高感度に検出する迅速診断テストです。HIVに罹患している入院患者を対象とした予備データによれば、感度70%超及び特異度95%超を示す検査であることが示されました。これは、1時間以内に70%の被験者の結核を正しく検出していることを意味します。

 

プロジェクトの目的

本プロジェクトの最終目標は、Fujifilm SILVAMP TB LAMをIVD製品として上市し、WHO推奨を獲得し、低・中所得国のHIV感染者の結核診断検査に用いてもらうことです。

 

プロジェクト・デザイン

富士フイルムとFINDのプロジェクトでは、Fujifilm SILVAMP TB LAMを(a)量産体制に移行すること、(b)CEマークのIVD製品として登録すること、(c)WHOの政策策定に必要な根拠を示す、分析的、臨床的な調査を実行することを目指しています。

本プロジェクトによって、グローバルヘルスの課題はどのように解決されますか?

診断を必要とする人々に必要とされる診断が届けられている理想的な状態と実情の間のギャップは、結核患者、とりわけHIV共感染者において大きく、他のどの貧困層の感染症よりも大きな隔たりがあります。富士フイルムは、迅速、安価、高感度な尿を用いた診断製品を導入し、このギャップをなくしていきます。モデリングによれば、非常に高い死亡率を有するHIV共感染の結核患者群に対して、本製品と即時的な治療と組み合わせたとき、死亡率の改善に大きな効果が得られるとされています。

本プロジェクトが革新的である点は何ですか?

唯一の市販されている結核診断用のラテラルフローの迅速診断検査は、臨床現場での使用を一部制限する次善の感度に留まっています。新しいFujifilm SILVAMP TB LAMテストは、優れた診断精度に達するよう設計されました。このテストは、高親和性モノクローナル抗体と、検査やコントロールラインの可視性を高める富士フイルムの革新的な銀増幅法を組み合わせています。これにより、有意に高い臨床感度をもたらす従来のラテラルフローイムノアッセイと比較して約30倍低い尿中LAM濃度での検出が可能となります。

各パートナーの役割と責任

富士フイルムは、製品の薬事承認、及び臨床試験や製品発売に必要な数のテストキットを準備するための製造を担当します。富士フイルムは、FINDと緊密に協力して、さらに市場投入戦略を検討し実行していきます。

FINDは、本プロジェクト全体のコーディネーターであり、プロジェクトの目標設定、プロジェクト管理、進捗状況のモニタリング・レポート、低・中所得国の研究拠点との間で確立された臨床試験プラットフォームを用いて臨床研究の実行を担当します。FINDはその際、WHOに政策策定のために必要な根拠資料を提出します。

最終報告書

1. プロジェクトの目的

富士フイルムとFIND は 2015 年より尿を用いた結核診断用高感度迅速診断キットを共同開発しており、早期治療、死亡率低下、伝染防止が期待できます。前回プロジェクトでは、プロトタイプの開発、今回のプロジェクトでは、設計の最適化、大規模生産体制の立ち上げ、WHO推奨取得に向けた評価研究を実施しました。

 

2. プロジェクト・デザイン

本プロジェクトは、下記の目的に基づいて構成されました。
①  設計検証、適切な規模の生産体制の立ち上げ
②  CE-IVDとしての登録、日本の輸出規制への準拠
③  WHO推奨取得に向けた臨床エビデンス構築
④  商品化戦略策定(販売チャネル、技術サポート、トレーニング資料、QA戦略等)

 

3. プロジェクトの結果及び考察

臨床エビデンスの構築:
1,624のHIV陽性患者より採取した検体で、プロトタイプキット(FUJIFILM SILVAMP TB LAM)の前向き評価研究を行い、eMRSに対し、感度 54.8%、特異度85.1%を得ました。感度と特異度について、施設間でのばらつきがあり、それぞれ、26.5%から83.3%、75.0%から96.5%となりました(Rita Székely, 2022)。その後の分析により、キットの正確性が製造ロット間で大きく異なるという課題が明らかとなりましたが、製造工程の最適化により問題を解決したため、1年間プロジェクト期間を延長しました。現在、この更新されたデザインロック製品「FUJIFILM SILVAMP TB LAM Ⅱ」の臨床評価を実施することを計画しています。

生産体制の立ち上げ:
ロット間差の発覚により遅延が発生しましたが、2021年12月に、ベトナムで生産体制の立ち上げが完了しました。更新されたデザインロック製品「FUJIFILM SILVAMP TB LAM Ⅱ」の生産は、2023年4月に開始され、臨床での使用の前に更なる検証を計画しています。

商品化戦略:
富士フイルムは、CE-IVDとしての登録、日本の輸出規制への準拠を完了しました。また、契約コンサルタントと共に市場調査を実施し、優先国のパブリック及びプライベート市場のキーパーソンを特定しました。更に、HIV患者の治療を行う病院と強力なチャネルを持つ代理店候補との販売契約締結に向け、協議を進めています。販売契約締結後、市場導入に向けた具体的な戦略の策定を行います。