Investment

プロジェクト

皮膚リーシュマニア症治療のためのCpG D35併用療法に関する非臨床試験

イントロダクション/背景

イントロダクション

顧みられない病気の新薬開発イニシアティブ(DNDi)と株式会社ジーンデザインは、皮膚リーシュマニア症(CL)のためのより良い治療法を見つけることを目指します。

皮膚リーシュマニア症(CL)について:CLは、毎年全世界で約100万人が罹患する病気であり、現在この病気に対する満足のいく治療法はありません。内臓リーシュマニア症とは違い、CLは死に至る病気ではありませんが、その醜い瘢痕や社会的な偏見により、特に子どもや女性にとって、生涯にわたる深刻な生活の質の低下をもたらします。このアンメットニーズに対処するため、DNDiと株式会社ジーンデザインは、安全かつ有効で、投薬期間が短く、非侵襲的であり、しかも求めやすい価格で、現場で使いやすい治療法の開発に取り組んでいます。

 

プロジェクトの目的

本プロジェクトの目的は、CpG D35が第I相臨床試験に進むための適合性を実証することです。この提案は、(1)非臨床試験、安定性試験、製剤開発、および第I相臨床試験に適した原薬(API)200グラムの製造、(2)非臨床安全性試験と第I相臨床試験のための製剤設計、(3)IND(治験許可)申請に求められる非臨床安全性試験の完了(in vivo有効性試験の結果が良ければ開始予定)、(4)第I相臨床試験用原薬の製造、の各項目からなっています。

 

プロジェクト・デザイン

従来のCLの化学療法は、寄生虫の大半を除去することにより感染の負担を軽減することを目指していました。そうすれば、宿主の免疫機能が残りの寄生虫を抑えることができると考えられるからです。宿主が有する応答機能を積極的に刺激し、すべての寄生虫を除去できるよう宿主の免疫機能を強化する新たなアプローチは、Toll 9受容体経路を作動させることにより自然免疫系を刺激し体から寄生虫を一掃するものです。従って、化学療法と免疫刺激を組み合わせれば、寄生虫を速やかに除去し、病変の修復を促進し、CL患者のケアを大幅に向上させる最適な治療法を提供できます。

 

CpG D35は、ヒトに使用するために最適化されたD型CpG ODN TLR9アゴニストです。本薬は、形質細胞様樹状細胞の成熟と活性化、およびリーシュマニア感染の制御に必要なインターフェロンγ(IFN-γ)やIL-12などの炎症性サイトカインの産生を刺激しますが、B細胞にはほとんどあるいは全く影響を及ぼさないので、他の症状で検討されてきた本薬以外のほとんどのCpGに見られる、望ましくないTH2型応答を最小限に抑えることができます。実際にCpG D35は、げっ歯類および霊長類の両方を対象とした前臨床試験で、CL寄生虫に対する優れたin vivo有効性を示しました。

 

上記の特性から、CpG D35を化学療法と併用することは、難治性CL患者、すなわち病変が大きいまたは複数ある患者、標準的な治療が奏効しない患者、再発患者、慢性病変のある患者(6ヶ月以上、すなわちL. braziliensisL. tropica に起因する病変を有する患者)、あるいはleishmania recidivans患者のための最善のアプローチとなることが期待されます。これらの病態に対しては、標準的な治療の効果が限定的である(治癒率60%以下)か、または追加の治療を必要とすることがこれまでに明らかとなっています。

本プロジェクトによって、グローバルヘルスの課題はどのように解決されますか?

治療の課題:推奨されているCLの治療法は、根拠に乏しく有効性も不十分で、現在の薬事審査の基準からすると、承認するには毒性があまりに強すぎると考えられる時代遅れの薬に長く依存してきました。DNDiと株式会社ジーンデザインは、安全かつ有効で、投薬期間が短く、非侵襲的であり、しかも求めやすい価格で、現場で使いやすい治療法の開発に取り組んでいます。

本プロジェクトが革新的である点は何ですか?

