イベント

April 10, 2019

【イベント報告】Empowering Women's Leadership in Global Health R&D

GHIT Fundは、2019年3月8日(国際女性デー)に、Empowering Women's Leadership in Global Health R&Dを開催しました。国内外の幅広いセクターより多くの参加者を迎え、グローバルヘルスR&Dにおける女性のリーダーシップにおける過去、現在、そして未来でのあり方を紐解き、女性リーダーを勇活(エンパワー)するための方法についてディスカッションを行いました。GHIT Fund 前CEOのBTスリングスビーは開会挨拶にて、本シンポジウムの位置づけとして、バックグラウンド、分野、性別を問わず、誰もがグローバルヘルスに貢献することを可能にするための多様性、メンター制度、トレーニングについて語り合う場であると述べました。

 

続いて、ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のハイディ・ラーソン教授による基調講演が行われ、同校が主催し、ラーソン氏が議長を務めたWomen Leaders in Global Health Conference 2018から得た考察を述べました。ラーソン氏は、女性のリーダーシップの育成は、メンター制度が重要な役割を果たすともに、分野(セクター)、性別、そして国際的に、より多様な観点が必要であると強調しました。また、Women Leaders in Global Health Conference 2018に参加したナイジェリア出身の女性リーダーからの提言、「今のリーダーたちの目標は、彼ら自身の経験が後に続く人々のための基盤となることであり、メンター制度、トレーニング、そして他者や次世代へ継承することによって実現していきます。」という考えに賛同を示しました。

 

最初のパネルセッションでは、加藤信子氏(武田薬品工業株式会社 コーポレート・コミュニケーションズ&パブリックアフェアーズ パブリックリレーションズグローバルヘッド)がモデレーターを務め、グローバルヘルスR&Dにおける女性のリーダーシップについて、議論が繰り広げられました。ジョエル・タンギィ氏(Drugs for Neglected Diseases initiative エクスターナルアフェアーズ ディレクター)は、科学や業界での女性リーダーの不足がPDPsにとっての課題であり、最初の段階で男女同一の候補者を確保するために積極的に候補者を探す必要があると述べ、更に、女性は責任範囲を拡大させるようなポストに男性よりも応募しない傾向があり、これがまさに男性が潜在力により雇用されるのに対し、女性はその経験をもってしか雇用されないとデータが示している理由であるとの見解を示しました。タングィ氏は変化はトップから起きる、すなわち、男性リーダーが女性のエンパワーメントにコミットする必要があることを強調しました。

 

遠藤弘良氏(聖路加国際大学大学院 公衆衛生学教授)は、日本における女性リーダーが不足していることから、日本社会、そして男性の大多数は女性リーダーの育成について十分な経験を未だ持っておらず、女性リーダーを指導、育成、支援する方法を国外の事例より学ぶ必要があると共に、女子生徒が自分自身のために責任感を持って積極的に行動することを支援していきたい、と述べました。

 

メラニー・セヴィール氏(CEPI ワクチン開発 ディレクター)は、「リーダーシップはある日いきなり身につくものではありません。サイエンスと同様に、学び身につける必要があります。」と述べ、将来訪れるチャンスのために、今すぐリーダーシップを学び始めるよう会場の女性に促しました。また、女性は決断を下すことに慣れることや、意思決定が行われるリーダーシップチームに女性が存在することの重要性を強調しました。

 

広岡敦子氏(住友化学株式会社 生活環境事業部、アニマルニュートリション事業部 執行役員)は、グローバルヘルスR&Dのどの分野においても、リーダーシップとは大きな目標を達成するために皆を勇気付けること、大きな視野を持つこと、そして継続して自分自身のネットワークと経験を育むことであり、サイエンスのスキルを磨くことだけでは無いと述べました。また、リーダーシップを育むために、「どんなリーダーになりたいか、自分に問いかけることが大切です。」と付け加えました。

 

続いて、玉村文平氏(GHIT Fund ブランドコミュニケーション シニアディテクター)が二つ目のパネルディスカッションのモデレーターを務め、キャリアとメンターシップについて議論が行われました。3人のパネリストの共通点は、キャリアの最初からグローバルヘルスR&Dに関わってはいなかったということでした。

