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【ケニア訪問レポート】 低中所得国との戦略的パートナーシップの構築を目指す
公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金(以下、GHIT Fund)は、研究開発(R&D)への投資機関として、低中所得国(LMICs: Low and Middle Income Countries)の研究機関やアカデミア、医療機関、製薬メーカーなどとの協力促進に取り組んでいます。これは、2023年度からの第3次5カ年計画「GHIT3.0 」における主要な戦略目標の1つです。この度、低中所得国とさらに強力なパートナーシップ構築の一環として、GHIT FundのCEOである國井修と投資戦略兼アクセス&デリバリー シニアディレクターであるチクワナ アイザックは2023年7月下旬にケニアを訪れ、ケニア医学研究所(KEMRI)、DNDi(Drugs for Neglected Diseases initiative:顧みられない病気の新薬開発イニシアティブ)、ニャンザ州にある長崎大学との共同研究ユニットなどの研究パートナーと面会しました。また、安価で質の高い医薬品を製造する現地メーカー、ユニバーサル・コーポレーションリミテッド(UCL)やケニア保健省も訪問しました。
低中所得国との戦略的パートナーシップを構築する目的は多岐にわたります。
・低中所得国、日本、諸外国の研究機関をひとつにまとめる協働ネットワークとコンソーシアム形成の促進
この取り組みによって、専門知識の情報共有、リソースの共有が促進され、各国共通の健康課題に対処する共同研究イニシアチブが実現します。具体的な成功例としては、小児プラジカンテル・コンソーシアムが、就学前児童の住血吸虫症に対する新たな治療選択肢を開発したことが挙げられます。GHIT Fund CEOの國井修は次のように述べています。「KEMRIとケニア保健省が開発に貢献した新たな治療選択肢によって、何千万人もの子供たちが助かります。これによって、住血吸虫症という病気が減り、国やWHOのガイドラインも書き換えられるでしょう。このような世界的偉業が、ケニアの片田舎にある小さなホマ・ベイ病院の検査室で実施されたことは称賛に値しますし、ホマ・ベイ病院の研究チームはそれを誇りに思っていただきたいと思います。」
・R&Dに対する投資をニーズ主導のアプローチで導く
GHIT Fund 投資戦略兼アクセス&デリバリー・シニアディレクターのチクワナ アイザックは次のように述べています。「GHIT Fundの投資対象は、3つの疾患(群)(顧みられない熱帯病、結核、マラリア)、3つの医薬品(診断薬、治療薬、ワクチン)、そして開発段階として探索研究から臨床試験、薬事認証までと幅広いです。多岐にわたる投資のインパクトを現場にて最大化するために、これからも疾患がまん延する低中所得国の研究機関などとより積極的な対話を通じて課題を特定しながら、投資の優先順位に反映させていきます。このように、先日のケニア訪問はGHIT Fundが低中所得国との戦略的パートナーシップを強化する上で意義あるものとなりました。」
・低中所得国の研究機関と日本の間で知識共有と技術移転を実現
研究機関同士の交流を深めることにより、研究成果へのオープンアクセスや技術ライセンス契約を促進し、共同研究開発(R&D)およびアクセス&デリバリー(A&D)プロジェクトのパートナーシップ構築を支援することができます。UCLの創業者兼取締役社長であるPerviz Dhanani氏は次のように述べています。「現地メーカーとの課題は存在します。例えば「メイド・イン・アフリカ」の表示製品に対する不信感です。この地域の国々は、アフリカの近隣諸国からではなく、アフリカ以外の国から製品を購入したがる傾向があります。品質が保証された製品であれば、各国間で競争が起こり、市場が持続不可能なほど分断されてしまいます。さらに、「メイド・イン・アフリカ」製品への不信感も部分的に関係していますが、国によって規制の手続きが異なるため、規制当局の承認が複雑であり、時間もお金もかかってしまいます。現地メーカーがアフリカ大陸でマーケットシェアを獲得するには、こうした状況を変える必要があります。各国政府やUCLのような現地メーカーと協力することで、GHIT Fundのような研究開発への投資機関は現状のシステムの改善に貢献することができます。」
これらの取り組みにより、低中所得国の研究機関との強力な連携と現地のオーナーシップを組み合わせることで、現地の視点や専門知識の強化を目指します。そしてGHIT Fundは、これらの国のニーズに合わせた影響力のある保健ソリューションの開発に貢献したいと考えています。