CLの治療の目的は、治癒を早め、瘢痕化を減らし、そして再発を予防することです。アプローチの一つは、化学療法によってほとんどの寄生虫を除去し、その後、宿主の免疫機能が残りの寄生虫を抑えてゆく方法です。もう一つのアプローチは、免疫療法によって免疫機能を強化し、除去を促進させる方法です。これらを組み合わせたアプローチは最良の治療機会を提供し、有効であれば治療の失敗、病気の再発、および薬剤耐性を減らすことになるでしょう。

各パートナーの役割と責任

本プロジェクトにおいて、株式会社ジーンデザインは原薬(API)を製造します。製造には、製剤設計、各種試験用の原薬供給、品質規格試験の実施及び安定性試験の実施を含みます。ジーンデザインはCpGオリゴヌクレオチドの分野において、豊富なプロジェクト管理経験を有しています。ジーンデザインは蓄積されたLC-MS解析の経験をもとに、毒性試験と第I/II相臨床試験における適切な物性評価試験を提供します。

 

DNDiはプロジェクト全体のマネジメントと調整、予算管理、報告、およびパートナーとの契約締結に関する責任を負い、プロジェクトの進行を確実なものにします。またDNDi、株式会社ジーンデザイン、および関連するコンサルタントの代表で構成されるCpG D35のための専門家委員会を設置し、in-vivo試験の開始時および終了時に専門家会議を開催します。DNDiは試験の結果を公開し、プロジェクトから得られた知見が他のリーシュマニア症の研究者たちにとっても利益をもたらすものであることを目指します。

最終報告書

1. プロジェクトの目的

CpG D35が免疫応答を刺激し、化学療法の効果を押し上げることにより、皮膚リーシュマニア症患者のケアを改善することが期待されています。前臨床でのin vivo有効性試験でCpG D35単独、もしくは五価アンチモン (アンチモン酸メグルミン) との併用による治療効果の改善が示されたことに基づき、本プロジェクトでは第I相臨床試験に向けたCpG D35の検証に取り組みました。

 

2. プロジェクト・デザイン

本プロジェクト期間では、(1) 前臨床試験、安定性試験、製剤開発、および第I相臨床試験に適した原薬製造、(2) 前臨床安全性試験と第I相臨床試験のための製剤設計、(3) 前臨床安全性試験の完了、(4) 第I相臨床試験用の治験薬製造、を実施しました。

 

3. プロジェクトの結果及び考察

第I相臨床試験に向け、以下のマイルストーンを達成しました。

(1) 原薬の製造完了

前臨床試験用にGLP基準バッチ55gを製造しました。また安定性試験、製剤開発、治験薬用にGMP基準の原薬計145gを製造しました。 

(2) 製剤設計

異なる濃度 (10 mg/mL、50 mg/mL) でのブラケッティング法による安定性データ、物理学的特性 (粘性)、製造の容易さを考慮し、前臨床・初期臨床試験用にCpG D35 15 mg/mLを含有するトレハロース製剤を選びました。

(3) 臨床安全性試験の完了

・遺伝毒性評価:in vitro試験 (復帰突然変異試験、ヒトリンパ球アッセイ)、およびin vivo小核試験では、CpG D35の突然変異誘発性、染色体異常誘発性は示唆されませんでした。

・非げっ歯類での皮下・静脈注射後の全身曝露評価:薬物動態比較試験では、皮下投与後の血漿中のCpG D35濃度は、静脈投与後の0.96%から3.28%であることが示されました。

・非げっ歯類での用量範囲設定試験:皮下投与後、すべての用量 (2、6、15.9 mg/kg) で臨床的所見や臓器毒性は見られませんでした。注射部位の腫れを含む局所的な変化のみが報告されました。無毒性量は15.9 mg/kgでした。

・非げっ歯類での4週間のGLP毒性試験:暫定結果ではいずれの用量 (2、6、15.9 mg/kg) においてもCpG D35の忍容性は高く、全身曝露の用量比例性が示されました。臨床的所見や標的臓器毒性は見られませんでした。注射部位の腫れを含む局所的な変化がすべての用量で報告されましたが、CpG ODN D35の性質によるものであり、回復可能であると予測されます。無毒性量15.9 mg/kgを確認予定です。

(4) 第I相臨床試験用の治験薬の製造完了

出荷時の仕様を満たすCpG D35 (15 mg/mL) 、およびプラセボを製造しました。臨床用バッチでは3年間の安定性プログラムが実施されます。初期の安定性試験により、2-8°Cにおける12ヵ月の暫定的な有効期間が指定されました。