Investment

プロジェクト

新規マラリアATP4阻害剤であるSJ733の第2相臨床試験
完了プロジェクト
 

イントロダクション/背景

イントロダクション

SJ733は、マラリア治療が期待されるマラリア原虫ATP4阻害剤です。安全性と体内動態を調べる第1a相試験及びマラリア原虫感染試験(第1b相)が進行中です。これまでの結果、優れた安全性と良好な経口吸収性が認められています。GLP安全性試験における重要な副作用は、イヌにおいて高投与量で観察されたメトヘモグロビン血症と貧血ですが、第1相試験では認められていません。SJ733の推定有効量における安全域は8倍と予測されます。

次に、マラリア患者を対象とした第2a相試験において、殺原虫率、最小発育阻止濃度、体内動態と薬理効果の関連性(PK/PD)を評価し、伝播阻止の可能性も探ります。並行して、最も効果的な併用治療法、他の製剤の可能性を検討し、第1b相試験として、併用治療によるマラリア原虫感染試験を実施します。こうして、効果的な併用治療法を探る第2相試験及び子供や妊婦を対象とした第2相試験を準備します。

 

プロジェクトの目的

1. SJ733原薬と製剤のGMPロットの製造。

2. ペルーの臨床現場におけるSJ733単独投与の有効性を評価するための第IIa相試験の実施。

3. MMVのポートフォリオにある開発候補品から最終的な併用薬を選ぶための実験の実施。

4. MMVによって実施されたDSM265 及び OZ439の併用試験と同様のデザインにより、最適な併用薬を選ぶための併用第1相マラリア原虫感染試験の実施。この試験では、臨床現場の在庫にある2つの薬剤を別々に投与します。

5. 最終的な併用薬を開発するための予備的な製剤化研究の実施。     

 

プロジェクト・デザイン

本研究の科学的特徴は、耐性の存在しない新規の薬効標的に作用し、迅速な殺原虫効果と伝播阻止効果の両方を示すという点です。開発化合物であるSJ733はマラリア原虫ATP4を標的とするジハイドロイソキノロン類化合物であり、極めて高い薬効及び経口有効性、安全性、耐性化が起こりにくい性質を有しています。本研究では、SJ733の臨床有用性及び他の新規薬剤との併用効果について、監視下マラリア感染法(CHMI)を用いて同時に評価します。各薬剤単独、次いで併用で評価することにより、健常人における薬剤相互作用および併用による殺原虫効果が明らかになります。また、併用した際のヒトでの薬効が相加的あるいは相乗的なのか、または拮抗的なのかという情報が得られ、これはこの併用剤が開発を進めるべきものか否かという判断の基準になります。さらに、PK/PD解析によって、本研究に続く第2b相試験での用量設定が可能になります。     

本プロジェクトによって、グローバルヘルスの課題はどのように解決されますか?

マラリアは、予防及び治療可能な疾患であるにも関わらず、2015年時点で、97か国、32億人が感染の危険にさらされ、年間推定43万8千人が亡くなっています。WHOの推定では、マラリアで亡くなった人の90%は、サハラ以南のアフリカの5歳以下の子供です。さらに、現在、流行国で使用されている殺虫剤や抗マラリア剤に対する耐性の出現が大きな懸念となっています。アルテミシニン併用治療の主要薬剤であるアルテミシニン耐性のマラリア原虫が東南アジアの4ヶ国、カンボジア、ミャンマー、タイ、ベトナムで検出されています。耐性出現が起こりにくく、アルテミシニンに置き換わることのできる薬剤の開発を目指しています。

本プロジェクトが革新的である点は何ですか?

本研究は複数の画期的な試みを有しています。具体的には、単剤の薬効第II相試験とそれらの併用第I相試験を同時進行することにより新規薬剤の開発リスクを低減させる、非常に高い安全性を有する新規のマラリア原虫ATP4阻害剤である、併用剤としてトータルの殺原虫活性を向上させることのできる併用化合物を選別する、などが挙げられます。

各パートナーの役割と責任

ケンタッキー大学は、成果の確保や課題への対処計画など、プロジェクトを全般的に管理します。また、様々なレポート作成や発表の調整を行うと共に、可能性のある併用薬を選択するためのin vitro試験を実施します。

MMVは、第1a/1b相併用薬検討試験及び第2a相単独試験の監督責任を負います。また、FDAと様々な提出書類に関する協議を行い、さらに、選択された併用薬の可能性を確認するためにin vivo試験の実施を調整します。

エーザイは、試験対象となる原薬と製剤の製造を担当します。また、臨床試験用薬剤を製造するために開発業務受託機関との契約交渉も担当します。さらに、錠剤または徐放製剤開発を目的とした新しい製剤化検討を実施します。