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受領年2017
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投資金額¥604,775,700病気NTD(Leishmaniasis)対象Drug開発段階Preclinical developmentパートナー武田薬品工業株式会社 , Drugs for Neglected Diseases initiative過去の案件論文
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Van den Kerkhof M, Mabille D, Chatelain E, Mowbray CE, Braillard S, Hendrickx S, Maes L, Caljon G. In vitro and in vivo pharmacodynamics of three novel antileishmanial lead series. Int J Parasitol Drugs Drug Resist. 2018 Apr;8(1):81-86. doi: 10.1016/j.ijpddr.2018.01.006. Epub 2018 Jan 31. PMID: 29425734; PMCID: PMC6114106.
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Van den Kerkhof M, Mabille D, Hendrickx S, Leprohon P, Mowbray CE, Braillard S, Ouellette M, Maes L, Caljon G. Antileishmanial Aminopyrazoles: Studies into Mechanisms and Stability of Experimental Drug Resistance. Antimicrob Agents Chemother. 2020 Aug 20;64(9):e00152-20. doi: 10.1128/AAC.00152-20. PMID: 32601168; PMCID: PMC7449183.
イントロダクション/背景
イントロダクション
Drugs for Neglected Diseases initiative(DNDi)と武田薬品工業株式会社(以下、武田薬品)は、内臓リーシュマニア症(VL)の治療のため、安全で効果が高く、投与期間の短い、流行地域に適した経口投与のアミノピラゾール系抗寄生虫薬を開発することを目指しています。リーシュマニア症は原因となるリーシュマニア原虫が20種類以上存在するという複雑な疾患です。治療を施さなければ死に至り、毎年20万~40万人の新たな症例と2万~4万人の死亡例が報告されています。2015年にGHIT Fundの支援によりアミノピラゾール誘導体最適化プロジェクトが開始され、プロジェクトチームは前臨床試験に進むための目標とするプロファイル(Target Candidate Profile: TCP)を満たす化合物としてDNDI-5561を見出すことに成功しました。本プロジェクトはアミノピラゾール誘導体最適化プロジェクトを継続・進展させる形で、DNDI-5561に対して、前臨床試験およびヒトに対する初めての投与となる単回投与・用量漸増試験を実施します。また他4つの化合物をDNDI-5561とは異なる特性を有するバックアップの化合物として、並行して研究を進めます。
プロジェクトの目的
本プロジェクトは、選定されたアミノピラゾール系化合物の開発を次の工程を経て、第I相臨床試験まで進めることを目指しています。(1) 前臨床試験、製剤開発、および第I相臨床試験に適した原薬調製のプロセス開発および製造、(2) 前臨床安全性・毒性試験、および第I相臨床試験に適した製剤の開発、(3) 臨床試験開始申請(IND)に向けた前臨床安全性・毒性試験の完了、(4) ヒト初回投与のためのGMP基準に基づく治験薬の製造、(5) 薬事および倫理審査の承認取得のための治験薬概要書、およびその他の薬事申請書の準備、(6) ヒト単回投与試験の開始
プロジェクト・デザイン
DNDiは武田薬品と共にDNDI-5561の前臨床試験を計画、遂行します。武田薬品は一部の業務について社内リソースを用い、専門性を活かした協力を行います。他の業務は国際基準を満たす研究開発受託機関(CRO)に委託して実施されます。DNDiと武田薬品は共に前臨床開発におけるCROとの連携に豊富な経験を有しています。特にDNDiは現在、内臓リーシュマニア症に対する別の2つの候補化合物の前臨床試験を行っています。よってCROに関する最新の豊富な知見を有しており、これらを活かして本プロジェクトにおいても品質とコスト、スピードを考慮して、製剤開発(CMC)や遺伝毒性、安全性、毒性試験の実施に最適なCROを選定します。プロジェクトチームは毎月ミーティングを開き、進捗および結果をレビューします。前臨床試験完了後に、外部専門家を招聘してレビューミーティングを開き、第I相臨床試験実施の可否を判断します。治験薬概要書、および薬事申請資料は、第I相臨床試験(単回投与試験)を実施する国の薬事および倫理審査機関に提出され、承認が下りれば、2019年末には単回投与試験を開始できる計画です。
本プロジェクトによって、グローバルヘルスの課題はどのように解決されますか?
内臓リーシュマニア症(別名、カラ・アザール)はドノバンリーシュマニアやリーシュマニア・インファンタムなどの寄生原虫の感染により発症し、死に至る可能性のある疾患です。発症すると突発的な発熱や汎血球減少、体重減少や虚弱症状、および肝臓、脾臓の腫大が何週、何カ月もにわたり自覚のないまま進行します。インド亜大陸や東アフリカ地域で特に流行しており、2015年にWHOに報告された新たな症例の90%以上はブラジル、エチオピア、インド、ケニア、ソマリア、南スーダン、スーダンの7ヵ国で見られました。しかしながら全症例数の30%のみが報告されているに過ぎないと推測されています。東アフリカ地域では5価アンチモン剤が依然として第一選択薬ですが、投与方法(注射のみ)、治療期間、毒性、費用のすべてにおいて大きな課題を抱えています。さらに既存薬の有効性は地域によって異なります。南アジア地域では比較的治療が功を奏していますが、東アフリカ地域やラテンアメリカ地域では有効性と忍容性の改善が大きな課題となっています。リード最適化、もしくは臨床研究の段階にある新たな化合物は少なく、パイプラインを早急に充実させる必要があります。
本プロジェクトが革新的である点は何ですか?