 

西本紘子氏(日本医療政策機構 マネージャー)は、小学校卒業まで米国で生活していたことで、日本企業のビジネスや技術に興味が湧き、グローバルに活動する日本企業で働いてみたいという思いから日本の製薬会社に就職したというキャリアを振り返りました。キャリアのターニングポイントは、社内試験に不合格となり、当時のメンターが西本氏に足りないものはビジネススキルだと指摘したことがきっかけとなりMBA取得に繋がっていきます。最終的に、西本氏はグローバルヘルス戦略プロジェクトのメンバーに抜擢された経験を共有し、民間セクターにいても、グローバルヘルスに携わる機会は多いというメッセージを参加者に向けて伝えました。

 

柏倉美保子氏(ビル&メリンダ・ゲイツ財団 日本代表)は、幼少期にメキシコの路上で物乞いをしている子供たちを目撃したことがきっかけで、地球上のすべての子供たちが食料、健康、そして教育を確実に享受できるような仕組みを作ることを志したことを語りました。柏倉氏は、一番最初のキャリアを投資銀行からスタートさせましたが、その理由は、「投資は未来の社会を形成する業界であり、(適切な)資金配分によって持続可能な社会経済を次世代を創り出すことが出来る」と考えたからでした。しかし、責任投資業界に従事していた当時は、(国連の)責任投資原則に則った投資家はまだ少数派である点に気づき、その後、世界経済フォーラムにて、ルールや規範を策定する人々の意識を変革することを目標にしていきます。その後、30年越しの夢が叶い、貧困問題撲滅に従事するビル&メリンダ・ゲイツ財団日本代表へとキャリアを築いたことを紹介しました。

 

二リアン・パラックパック氏(大阪大学 大阪大学微生物病研究所 准教授)は、日本の大学の工学部の交換留学生として、バイオテクノロジーの分野でキャリアをスタートさせました。当時は男性優位な社会で、女性であることや外国人であるという理由で孤立する状況にあったと述べました。その後、パラックパック氏は大阪大学の堀井俊宏教授のもとで働き始めました。その当時取り組んでいたプロジェクトは、ウガンダでの臨床試験の準備段階でしたが、ウガンダのパートナーは臨床試験を実施した経験がありませんでした。日本のパートナーも海外での臨床試験の経験が浅かったこともあり、パラックパック氏は、準備段階で自身が堀井教授の通訳兼秘書になることを提案し、最終的にウガンダに行くチャンスを得た経験を紹介しました。「堀井教授はリスクをとってくれました。GMP製造業社やスポンサーとの競業からウガンダの規制当局の承認までの過程で、教授は私をパートナーとして扱ってくれました。私をあらゆる面で成長させてくれました。」と振り返りました。また、他のメンターからは、多様な文化、特に臨床試験の場では物事の変化を敏感に感じとり、観察を通して学ぶことの重要性を教えられたと述べました。

 

メンター制度について西本氏は、メンターと話す前にメンティーが自己を振り返る時間を十分に持ち、準備するべきであることを勧め、「あなたの人生やキャリアにおける目標は何ですか?強みや弱みは?」と参加者に問いかけました。所属する上司とは別に、チャンスとネットワークを広げてくれる力を持った取締役クラス/リーダー層をメンターとして持つことの重要性を指摘しました。

 

柏倉氏は、「国外でこのメンターネットワークを戦略的に構築しました。メンターとの関係は、必ずしもフォーマルである必要はありません。むしろ、カジュアルなものでも良く、年に1、2回、連絡をとって意見を聞いたり助言を受けるだけでも十分大きな影響を受けられる」と述べました。

 

このイベントの閉会の辞で、池田千恵子氏(厚生労働省大臣官房総括審議官(国際担当))は、「女性リーダーがグローバルヘルスR&D分野にもっと参画することで、新しいアイデア、革新、およびパートナーシップが促進されることを期待しています。そしてこの多様性は、世界中の未来の世代にとっての、ウェルビーング(Well-being)の重要な要素となるでしょう。」と述べました。

 

写真:https://www.flickr.com/photos/141762393@N03/albums/72157690833222963