Investment

プロジェクト

マラリア、シャーガス病、リーシュマニア症、クリプトスポリジウム症治療のためのブロモドメインを標的とした新規抗寄生虫作用の研究
  • 受領年
    2016
  • 投資金額
    ¥98,243,600
  • 病気
    NTD (Chagas disease / Leishmaniasis)
  • 対象
    Drug
  • 開発段階
    Target Validation
  • パートナー
    理化学研究所, マギル大学, Medicines for Malaria Venture (MMV), トロント大学構造ゲノミクスコンソーシアム, メルボルン大学, Drugs for Neglected Diseases initiative

イントロダクション/背景

イントロダクション

発展途上国で、マラリア、シャーガス病、リーシュマニア症、クリプトスポリジウム症は大勢を死に至らしめる疾病で、有効な治療薬が無いか、あってもその耐性虫の出現が問題である。従って、新しい標的への薬物開発が最優先である。寄生虫は複雑な生活環をもつので、種々の状態に作用する薬剤も望ましい。例えば有性と無性世代のマラリア原虫に作用できる薬剤は治療にも予防にも利用出来る。

タンパク質を使いDNAはクロマチン化され、クロマチン構造は遺伝子活性を調節する。ブロモドメインはクロマチン中のアセチル化リジンに結合し、そこの遺伝子を活性化する。ブロモドメイン結合阻害は遺伝子活性を変化させ、がん細胞を死滅できる。寄生虫とヒトのブロモドメインは大きく異なり、ヒトのに結合出来ない薬剤が期待でき、寄生虫のブロモドメインはそれらの生育に必須であることも知られ、ブロモドメインスーパーファミリーは新しい抗寄生虫薬の有望な標的である。

 

プロジェクトの目的

このプロジェクトでは、病原寄生虫(Plasmodium falciparum (マラリア)、 Trypanosoma cruzi (シャーガス病)、Leishmania donovani (リーシュマニア症)、 Cryptosporidium parvum (クリプトスポリジウム症))を殺す強いブロモドメイン阻害物質を、それぞれ少なくとも1つ得ることを目指す。さらに、これらの阻害物質が結合する寄生虫のブロモドメインを同定し、その結合に関与する分子相互作用を明らかにする。標的となっているブロモドメインに変異を導入すると阻害剤に対する感受性が変化するはずであり、マラリア原虫に関してこれを確かめることで、そのブロモドメインが実際に薬剤の標的となっていることを確認する。

 

プロジェクト・デザイン

まず、ブロモドメイン阻害活性が期待される化合物ライブラリーから、寄生虫増殖阻害物質を探索する。このヒット化合物から、合成・精製した寄生虫ブロモドメインに結合する物質を探索する。さらに強い活性をもつ物質について結合構造を解析する。この構造から類縁化合物の活性の強さも予想でき、これを寄生虫増殖阻害活性とドメイン結合活性によって化学的に評価する。マラリア原虫のブロモドメインとそれに強く結合する化合物については、そのブロモドメインの発現量を変化させたり相互作用部位に変異をいれることで検証する。さらにマラリア原虫の耐性株について、阻害物質がそのブロモドメインに結合することを確認する。トリパノソーマについては、特定のブロモドメインの発現量を変化させた株を用いて阻害剤の効果を確認する。これらの結果から化学的検証の証拠を得ることが出来る。

本プロジェクトによって、グローバルヘルスの課題はどのように解決されますか?

WHOによると、現在もアフリカ・アジアなどで、毎年2億人がマラリアに感染し、50万人が死亡している。中南米では700万人以上がシャーガス病に罹患し、200万人近くが、内臓か皮下のリーシュマニア症に感染している。クリプトスポリジウム症は幼児の下痢性疾患による死因の2位である。マラリア以外は、新規薬剤探索は十分に行われておらず、マラリアもアルテミシニン耐性株の発現により、新しい薬剤開発が急務である。従ってこれらの寄生虫疾患に対する状況を変える対応が必要である。

寄生虫ブロモドメインは1) 寄生虫生存に必須なもの、必須遺伝子の活性化に関連するものがある。2) 寄生虫のはヒトのと異なるので、阻害剤が両者に効くことが無い。3) 阻害剤が別の種の寄生虫に効果がある。4) マラリア原虫のは生活環中ずっと発現し、原虫間で保存されているので種々のマラリア原虫による疾病の治癒や感染防御が期待出来る。などの点で新しい薬剤標的として興味深い。

本プロジェクトが革新的である点は何ですか?

このプロジェクトでは、寄生虫内の薬の標的としては極めて新しいタンパク質を研究する点がまず革新的である。また、薬の探索には天然物ライブラリーを用い、ハイスループット探索、寄生虫学、構造生物学、タンパク質化学、分子遺伝学の専門知識を統合した研究を行う点が革新的である。構造生物学によって、ブロモドメインとその阻害剤のそれぞれについてその結晶構造情報をもとに詳細を個別化することができ、原虫阻害能がブロモドメインを標的としていることを素早く決めることが出来る。このプロジェクトでは、構造と増殖阻害データによる情報に対応し、最新のCRISPR-Cas9法という変異導入法を利用して、マラリア原虫のタンパク質に変異を入れることを行う。

各パートナーの役割と責任

理研(長田裕之、渡辺信元)は化合物ライブラリーを提供し、SGCのライブラリーと共にマラリア原虫増殖阻害のハイスループットアッセイを行う。  

Structure Genomics Consortium (SGC: Raymond Hui)は、ブロモドメイン結合や寄生虫増殖阻害能が知られる化合物群を構築し、他の探索に提供する。さらに、寄生虫のブロモドメインの結晶構造解析、精製タンパク質結合アッセイによる阻害物質の同定、その類縁物質の活性検証を行う。また、マラリア原虫のブロモドメインと阻害剤の相互作用の情報を、変異体導入のためにメルボルン大学に伝える。

マギル大学(Armando Jardim, Momar Ndao)は、SGCと理研から得た化合物についてT. cruzi、L. donovaniとC. parvumの阻害活性を調べる。Jardimはさらに少なくとも1種のトリパノソーマのブロモドメイン高発現株を作成し、標的検証を補助する。