本プロジェクトが目指す治療法は内臓リーシュマニア症に対する既存のものとは明らかに異なります。DNDiと武田薬品はin vitroおよびin vivoで優れた抗寄生虫活性を示す新たな作用機序を持ち、かつ経口投与で治療効果を示すアミノピラゾール系の新規化合物を開発しています。元々、ファイザーの化合物ライブラリーを用いてDNDiによりハイスループットスクリーニングが実施され、アミノピラゾール系統では唯一見出された一つのヒット化合物が出発点となりました。その後、DNDiと武田薬品がアミノピラゾール系化合物の研究を進めました。アミノピラゾール系化合物はこれまで内臓リーシュマニア症に対する研究開発が行われていないため、薬剤耐性や交差耐性の懸念が少ないと考えられています。治療期間が短かく経口投与が可能な薬剤を提供するためには、異なる系統の候補化合物によりパイプラインを充実させ、少なくとも1つ、望ましくは複数の治療薬の開発を成功させることが必要です。さらに新薬への薬剤耐性が起こるリスクを減らすために、新たな治療薬は他の療法と併用して使用することが望まれています。
各パートナーの役割と責任
DNDiはプロジェクトの実施を主導し、進捗管理を行うとともにCROを選定します。武田薬品はCMCに関する専門性に基づき原薬生産方法、製造受託会社の選定、製剤デザインについて助言します。また前臨床試験に対して助言を行うとともに、いくつかの試験を実行します。さらにバックアップ化合物に関する研究も進めます。DNDi、および武田薬品は、アカデミアやCRO、各領域の専門家と共にグローバルチームとして、顧みられない病気の医薬品開発に関する国際レベルの専門性と前臨床試験および臨床開発における実績に裏付けされた能力を活かし、プロジェクトが目指す共通の目標に向かって共に戦略、計画を実行に移していきます。
最終報告書
1. プロジェクトの目的
内臓リーシュマニア症の治療薬候補として、アミノピラゾール系化合物 DNDI-5561を第I相臨床試験に進めるため、前臨床試験用の原薬プロセス開発・製造、および前臨床試験・第I相臨床試験のための製剤開発、前臨床安全性・毒性試験、GMPに基づく治験薬製造、薬事・倫理審査に必要な申請書準備、ヒト単回投与試験の開始を行うこととしました。
2. プロジェクト・デザイン
DNDiと武田薬品工業の共同によりDNDI-5561の前臨床試験を実施しました。国際基準を満たす研究開発受託機関により、ADME (吸収・分布・代謝・排泄)、製剤開発、遺伝毒性、安全性薬理や毒性試験を実施し、武田薬品工業とDNDiの専門家による定期会議で進捗・結果を議論し、迅速に十分考慮した決定を下しました。
3. プロジェクトの結果及び考察
原薬のプロセス開発後、3種類のバッチ (開発用100g、前臨床試験用4kg、2020年初期にリリースされたGMP準拠バッチ4kg) を製造しました。遺伝毒性の懸念される3種の不純物については、適切な製造管理手法を確立した上、それら不純物がGLP基準の復帰突然変異試験で陰性であることを確認しました。
非臨床用の製剤を用い、ラットでの薬物動態試験で体内曝露量を評価しました。R-エナンチオマー (DNDI-5561) 選択の妥当性立証のため、S体を合成し、in vitroアッセイ系、物性評価試験、安全性薬理パネルで評価し、最終的にラットでDNDI-5561のS体への相互変換は見られないことを確認しました。
In vitro試験でDNDI-5561にCYP3A4誘導が示唆されましたが、臨床的には問題とならない高濃度のみの現象でした。組換えCYP450アイソフォームを用いた反応表現型解析により、ヒト肝臓由来ミクロソームでの遅い代謝が確認されました。細菌を用いる復帰突然変異試験では異常所見が認められませんでしたが、ヒトリンパ球での小核試験では、DNDI-5561の染色体異常誘発の可能性有と判定されました。3T3 NRU試験によりDNDI-5561の光毒性の可能性が見出されましたが、全身薬として毒性学的関連があるかについては疑問の余地がありました。
イヌに50 mg/kg単回投与後、急性、重度かつ不可逆的な網膜毒性が見られ、原因メカニズムの解明が困難であることからDNDI-5561の開発中断を決定し、類似化合物についても因果関係を否定する十分なアッセイ系がないため、同様の決定をしました。
本プロジェクトで得られた考察は以下の通りです。(1) 前臨床段階での急性毒性の発見を避けるため、前臨床試験前にげっ歯類以外での用量範囲設定試験を実施することが望ましい。ただしこのような試験には相当な資金と物資が必要であり、リード最適化の段階では通常確保が困難である。 (2) 多様な専門性と適切な人数で構成されたメンバーの共同により、最良で迅速な決定がなされる。
Investment
プロジェクト
内臓リーシュマニア症治療のためのアミノピラゾール化合物の前臨床試験および第I相臨床試験